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連載: プロが語る4years.

30歳の今「勝負の年」、葛藤しながらもチャンスは自分で作る 名古屋D・張本天傑4

2016年に名古屋に来た張本は7シーズン目を迎えるにあたり、チームの変化を実感している(写真提供・B.LEAGUE)

今回の連載「プロが語る4years.」は、男子バスケットボール日本代表として昨夏の東京オリンピックにも出場した名古屋ダイヤモンドドルフィンズの張本天傑(てんけつ、30)です。名古屋は昨シーズン、BリーグCS(チャンピオンシップ)進出を果たしました。4回連載の最終回は、名古屋で7シーズン目を迎える今についてです。

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勝てないチームが優勝を狙えるチームになった

6年という時間は決して短いものではない。張本が過ごした名古屋ダイヤモンドドルフィンズの6年間も同様だろう。改めて振り返れば、その都度感じたいろいろな思いがよみがえる。山あり谷ありだった6年間。だが、そこで積み上げてきたものへの自負はある。7シーズン目を迎える張本の胸にあるのは、「このチームは間違いなく成長できている」という確固たる自信だ。

「僕はドルフィンズというチームが好きです。入った時からそれは変わりません。ただ正直なことを言えば、チームとしてちょっと緩いイメージがありました。明るくていいチームなんだけど勝負強くない。メンバーは決して悪くないんだけど勝てないみたいなイメージですね。だけど、今は変わってきました。一言で言えばいろんな意味で優勝を狙えるチームになったと感じています。7年目の僕が言うのだから間違いありません」

その変化こそが、連載1回目に述べた昨シーズンのCSクォーターファイナル。そこで見せた「諦めない名古屋」だったのかもしれない。もちろん、すべてが順調なわけではなく、張本の中に葛藤がないわけでもない。チームにおける自分の役割についてもどかしさを感じることもあるようだ。

「もどかしさと言っていいのかは分かりませんが、うちは毎年、けが人が多いんですね。それが外国籍選手の場合、どうしてもその穴埋め役は僕に回ってきます。僕が本来目指しているのは3番ポジション(スモールフォワード)で、毎年シーズンが始まる前は『よし、今年は頼れる3番としてプレータイムを伸ばしていこう』と思うんですが、1人でも外国籍選手が抜けると自分がカバーに入ることになるので、ああ、今年もまた来たかって感じになってしまう。さらに(外国籍選手の)離脱期間が1カ月、2カ月と長引けば僕はずっとビッグマンの役割を続けなくてはなりません。自分が望む3番ポジションではなくなってしまうわけです」

なるほど。言わんとすることはよく分かる。だが、一方で外国籍選手が抜けた穴をすぐに埋めることができるのは張本の強みでもあるはずだ。外国籍選手を相手にしてもミスマッチにならない強いフィジカルは最大の武器であり、さらに言えばどのポジションでも対応できるディフェンス力を持ち、チャンスと見れば確率のいい3ポイントシュートを沈めることもできる。名古屋を率いるショーン・デニスヘッドコーチ(HC)にとってもこれほど信頼できる“日本人ビッグマン”はいないのではないだろうか。それだけではない。張本のその存在感は8月のワールドカップアジア予選を戦った日本代表チームの中でもしっかり示されていたように思う。

若手選手の弱点を補うことも自分の仕事の一つ

昨年9月に日本代表の新指揮官に就任したトム・ホーバスHCについて、張本は「選手の役割分担をはっきりさせ、それぞれのストロングポイントを最大限に引き出そうとするコーチ」と語る。その中で自分が意識しているのは「若手選手の弱点をカバーすること」だ。

若手も多く活躍する日本代表チームの中で、張本は自分が果たすべき役割を考えて行動している(代表撮影)

「例えば富永啓生(ネブラスカ大学)はロングスリーも決められる期待のシューターですが、ディフェンス面ではまだ課題が多い。逆に吉井(裕鷹、アルバルク東京)はいいディフェンスをするけどオフェンスには波がある。そういった若手たちに声をかけて、同時に弱点となる部分をサポートするのは自分の仕事の一つだと思っています。今の日本代表には伸び盛りの若い選手がそろっていますから、彼らを気持ちよくプレーさせるためにはどうしたらいいか、どうやってそのチャンスを作るかということはよく考えていますね。3ポイントが入らない時間帯には自分が積極的にペイントアタックして相手のディフェンスを縮めようとか、そういうのは常に意識しています」

もちろん日本代表とBリーグでは異なる点も少なくない。日本代表のビッグマンとしていい仕事をしたとしても、外国籍選手が同時に2人コートに立てるBリーグではおのずと出番は少なくなるだろう。「でも、日本代表の経験を自分のチームに持ち帰ることはできるはずです」と張本は言う。

「今の日本代表が目指している高確率の3ポイントもそうですね。Bリーグで日本のビッグマンが生かされる状況は正直厳しいものになっていますけど、3ポイントという武器が加われば一つ道が開けるかもしれない。(生かされる)チャンスは自分で作るんだという気持ちは大事、その姿勢を忘れちゃダメです。まあ、偉そうに言ってますが、これは半分自分に言い聞かせていることなので(笑)」

成長しながら最後は優勝に手が届くチームになりたい

話を聞きながら、張本が頼れるベテランの顔になっていることに気づく。中国で生まれ、11歳で海を渡り、バスケをコミュニケーションのツールとして成長した少年は今、Bリーグでも日本代表でも心技でチームを牽引(けんいん)する存在となった。本人が語らない努力はいかほどのものだったのだろう。改めて尋ねてみても、本人は「いやぁ、あっという間でしたよ」と笑うばかりだ。

「勝負の年」を迎え、張本は愛するドルフィンズで結果を出していく(写真提供・B.LEAGUE)

「どの年も必死でやってきたから本当にあっという間に30歳になってたって感じです。けど、自分のキャリアの中で今シーズンは勝負の年になると思っていて、これまで以上に結果を求める自分がいます。それは多分、みんなも同じ。このチームで結果を出したいと全員が思っているはずです。うちは9月29日の開幕戦(対シーホース三河)を任されたチームなので、まずはそれに恥じない戦いをしたい。そこから1戦、1戦成長していきたいですね。成長しながら最後は優勝に手が届くチームになりたいと思っています」

いよいよ開幕するBリーグ2022-23シーズン。戦いながら成長していくチームを目指す名古屋の中で、張本はどんなリーダーぶりを見せてくれるのか。「勝負の年」と言い切った30歳が見せる“ベテランの味”が今から楽しみでならない。

プロが語る4years.

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