陸上・駅伝

連載:NGT48西村菜那子の大学陸上ココに注目!!!!

選手が「いい4年間」と思えるように NGT48西村菜那子×上野裕一郎対談(下)

2人とも笑顔が絶えない対談となりました(撮影・藤井洋平)

「駅伝に詳しすぎるアイドル」NGT48の西村菜那子さんと、かつて中央大学やエスビー食品で活躍し、2018年12月に立教大学陸上競技部の男子駅伝監督に就任した上野裕一郎監督。長野県出身の2人の対談が実現し、地元や駅伝の話題を大いに語りつつ、西村さんが陸上競技や大学生ランナーに関する様々な疑問をぶつけ、上野監督が自身の現役時代の話を交えながら答えてくれました。対談の後編は、寮での生活や、今年の駅伝界について語り合いました。

上野監督流、独特の選手スカウト方法! NGT48西村菜那子×上野裕一郎対談(中)

寮のルールは選手が決める

西村:寮があることでだいぶ変わりましたか?
上野:
去年の3月からだから、もうできて1年8カ月ぐらい経つのかな。だいぶやりやすくなりました。でも、去年はコロナと新入生の入寮時期がかぶってバタバタしました。入ってきたはいいけれど、今度は部活動が禁止になって。各自練習しかできない時期が続きました。
西村:寮の部屋割りは監督が決めるんでしょうか。
上野:2人部屋で、新入生の1回目はこちらで決めますが、あとは同じ学年で組むので、選手たちに決めさせています。
西村:そうなんですね。他の大学のお話とかを聞くと、先輩と後輩が同部屋になることが多いみたいですよね。
上野:授業の取り方とか親しみやすさを考えれば、同じ学年の方がいいかなと思ってます。うちは学年ごとの壁はないのでそれでもいいんですが、「あいつと話したいけど、部屋に行くと先輩いるから無理」となると楽しくなくなってしまう。先輩に気を遣いながらなんて、きついじゃないですか。同じ学年にすることで、たまり場になっている部屋もあります。そこは自由でいいんじゃないかなと思います。

ぜひ今度寮に遊びに行かせてください!(撮影・藤井洋平)

西村:珍しいですね。上野さんの学生時代はどういう部屋割りだったんですか?
上野:今の中大の寮ができる前の南平寮で、4年、3年、2年、1年の4人部屋でした。2段ベッド2つで4人部屋という。
西村:ええっ。それは休まらない……。
上野:休まらないですね(笑)。1年の時は地獄です。いろいろな運動部の部員が500人も住んでいた寮で、風呂も立ち風呂。監獄です。その点、今の立教の寮は長距離専用寮なので長距離部員しかいません。造りもシンプルで、食堂、トレーニングルーム、各部屋、治療部屋、トイレ、風呂しかない。あとは奥に監督室とコーチ室と主務室があります。
西村:主務は女性ですよね。
上野:そうです。あと2年生の女子マネージャーには、「マネージャーをしっかりやりたいから」と、自宅から通えるのに大学の横の女子寮に入って、韓国語の勉強も頑張っている子もいます。
西村:食事はみなさん、どうされているんですか。
上野:朝と晩は寮で食べます。昼は各自で学食で食べたり、外に行って食べたり。コロナ期間にすごかったのは、2台の電子レンジが買ってから半年で2台とも壊れたことです。今は新しいレンジが3台入りましたが、それも若干怪しい。レンジだけじゃなく、洗濯機も乾燥機もフル稼働するんです。使用量がやばいです。

2004年の全日本大学駅伝2区では10人抜きの激走だった上野さん(撮影・朝日新聞社)

西村:門限も決まってるんですか。
上野:21時半ですね。
西村:早いですね。
上野:でも、朝練で5時過ぎには起きていろいろ準備しないといけないと考えると、夜は22時半には床につかないといけない。でも、授業レポートや勉強もあるので、各自の部屋は22時半消灯と選手が自分たちで決めて、食堂はフリーにしています。レポートやどうしても終わらない課題があったら、食堂でやるのはOKという形を作ったようです。面白いなと思いますね。しっかりしている子はしっかりしていて、21時半には歯を磨き終わって部屋でゆっくり過ごすとか、トレーニングルームでストレッチしたり雑談しながらケアしたり。21時から22時はトレーニングルームでケアすると決めて、ストレッチなどをしっかり1時間やっている選手もいます。すごいと思いますよ。
西村:みなさん、しっかりしているんですね。落ち着いたタイミングでぜひ寮に訪問させてください。
上野:ぜひぜひ。いつでも来てくださいよ。

「戦国駅伝」上野監督の予想は?

