帝京大学・延原秀飛 仲間のため体を張り続けるNO8、大学最終戦を飾り3連覇を
1月13日、大学日本一を決める第60回全国大学ラグビー選手権の決勝が東京・国立競技場で行われる。関東大学ラグビー対抗戦同士の激突となり、V9時代の強さを取り戻して3連覇を狙う「紅き旋風」帝京大学(対抗戦1位)が、創部100周年の明治大学(対抗戦2位)と相対する。
昨季から不動のNO8として貢献
帝京大の一番の強みは、何と言っても昨季から大きくメンバーが変わっていない強力なFW陣だ。キャプテンHO江良颯、副キャプテンFL奥井章仁(ともに4年、大阪桐蔭)、FL青木恵斗(3年、桐蔭学園)ら、高校時代から世代トップの選手として活躍し続ける選手も多い。
そんな中、相馬朋和監督が「いつもいいプレーをしている」と信頼を置いている選手が、身長182cm、体重94kgのNO8延原秀飛(4年、京都成章)だ。昨季からNO8のポジションで対抗戦全試合、そして大学選手権でも試合に出続け、ディフェンスで常に身体を張ったタックルを繰り返し、トライも挙げ、勝利に貢献し続けている。
大学選手権の前に、帝京大は今季も対抗戦の最終戦で慶應義塾大学に勝って、7戦全勝で3連覇を達成した。NO8延原は「(いずれも同学年で)ずっと一緒にやっていたLO岡大翔(京都成章)、初めての公式戦出場だったLO藤井慎太郎(日本航空石川)と一緒に優勝できたのでうれしかった。メンバーだけでなく、メンバー外になった部員も含め全員で勝ち取ったことに価値がある」と目を細めた。
「140人の部員全員が一つになることが大事」
3連覇がかかった大学選手権決勝に向けては、「優勝に照準を合わせてチーム一丸になってやっていきたい。フィジカルで相手を上回ることも大事ですが、140人の部員全員が一つになってコネクトすれば大きな力になるので、そこが一番大事かなと思います」と言葉に力を込めた。
その言葉通り、準決勝で天理大学に22-12とやや苦戦したものの、今季も帝京大はしっかりと実力を発揮し決勝に駒を進めた。「天理大戦は、前半は受けてしまって甘さが出たが、後半は巻き返しをすることができた。勝ち切ることができたのは自信になった」(延原)
京都成章高時代 多士済々の同期の中で成長
延原は岡山県美咲町出身で、3兄弟の次男。テレビで見て興味を持ち、7歳の頃、岡山の美作ラグビースクールで競技を始めた。中学時代は岡山ジュニアラグビースクールに所属し、全日本ジュニアラグビー大会に出場した。弟は、高校生ながら今季の「花園」こと全国高校ラグビー大会で試合のレフェリーを担当した梨輝翔さん(京都成章2年)だ。
高校は、家の近所に引っ越してきて指導を受けたという杉本一世コーチの勧めもあり、将来を見据えて「関西の強い高校でやりたい」と、親元を離れて京都の強豪・京都成章へと進学した。
京都成章の同期には、帝京大に一緒に進んだPR西野拓真&LO岡、決勝で対戦する明治大の副キャプテンLO山本嶺二郎、早稲田大学のNO8村田陣悟、京都産業大学のキャプテンFL三木皓正、関西学院大学の副将PR/HO西村優希ら、能力の高い選手がそろっていた。延原は「今でも(京都成章の同期が)相手にいると意識しますし、対戦するのは楽しい」と声を弾ませた。
しかし、岡山から京都成章に入った当初は、レベルの高さに苦労することもあったという。「自分の低さが見えましたが、その中でもまれて成長することができました」。高校2年からFLやLOのレギュラーとなり、高校3年時にはNO8として花園ベスト8進出に貢献し、高校日本代表にも選出された。
大学でもハイレベルなチームメートから刺激
大学は「日本一になりたい」という強い気持ちから帝京大へ進学した。ただ帝京大に入ると、再び、周りのレベルの高さ、個々の選手の意識の高さに圧倒されたという。大学1年から試合に出ていたHO江良、FL奥井らには「大きな刺激を受けた」と振り返る。
延原は「あまり強くなかった」というフィジカルのトレーニングに精を出した。入学当時は、例えばベンチプレスは100kgを1回が精いっぱいだったが、現在では150kg近くを挙げることができるようになった。すると大学2年時から少しずつ試合に出ることができるようになり、大学3年からNO8の定位置を確保した。
4年生になると試合に出るだけでなく、規律・風紀委員の一人となったこともあり、他の選手の模範となるように意識して行動している。憧れの選手はいないが、尊敬する人は自分を強豪校へと誘ってくれた杉本コーチだ。リラックス方法はアニメの「ONE PIECE」を見ることで、現在200話くらいまで達したという。
強みは仲間へのサポートやディフェンス
改めて自身の強みを聞くと、延原は「すごくフィジカルが強いというわけでもないですが、しっかりスペースを見つけて走ったり、仲間に対してすぐにサポートに寄ったりとか、ディフェンスで常にコネクトし続けることができるのが自分の強み。今後もしっかり伸ばしていきたい」と話す。春からリーグワンのディビジョン1の強豪チームに進む予定で、「将来はチャンスがあれば日本代表になりたい」と先を見据える。
帝京大としては3連覇がかかった決勝戦だが、延原にとっては最終学年の最後の1戦でもある。延原は「チャンピオンチームになるために4年間、そして、この1年間、積み上げてきたことをしっかり出して勝ちきりたい」と腕をぶした。