大学サッカー

連載:サッカー応援団長・岩政大樹コラム

高校選手権とアジアU-23選手権を見て思う、20歳前後の選手たちを分けること

1月13日の高校選手権決勝、静岡学園が青森山田を破り、24大会ぶりとなる頂点に立った(撮影・内田光)

2020年が明け、今年はオリンピックイヤーです。オリンピックイヤーの幕開けに、サッカー界では高校選手権とアジアU-23選手権がありました。例年以上に盛り上がりを見せた高校選手権と、結果を出せなかったU-23日本代表。躍動した高校生と、躍動できなかった若手プロサッカー選手。その対比があまりに強烈で、この1月はいろいろと考えさせられました。

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「自分」なるものを持つ

高校選手権もU-23も、世代のトップ選手がそこに顔を見せて戦っていますが、実際にはその後ろにたくさんのチーム、選手、指導者がいます。彼らはその代表、ある意味で象徴とも捉えられる存在です。「高校選手権のチームが素晴らしかった」「森保ジャパンがよくなかった」では片付けられない問題が、そこに潜んでいるように思えてなりません。組織運営、目標設定、ビジョン、戦略、戦術、マネジメント。様々な視点で語れますが、ここでは人生の中の20歳前後の位置付けについて話をしましょう。

当たり前の話ですが、高校生までの生活とその後は大きく変化します。言われるがままにやるべきことが次から次へとやってきて、追われるように過ごす高校生までとは違い、高校卒業後は自分の時間もできます。大学生にしろ社会人にしろ、社会という大海原へ解き放たれ、自分の人生と向き合う感覚が格段に増します。

サッカーも同じです。「まっすぐにサッカーに向かう」というのは変わらずとも、自分のサッカー観や自分の人生におけるサッカーとの関わり方など、より広い視点の中でサッカーを捉え直す考え方に、否が応でも直面します。そのときに、自信をもって最初から「自分」なるものを持てる人物は少ないでしょう。みな必ず一度は挫折や停滞に似た経験をして、自分と向き合った先に、ようやく自分の足でしっかり歩ける自分にたどり着きます。

「自分」なるものを持つ、とは、もしかしたら「決断力」と言い換えてもいいかもしれません。いつリスクを冒し、いつ耐えるのか。それが躍動できたかどうかの、高校生と若手プロサッカー選手たちの差だったように感じました。

確かに、毎日ともに練習ができる所属チームと代表チームは違います。判断基準が共有されない中では、どうしても迷いや食い違いが出てくるもの。ましてや、高校生までは与えられていたものが与えられなくなると、戸惑いも大きいでしょう。

ただ、それがチームで共有できなければ表現できない“自分”では「弱い」と言わざるを得ません。“自分”でなんとかできる力をつけておくのも一つ、周りを動かして全体で修正させていく力を持つのも一つ。いずれにしても、流れる時間の中で移り変わる流れを手繰り寄せる、そんな術を持たなくてはなりません。

しかし、20歳前後とはそういう年代だと思います。個人能力もコミュニケーション力も全体を俯瞰(ふかん)して勝負どころを見極めていく力も、すべてはこれから。この経験を糧に、一人二人と成長していくことも、また間違いないことなのです。そう考えれば、いまのU-23の停滞も彼ら一人ひとりのキャリアを通した中では、停滞ではなく助走なのでしょう。

大学時代は無駄が無駄ではない時間

結局、何が言いたいかといいますと、18歳から22歳を歩む大学生の時間が何物にも代えがたい時間であるということです。

幅広い経験と幅広い出会いと幅広い学び。それを得られるかどうかは自分次第(撮影・山本倫子)

大海原の中で「決断力」を持つためには、高校生までおそらく追求してきたであろう選手としての“深さ”だけでは足りません。人としての“幅”が必要です。さまざまなことが起こり、移り変わっていく流れに対応していく幅と懐を持った“確固たる自分”を作り出すために、いまの時間をぜひ大切にしてほしいと思います。

無駄が無駄ではない時間です。たくさんの失敗も失態も、おそらく「あのとき自分は若かった」と振り返ることができることでしょう。やはり、何かをなした人生にしたいなら努力が必要です。迷いなく突き進む自分にたどり着くためには、考えることが必要です。そして、幅を持った自分で未来に立ち向かいたいなら、幅広い経験と幅広い出会いと幅広い学びが必要です。大学にはそれがすべて用意されていますよね。使うかどうか、うまく使えるかどうかは、自分次第です。

みなさんの目の前には出会いと学びが広がっています。みなさんにとって、そこに手を伸ばす勇気を新年の誓いとされて、前に進める年となりますよう、祈念いたします。

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