野球

連載:野球応援団長・笠川真一朗コラム

特集:WBC戦士と4years.

日本一のショート 埼玉西武ライオンズ・源田壮亮さんの自主トレに帯同して(下)

バッティング練習をしてとにかく手が痛い…!みんなに笑われました(すべて撮影・佐伯航平)

4years.の野球応援団長である笠川真一朗さん(25)のコラムです。1月に埼玉西武ライオンズの源田壮亮選手(27)の自主トレを手伝ってきました。そこで感じたこと、疑問に思ったことを素直に綴(つづ)ってくれました。後編はそれぞれのトレーニングで源田さんが意図していることや、笠川さんがこの体験で得たものについてです。

WBC出場選手の過去記事をまとめた特集「WBC戦士と4years.」
前編「一緒に練習しよ!」はこちら

正しい形で守備練習をすれば、足もたくさん使う

自主トレ期間中は、そこまでハードなダッシュやランニングをほぼやりませんでした。僕の勝手に、やっぱりプロ野球選手は自主トレで走り込むのかなと思ってました。長いシーズンを戦い抜くために。でも源田さんは言います。「守備の基本練習を正しい形でやってれば、足もたくさん使うから、それ自体が自然にトレーニングになってる。ちゃんとやればキツいから。走ることがムダとは思わないけど、自分の場合は優先順位はそこじゃない。より多くの球を捕る基本練習に時間を使うようにしてる」

源田さんの守備は本当になめらか。全身を使っているのがわかります

確かにそうです。同じ部位が鍛えられるなら、より多くの球を受けて技術向上にもつなげたほうが圧倒的に効率的ですし、単に走ってるよりもずっと楽しいと思いました。理にかなってます。

守備練習が終わった後は、昼食・休憩の時間です。3人のプロ野球選手と僕。なぜか毎回、僕が最初に食べ終わってました。藤岡選手に「かっちゃん(藤岡選手は僕をこう呼びます)食べるの早くない?(笑)」と言われました。僕がこの3人に勝てるのは、スピーディーな食事だけでした。ありがたいですが、今年はゆっくり食べることを心がけます。

野球に正解なんてない

午後はバッティング練習です。グラウンドでロングティー、キレを出すために速めのアームマシン、ティーバッティング、僕の投げた球を打ったりと、とくに変わった練習はしませんでした。

この時期のバッティング練習について源田さんは「引き出しを増やすためにいろいろと試して『これいいな』とか『自分に合ってるな』と思ったものを何個かキャンプに持っていく」と言います。いろんなことを試しながらバットを振っていました。守備も打撃も走塁も、感覚は人によってもちろん違うので、その人に合ったものがあると思うと「正解なんてないんだな」と、改めて野球の難しさを痛感しました。

交代でバッターボックスに。かなり鍛えられました

いい結果を出し続けるためには、変わらないでいることも大事ですが、変わっていく勇気を持つことも必要です。体の状態も永遠に一定なはずがありません。同じ動きは、ずっとはできないのです。どれを信じてやっていくかも自分次第で、自分の選んだ道の答えは数字による結果だけが教えてくれます。野球だけでなく、プロのアスリートは本当に手探りの状態から納得のいく結果を出すために練習しています。限られた選手寿命と戦いながら、日々試行錯誤しているプロアスリートの方々には尊敬の念しか出てきません。バッティング練習を見ていると、ふとそんなことを感じました。

球出しをしていると、3人の癖もだんだん見えてきます

僕がバッティングピッチャーをしていると、源田さんが「ちょっと代わって。俺が投げる」と言いました。理由を聞くと「指先の感覚を忘れないための練習になる」とのこと。これにもしっかり意図がありました。また勉強になりました。

わからないことはすぐに確認。こうしてどんどん技術を高めあっていきます

バッティングピッチャーの球が回転が悪いと、バッターは不快になります。そうなるといい練習にはなりません。きれいな回転で投げることは、いい守備にもつながります。相手が捕りやすい球を投げる練習です。投げ過ぎは確実にダメですが、この練習を採り入れてみるのもいいんじゃないかと思いました。

自主トレが終わっても体は動かしてます!

