ラクロス

連載:ラクロス応援団長・おばたのお兄さんコラム

おばたのお兄さんが甲子園を目指していた時に直面した「意識統一」の難しさ

とあるラクロッサーからの質問におばたのお兄さんは実体験も含めて答えます(撮影・全て齋藤大輔)

SNSを通じて、現役の大学生の「ラクロッサー」(ラクロスをしている人の総称)から相談メッセージを送られてくることが多々ある。昨夏、深刻なコロナ禍の時期にきた相談で、なおかつ僕自身“も学生のチームスポーツ”において最も難しいと思う点について今日は書こうと思う。

おばたのお兄さんの「ラクロス4years.」

コロナ禍で4年生がひとつになれない

女子3部リーグに位置する、ある大学の選手から送られてきた。

「私は現在、4年生でチームの幹部です。今年はコロナで学生リーグが中止になりました。目標も失われ、4年生はみなモチベーションがなくなり、“早く引退したい組”と、“後輩たちの育成のためにも本来の引退期である秋まで頑張りたい組”に分かれています。私は後者ですが、みんなの気持ちがひとつじゃないので、チームとしていい状況ではありません。ここまでせっかく頑張ってきたので気持ちよく引退したいです。どうするべきでしょうか?」

(なんとなくこんな感じの文でした)

難しい質問すぎて、長い時間この文章とにらめっこした。というのも、僕は自分の体験や経験のないことを憶測などでアドバイスしたくないし、しないようにしているからだ。富士山の話を聞くなら、富士山のことを事細かに調べていて情報だけ多い人よりも、実際に登ったことある人に話を聞く方が説得力があるから。

で、どう返したか。

「僕たち(日本体育大学ラクロス部)は、大学日本一を目指していたがその目標は達成されなかった。しかし、目標に“チャレンジ”はできた。だから正直、目の前で大会がなくなってしまった君たちがどれだけ悔しくて苦しいかは分からない。それは当事者しかもてない感情だと思う。だから、その経験がない僕が、とやかくは言えない。でもひとつ“経験者”として言えることは、4年間苦楽をともに“やり切った仲間”は、一生もんだ。結果に対しては悔いは残るし、自分の過程に対しても、もっとああしとけばよかったと思うことはあるけど、仲間に対してはもちろん何の悔いもなく、膨大な感謝がある。そしていまだに仲も良く、自分の支えになっている。それはきっと、一緒に最後までやり切ったからだと思う」

おばたのお兄さんにとって、4年間苦楽をともに“やり切った仲間”は今でも大切な存在だ

相談者は、もっと「今」のことを言ってほしかったかもしれないが、前述した通り、それは当事者しか分からない。だから僕が言えることはこれだった。

苦しい時に心の支えになる仲間の存在は他には代え難いし、「やり遂げる力」というのは、今もこの先も「頑張らなきゃいけない時に、頑張れる力」になる。それが、僕はこのコロナ禍に発揮された。だから僕は、相談者に対してもそのチームに対しても、そうあってほしいとアドバイスさせてもらった。

甲子園を目指し「団結組」の仲間と進学したが……

しかしそうは言っても難しいことは知っている。そう。学生スポーツのチームにおいて、最も難しいのは「意識レベルの統一」だと思うからだ。なぜか。また例を挙げよう。

僕が中学3年生の秋に、ふたつの市の中学10校ほどの3年生が集まり、高校に向けての硬式ボールでの練習会が行われた。その時に目立っていた選手たちで「地元(新潟)の小出高校に入って甲子園を目指そう!」と団結し、その後、小出高校に入学して野球部に入り、甲子園を目指すこととなった。

小出高校はそれまで万年2回戦止まりの、いわゆる弱小校。そこに僕ら「団結組」は当然、甲子園を目標に入ってきたが、万年2回戦止まりの高校の野球部に入ってくる選手は「絶対に甲子園に行きたい!」と思って入ってくる人だけではないのだ。これが「強豪校ではない高校」の難しいところ。そう、チーム内で「意識」に差が生じてしまう。

僕らの代になった時は僕がキャプテンとしてチームを引っ張り、県内県外問わず対外試合で強豪校や甲子園出場校に勝つなどと調子はよかったが、それでも正直、部内でかなり意識の差があった。「甲子園にいくためなら休みを惜しまず練習しなければいけない」と本気で思っている選手と、「遊ぶ時間もほしい」と思うような選手が混在していた。もちろんミーティングを重ね意識の統一を図ろうとするが、統一できたかのように見えても個々の行動が伴わず、なかなかうまくいかない。結果、最後の夏は例年通り2回戦で敗退してしまった。

甲子園を目指して努力を続けたが、最後までチーム内の意識統一は難しかった

超がつく強豪校はこれがかなり少ないのだと思う。理由は単純明快で、全員が「甲子園出場」や「甲子園優勝」を目標に入ってきているからだ。だから向いてる方向がみな同じで、意識の統一が図りやすい。プロの世界も同様だ。

チーム、団体において個々の意識を統一するというのは「〇〇したい!」の意識だけではなく、「そのために何をどれだけ犠牲にできるか」というのも統一しなければいけないのだと、経験から思う。それをどれだけ細かく詰めて、「この目標達成のためにはこれをすることが必要で、そのためにはどう動くべきか」まで決めて初めて、方向性がクリアになるのだろう。後悔先に立たずとはいうが、きっと同じような悩みを抱えて学生スポーツをしている選手がたくさんいると思うので、僕の経験を参考にしてみてほしい。

でっかいことを言えば、世界中のみんなが平和の意識統一をしたら、戦争なんてなくなるのにね! Love &Peaceで今日は終わりましょう。それではまた来月!

ラクロス応援団長・おばたのお兄さんコラム

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