ラグビー

連載:私の4years.

高校ジャパンの遠征で知った世界の壁 元慶應ラグビー部・和田拓1

國學院久我山高校時代の和田さん(中央)。楽しかっただけのラグビーが深い存在になっていった(写真はすべて本人提供)

連載「私の4years.」の8シリーズ目は、今シーズンから慶應義塾體育會蹴球(ラグビー)部のBK(バックス)コーチとして後輩の指導にあたる和田拓(たく)さん(31)です。國學院久我山高(東京)から慶應に進学。卒業後はキヤノンイーグルスに進み、主将としてプレーしていました。そんな和田さんが学生時代を振り返る連載の1回目は、ラグビーを始めた小学生のころから始まり、高校日本代表に選ばれてラグビー観が変わった経験を和田さんが綴(つづ)ります。

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心底好きなラグビーとの出会いに感謝

父が大学ラグビーファンだったこともあり、私は物心がついたころには毎週末のようにラグビー場に連れ出されていました。そして小学2年生からラグビーを始め、28歳で引退するまで約20年間、プレーすることになります。現役を引退したいまでも、ラグビーに関わる仕事を続け、ラグビーを通してできた友人と多くの時を過ごしていることを考えると、このスポーツとの出会いに感謝してますし、心底ラグビーが好きなのだと言いきれます。

最後は国内最高峰の「トップリーグ」でプレーさせてもらいましたし、現役生活中にたくさんの出会いや感動がありました(もちろん悔しい思いも……)。改めて競技人生を振り返るとき、やはり大学の仲間と過ごした4年間は特別で、私の人生の財産になってます。せっかくですので、この連載を通して当時の話をさせていただきます。

タンポポ集めから始まったスクール

私は農業が盛んな神奈川県海老名市で生まれました。私の名前である「拓」も、お百姓さんたちが手で石を拾って道を拓(ひら)いてきたように、自分で人生を切り拓いてほしいとの願いを込めて、つけられたそうです。

ラグビーを始めたころの和田さん(左端)

毎週日曜日になると、私は田園風景の中を自転車をこいで、地域のラグビースクールに通ってました。タンポポ集めから始まる自由で楽しいスクールで、大して根気強くもない私が通い続けられたのも、週に1度、ほかの小学校の友だちと遊べる時間が楽しかったからだと思います。

中学生までスクールに通い、ラグビーの楽しさを学んだ私は「強くてうまい選手がたくさんいる環境でプレーしてみたい」と考えるようになりました。そして親の心配をよそに、花園の常連校である國學院久我山高校に進学することを決意しました。

中3のときの和田さん(左から4人目)。ラグビースクールの同級生とともに

通学には片道2時間15分かかりました。毎日のキツい練習に加え、連日課される小テスト。その勉強を通学の電車内でやるというハードな毎日でしたが、その日々がいまの私をつくり上げてくれたのだと思います。

リーチ マイケルたちとオーストラリア遠征

周りのレベルの高い選手たちに引っ張られるようにラグビーも上達しました。高1のときから全国大会に出場。高3では高校日本代表としてオーストラリア遠征に参加できました。そのメンバーには、9月20日に開幕するラグビーワールドカップの日本代表に選ばれたリーチ マイケル選手(東芝、30)や山中亮平選手(神戸製鋼、31)らもいました。当時の私にとっては、同世代のトッププレーヤーたちの高いスキルを肌で感じられた貴重な時間でした。そして彼らよりもさらに高い世界の壁を目の当たりにしたのです。「このままの努力では、彼らと戦ってはいけない」と、ラグビーに取り組む姿勢を考え直すきっかけとなりました。

オーストラリア遠征で高校日本代表メンバーとともに(後列の右から5人目が和田さん)

それまでは、ボールを前に投げてはいけないという矛盾にちょっとした美学を感じ、たまたま近くにラグビーをする環境があったからプレーを続けてました。でも、仲間と協力することの楽しさ、チームを代表して試合でプレーするという責任の重さを体感するうちに、高校時代に成し遂げられなかった「日本一」に対する思いが強くなっていきました。

大学でもラグビーを続けようと考えた私は、高校の担任の先生の勧めもあり、日本ラグビー最古の歴史を持つ慶應義塾大学に進学することになります。昔から父と観戦に行き、あこがれの眼差しで見ていた伝統の一戦への出場が、現実的な目標となった瞬間と言えます。

入学と同じタイミングで、さらなる変革を求めて監督が変わった慶應ラグビー部。私はこの入部が人生を大きく変えることになるとは、このときはまったく想像してませんでした。

走りこみと戦術理解、そして涙のジャージ授与式 元慶應ラグビー部・和田拓2

私の4years.

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