箱根駅伝で印象に残ったシーンは? 西村菜那子が熱戦を振り返る!
「駅伝に詳しすぎるアイドル」として陸上ファンも一目置くNGT48西村菜那子さんのコラムです。22年初回のコラムは、西村さんが箱根駅伝で心に残ったシーンを改めて振り返ってもらいました。
強すぎる! 青山学院大学
みなさん、こんにちは! 少し遅くなりましたが、2022年もよろしくお願い致します。
年始に開催された第98回箱根駅伝は、青山学院大学の優勝で幕を閉じましたね。「強すぎる!」の一言に尽きます。青山学院大学が優勝する予想をされていた方は多かったと思いますが、2位と10分51秒もの差をつけて完全優勝をすることまでは、なかなか予想できなかったと思います……。
往路は1年生を3区、5区の重要区間に配置する賭けのオーダーが見事に功を奏し、キャプテンの飯田貴之選手(4年、八千代松陰)も役割を果たす完璧な布陣。その上、復路に花の2区を経験している岸本大紀選手(3年、三条)、佐藤一世選手(2年、八千代松陰)が控えている恐ろしさ。誰一人崩れることのない走力で、圧倒的な強さを発揮しました。
中でも印象に残っているのは、注目ルーキーと言われていた3区の太田蒼生選手(1年、大牟田)。今大会で、万全を期して大学駅伝初出場を果たしました。3区途中、大学長距離界でもトップクラスの実績を持つ、東京国際大学の丹所健選手(3年、湘南工科大附)を突き放す快走は、多くの駅伝ファンの度肝を抜いたことだと思います。
太田選手でチームがトップに立つと、そこから一度も先頭を譲ることなく優勝。毎回箱根駅伝では大会MVPである「金栗四三杯」というものがありますが、もし「西村菜那子杯」があるとすれば(そんなものは絶対にありませんが笑)、太田選手を選びたいです。
今年の金栗四三杯には青山学院大学の中村唯翔選手(3年、流経大柏)と中央大学の吉居大和選手(2年、仙台育英)の2人が選ばれたので、西村菜那子杯にもう1人を選ぶとしたら、専修大学の木村暁仁選手(2年、佐久長聖)です。
中継車のカメラ、選手は気になるもの?
さて話を戻しまして。2位の順天堂大学も大健闘でした。エースの三浦龍司選手(2年、洛南)が2区で区間11位だったほか、1区、9区、10区では区間2桁でしたが、その他の選手は区間上位で走りました。中でも6区牧瀬圭斗選手(4年、白石)、8区の津田将希選手(4年、福岡大大濠)が共に区間賞の力走を見せるなどして、15年ぶりの3位以内でフィニッシュしました。
3区を走った伊豫田達弥選手(3年、舟入)が復路の日、6区で順天堂大学に中継車がついたことの喜びを自身のTwitterで呟いていたので、私が「カメラに映る写らないでモチベーションはやはり変わるものなのでしょうか?」とリプライを送ったところ、「変わると思います! 走ってる時は放送に載ってるか分からないんで、いつカメラに抜かれてもいいように頑張れます!」とお返事をいただきました。やはり、TVで放送されることは、絶大なモチベーションに繋がるようです。色々な選手がカメラに映ることを願います!
3位では前回王者の駒澤大学がフィニッシュ。2区田澤廉選手(3年、青森山田)が区間賞の走りで首位に浮上したものの、他の区間で少し出遅れがありました。それでも復路で巻き返し、しっかりと表彰台を獲得する強さを持つのが駒澤大学です。今回の出場メンバーから9人が来年以降も残りますし、なんといっても1500m、3000m、5000mの高校日本記録を持つ佐藤圭汰選手(洛南高3年)が入学してきます。また来年度からも強い駒澤大学が見られそうです。
巻き返しといえば、4位の東洋大学も。往路では9位と、このままではシードも危ういのでは……と心配の声があった中で、8、9、10区の上級生がしっかりと力を発揮し、結果は3位に迫る4位。鉄紺の意地を見ることができました。個人的には、2区松山和希選手(2年、学法石川)が区間5位と、復活の走りが嬉しかったです!