バッティング練習のあとはまた、トレーニングです。坂道ダッシュやランニングで1日の練習を締めます。トヨタ自動車硬式野球部のクラブハウスの脇には「走るために作ったんじゃないか」と思ってしまうほど、走るのにはもってこいの坂道があります。傾斜はそこまでキツくないですが、距離がたっぷりあるのです。

カメラマンの撮った写真でも、動きを確認したりしていました

自主トレの最初の方はとてもキツくて筋肉痛がひどかったですが、毎日やってれば体も慣れてきますし、体力もついてきます。最後の方は僕もしっかり走れるようになってきて、体を動かす楽しさがハッキリと自分の中に芽生えました。自主トレが終わったいまも、僕はランニングやダッシュ、体幹トレーニングを継続してます。体を動かすことのキツさを少し知ってるだけでも、選手に取材をする上でプラスになるかなと思ったからです。僕もまだまだ野球がうまくなりたいし、体力があるに越したことはないと思うようにもなりました。

そして改めて、ペナントレースで約140試合を戦うプロ野球選手の体力は、とてつもないなと思いました。同じようにトレーニングしてると、「キツい」とか「体が張ってる」とか言いながらも「体力がすごいなあ」と思わされ、改めて驚きました。

ラグビーやソフトボールにも触れた2週間

本当に毎日が学びの連続で、あっという間に過ぎ去った2週間でした。練習以外にもラグビーのトップリーグの試合を見に行ったり、トヨタ自動車の女子ソフトボール部「レッドテリアーズ」の練習を見に行ったり。普段、あまり生で見ることのない競技に接して僕もすごく勉強になりましたし、どんなスポーツも素敵だなと改めて感じました。

黒ちゃんの成長ぶりには眼を見張るものがあります!これからどうなっていくのか楽しみです!

なによりトヨタ自動車硬式野球部のみなさんがものすごく優しい方たちばかりで、僕のこともすごくかわいがってくれました。それぞれの選手の自主練習を見ても、自分の課題と向き合っていろんなことを考えながら一生懸命に練習しているのが感じ取れました。ずっと続けてきた野球を仕事にして給料をもらい、企業の看板を背負って激しく熱い試合を一丸となって戦う社会人野球の選手は、僕にとっていつまでもヒーローです。すごくかっこいい集団だと思いました。トヨタのみなさんが都市対抗で東京に来てくれるのが、いっそう楽しみになりました。

源田さんのおかげで、新たに知り合って意気投合した素敵な方々との出会いもたくさんありました。本当に数えきれないほどの幸せな経験をさせてもらえて感謝しかありません。

やりたいことに向かっていったら……

僕は大学で野球を引退して、百貨店に勤めてサラリーマンになって、それでも野球の仕事がしたい、と思ってここまできました。自分の道は間違ってなかったと、最近よく思います。それはこうして4years.の仕事を通して、たくさんの野球選手に取材をして、読者のみなさんに野球そのものや選手の魅力を知ってもらえたりすることが、いまの僕のやりがいや生きがいになっているからです。

自分のやりたいことに向かって走っていったら、こうしてあこがれのプロ野球選手の源田さんの自主トレに参加できました。普通ならありえないことです。そんな素晴らしい経験が25歳の僕に待ってるとは思いもしませんでした。こういった経験から得た学びを発信することが、僕の使命だと思ってます。これからもこの思いと感謝の気持ちを忘れず、野球と向き合っていこうと思いました。

やりたいことを考えていたら、いつの間にかこの場所に。本当に感謝です

そして何より、今回最もうれしかったのが「プロに入ってからの3年間で一番濃い自主トレになったよ。ありがとう」と源田さんに言ってもらえたことです。
お礼を言うのは僕の方です。
本当に何から何までありがとうございました!
引退まで追っかけ回すのでご了承ください(笑)!

裕大、黒ちゃん!
自主トレではお世話になりました。
本当にありがとう!
友達になれてうれしかった!
これからの活躍を心から祈ってます!

そして僕も今年から、芸人として所属していたワタナベエンターテインメントを退所してフリーライターとして頑張ります!
サラッとここでの報告になりますが、僕も腹を決めて野球と向き合います!
可能性は無限大!
野球選手のみなさんに負けないように僕も頑張りますので、これからもよろしくお願いします!

野球応援団長・笠川真一朗コラム

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