大学ラグビー

連載:私の4years.

最後の早慶戦は167人全員で勝った 元慶應ラグビー部・和田拓4

和田さんは慶應ラグビー部全167人の思いを背負い、ラストイヤーを駆け抜けた(写真はすべて本人提供)

連載「私の4years.」の8シリーズ目は、今年から慶應義塾體育會蹴球(ラグビー)部のBK(バックス)コーチとして後輩の指導にあたる和田拓(たく)さん(31)です。國學院久我山高(東京)から慶應に進学。卒業後はキヤノンイーグルスで主将も務めました。そんな和田さんが学生時代を振り返る5回の連載の4回目は、大学4年生で迎えた早慶戦、そしてともに戦ったラグビー部員167人の絆についてです。

初の早慶戦で大失敗、すべてをラグビーに捧げた 元慶應ラグビー部・和田拓3

111代の仲間との思い出は色あせない

2007年4月、私は43人の同期と出会いました。慶應ラグビー部は創部からの年数でその代を呼ぶのが伝統で、我々は「111代」と呼ばれます。この111代の仲間との出会いは、私にとって本当に特別で、4年間が充実していたのも、この同期と一緒だったからだと思います。

走り込みの練習で互いに高め合った選手。個人練習に付き合ってくれた選手。思い出はグラウンド外にもあります。同じ学部に同期がおらず、困っていた私をランチに誘ってくれた選手。休みの時間に部屋でずっと漫画を読ませてくれた選手。

ふざけるのが好きなヤツも多く、個性的でまとまりのない集団でしたが、4年間で家族より長い時間をともに過ごしました。いまでもグラウンドの近くにあったキンモクセイの香りをかいだり、当時聴いていた音楽に触れたりすると、あのころの情景が浮かんでくるようです。

早慶戦当日の朝、机上に置いてあったDVD

4年生のとき、まさに彼らが早慶戦での勝利を引き寄せてくれました。このとき慶應は早稲田に過去10年間勝っておらず、下馬評も早稲田有利。さらに、その前の明治戦に負けた慶應は、早稲田に負けると対抗戦の優勝がなくなるという状況でした。さらに、私にとって小さいころからのあこがれの舞台であると同時に、過去に大きな失敗をした試合です。試合の数日前から感情をコントロールできないほどの緊張で、ソワソワが止まりませんでした。

試合当日の朝は前夜の雨も上がり、晴天。いつも通り食堂で軽食をとったあと、部屋に戻ると、1枚のDVDが机の上に置いてありました。ビックリして再生すると、それは早慶戦に出られない同期からのメッセージ映像でした。励ます言葉や悔しさに満ちた言葉。それぞれの個性がにじみ出たその映像を見て、作るのに長い時間を要したことが、すぐ分かりました。

「この人たちのため、絶対に勝たなければならない」

強く、そう思いました。

和田さん(手前)は試合に出られなかった仲間の思いも背負い、フィールドに立った

試合はロースコアの大接戦。慶應は何度もピンチを迎えますが、必死のタックルで応戦。秩父宮に集まった2万人の観衆が見守る中、慶應は後半12分に主将の竹本竜太郎がトライを決め、勝ち越しに成功。私も時間をかけて練習してきたゴールキックを決めました。最後はピンチの場面でパスをつなぎ、ボールを外に蹴り出したところで試合終了のホイッスル。最終スコアは10-8。この2点の差に、全部員167人の思いが詰まっていたのだと思います。

試合後にスタンドを見上げると、部員席にいるみんなが泣く姿が目に飛び込んできました。

「仲間に勝利を届けられた」

あこがれの舞台で勝ったという喜びよりも、そちらの方が大きかったと思います。グラウンドから見たあの景色を、私は生涯忘れません。対抗戦では早慶明が6勝1敗で並び、3校間の得失点差(早稲田+14、慶應-1、明治-13)により、慶應は2位となりました。

和田さんが4年生だったときの関東大学対抗戦で、慶應は10年ぶりに早稲田を下した

たくさんの人に支えられ、やりきった大学ラグビー

それまで慶應ラグビー部は選手層が薄いと言われ続けていました。しかしこの年、Bチーム同士で争うジュニア選手権で、慶應ラグビー部創部史上初となる優勝を勝ちとりました。決勝戦は早慶戦前にメッセージをくれた4年生の同期が大活躍する感動的な試合で、チーム全体で築き上げてきたものが成果として現れました。

しかし私たちは、リーグ戦後の大学選手権で、のちに9連覇(私が4年生のときは2連覇目)を達成する帝京大に2回戦で負けてしまいます。あまりの悔しさに、私はいまでもその試合を見返せません。4年という歳月をかけて努力を重ねてきましたが、私たちが求めていた「大学日本一」には届きませんでした。勝負の世界で言い訳をするつもりは一切ありません。「勝負は時の運」と声をかけてくれる方もいましたが、もっと努力できたはずだと後悔している自分がいます。

ただ、先輩や後輩も含めて仲間と一緒に歩んだ道のりは本当にかけがえのないものでした。雨降る夜や冬の朝につらい練習をしているときでも、周りを見渡せばいつも仲間がいました。わがままな選手たちばかりのチームを支えてくれたトレーナーやマネージャーといったスタッフのみんなには感謝しかありません。

たくさんの人たちに支えられ、私は大学ラグビーをまっとうできたのだと思います。私は大学4年間で誇らしき「仲間」と、ここに書ききれないほど多くの「感動」に出会いました。

私、和田拓がつづる「私の4years.」最終回では、大学卒業後も続いたラグビーと私の関係、そして現在の大学生に対するメッセージを書かせてもらいたいと思います。

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