対照的に復路では厳しい結果となってしまいましたが、往路2位と目ざましい活躍を見せたのが帝京大学。総合順位では9位になりましたが、3区スペシャリストの遠藤大地選手(4年、古川工)をはじめ、5区区間賞の細谷翔馬選手(4年、東北)、2区の中村風馬選手(4年、草津東)といった4年生が底力を見せてくれました。4年生が活躍する強さを持つのが、帝京大学の特徴。「育成の帝京」を今年も見ることができました。
熾烈! シード権争い
優勝争いとは違う箱根駅伝の醍醐味「シード権争い」が、今年も熾烈を極めました。まずは古豪、中央大学が6位に入り10年ぶりにシード獲得。1区の吉居大和選手(2年、仙台育英)が見せた、2007年大会で東海大学の佐藤悠基選手(現・SGホールディングス)が打ち立てた区間記録を塗り替える走りは全国の駅伝ファンの心を序盤から熱くしてくれました。
来年度から吉居選手の弟、吉居駿恭選手(仙台育英高3年)が中央大学に入学します。さらに、今回はエントリーされませんでしたが、伊東大翔選手(2年、國學院久我山)の弟、伊東夢翔選手(國學院久我山高3年)も入学したりと、来年は兄弟リレーが実現するかもしれません。
シード獲得の境界線である10位に滑り込んだのが法政大学でした。10区の川上有生選手(3年、東北)がゴール手前の交差点で、誤って右に曲がりそうになる、デジャブ(?)な展開がありましたが、無事に10位でゴール。危うく寺田交差点が川上交差点になるところでしたね……(笑)。
まさかのシード落ち、東海大学
そしてまさかのシード落ちをしたのが東海大学。2020年の覇者ということもあり、今回は悔しい結果となってしまいましたが、それでも5区の吉田響選手(1年、東海大静岡翔洋)が区間2位の力走を見せるなど多くの爪痕を残していました。
個人的に印象深いのは1区で区間3位の健闘を見せた市村朋樹選手(4年、埼玉栄)です。下級生の頃から活躍してきましたが、意外にも箱根駅伝は今回が初めての出場。駅伝では悔しい思いをすることが多かったと思いますが、最初で最後の箱根駅伝で本来の力を発揮した姿にとても嬉(うれ)しく思いました。
先月、「オトナのタイムトライアル」通称OTTという陸上大会のイベントにプライベートでボランティアとして参加したのですが、そこに市村選手のお父様がランナーとして出場されていました。お父様の走りが、心なしか市村選手に似ている気がして、市村選手のフォームは親譲りなのかなと感じました。
お父様のTwitterには箱根駅伝後に、市村選手への愛情あふれるコメントが綴られていて、私まで温かい気持ちになりました。市村選手の弟である竜樹選手も、現在コモディイイダで陸上をされていて、まさに陸上一家。朋樹選手だけでなく市村家の今後の走りに注目したいです!
駿河台・坂本主将の「楽しかった!」に涙
他にも、今回の大会を語るときに外せないのが駿河台大学。初出場ながら繰り上げスタートを回避し、襷(たすき)を最後までつなぎました。アンカーを務めたキャプテンの阪本大貴選手(4年、西脇工)が最後にゴールした際、放った「楽しかった!」という言葉に私は涙しました。
この言葉には、10区23kmを走ったことが楽しかっただけでなく、この4年間、箱根を目指した過程すべてを表しているような気がして、1人の駅伝ファンとして本当に嬉しい気持ちになりました。選手の皆さんが楽しんで走ってもらえることがファンとして何よりも尊いのです。今回、大会を様々な角度から楽しませてくださった駿河台大学がまた来年も箱根駅伝に出場することを願っています。
いつもに増して長くなってしまいましたが、今年の箱根駅伝が無事に終わったこと、たくさんの感動をもたらしてくれた学生の皆さんに感謝しています。また来年、新たなメンバーを加えた箱根駅伝を見れることがとても楽しみです!
今年も一緒に駅伝を満喫していきましょう!