西村:今、大学生の駅伝は戦国駅伝と言われていますが、どう思われますか?
上野:どこの大学も必死なんだろうなというのは伝わってきますね。留学生を獲得したり、練習環境を整えたり、いろいろな部分で物を惜しまない。靴が進化して、練習内容は確立されてそれほど差がなくなってきたので、あとは大学のブランドは大きいですよね。選手は学歴とか監督との相性とか寮がきれいとかで大学を決めていると思います。
西村:選手も学歴を意識されるんですか?
上野:している人もいると思いますよ。僕もなんとなくそこは考えていて、中央大の法学部を選びました。でも箱根駅伝という視点で言えば、常連校には長い時間をかけて構築したものがあります。たとえば駒澤は大八木(弘明)さんが20何年もかけてやってきた。僕はまだ3年目で、苦労してきた時間、頑張ってきた時間という量で勝負されたら敵(かな)いません。
西村:来年の箱根は駒澤が勝つと思いますか? 私の予想は、往路はチャレンジな予想で、順天堂、駒澤、青学。総合優勝が駒澤、青学、順天堂です。

本当にどこの大学も戦力が拮抗していますよね(撮影・藤井洋平)

上野:どこが勝つんだろう。うーん、青学かな? 駒澤は田澤(廉、3年、青森山田)や(鈴木)芽吹(2年、佐久長聖)が絶好調で、タイムを持っている子たちがその力通りに走るなら面白いと思います。あとは山上りや下りの特殊区間次第ですね。ここで勝敗が分かれるんじゃないかなと思います。創価大は全体的な力はついてきたので、2区予想のフィリップ・ムルワ(3年、キテタボーイズ)が、東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(3年、チェビルベレク)とともに前の方に抜けていけば、創価や東京国際も面白いと思います。留学生がいる大学は2区で前に行って、どこまで青学や駒澤に差を開けるかがポイントになるでしょうね。

「上野イズム」で学生たちにいい経験を

西村:新しいチームづくりということで、東京国際大や創価大のような、創部して10年以内に箱根駅伝に出たようなチームを参考にするようなことはありますか。
上野:いや、僕はどこの大学も参考にしません。立教大からは、「自分がやりたいことをやっていい」と言われたし、総監督やコーチにも「上野君を連れてきたのは、上野イズムを作るためだから、やりやすいようにやってほしい」と言われているからです。だから現役の時に指導を受けた瀬古利彦さんや国近友昭さん、田幸寛史さん、両角(速)先生などから教わったことをもとに指導しているという形です。でも、立教の文化も大切にしたいので、立教大学から「ここはしっかりやってください」と言われたことに関しては、それを組み込みながらやっています。
西村:母校の中大の存在は気になりますか?
上野:気になるというか、中央大学と勧誘でバッティングしたくないなあとは思います。
西村:そうなんですね。
上野:大学で競技をするということは、学費もですし寮費やその他活動費もかかります。自分はそういう家庭の子を預かっているんだという気持ちだけは忘れないでやっていかないといけないと思っています。自分が親の立場になって、高いお金を払ってるのに、「あの監督、適当だな」と思われたら嫌ですから。別に陸上で結果が残らなくてもいいんです。立教大学を卒業して良かったなとか、良い仲間と巡り会えて良かったなとか、良い大学4年間だったと思ってもらえればそれでいいかなと。もちろん、箱根駅伝に出て活躍できれば最高ですが、本気になって箱根を目指す時間を送れるだけで、すごく幸せなんですよ、もうすでに。親御さんは大変ですけど、子供たちはそういうことを考えずに今やるべきことに集中してやればいいわけです。

学生が4年間、立教に入ってよかったと思えるように。上野さんの挑戦はまだまだ続きます(撮影・藤井洋平)

西村:2024年1月に箱根駅伝本戦出場を目指す、「立教箱根駅伝2024」のプロジェクトは順調に進んでいますか?
上野:年々強い子は数人ずつ入ってきていて、上位層はそれなりに走るので、あとは4人から8人目あたりの中間層の底上げができるかどうかですね。箱根駅伝に出たら、「やった!」じゃなく、次は1人で20数kmを走らないといけない。来年か再来年には予選会を突破するので、本戦の方にも頭を回しておかないといけないんです。1回本戦に出たら、予選会に落ちたくない。1、2回は行き来するかもしれませんが、シードが当たり前になってくれば、スカウトの流れも変わって、青学や駒澤といったところと勝負していけるという絵を描いています。そう簡単でないのはわかっていますけどね。
西村:ますます楽しみになってきました。またぜひお話させてください! ありがとうございました。

NGT48西村菜那子の大学陸上ココに注目!!!!

in Additionあわせて読みたい