15年ぶりの箱根駅伝をめざす亜細亜大学 エースで主将・片川祐大選手がチームを牽引
今週の「M高史の陸上まるかじり」は亜細亜大学陸上競技部のお話です。亜細亜大学は箱根駅伝に過去33度出場をしており、第82回大会では総合優勝を飾りました。ちなみにM高史は、第82回大会で駒澤大学の主務として当時の大八木弘明監督(現・総監督)と運営管理車に乗らせていただきました。
駒澤大学が前年まで4連覇を果たし、5連覇がかかっていた当時。往路、復路とも波乱が起き、優勝候補と目されていた大学が失速する中、往路6位だった亜細亜大学がジワジワと順位を上げて、9区で先頭に立つと、そのまま逃げ切って初優勝を飾ったのでした。
運営管理車に乗っていると基本的には選手の後ろ姿しか見えないのですが、今でもその景色を鮮明に覚えています。当時の優勝メンバーの一人で3区を走られた岡田晃さんは現在、亜細亜大学女子陸上競技部で監督を務め、チームを全日本大学女子駅伝と富士山女子駅伝に導いています。同級生ということもあり、よく取材でお世話になっていますが、今回は男子部の取材に伺いました。
オリンピック男子マラソン代表のお2人がタッグ!
第86回箱根駅伝に出場して以降、チームとしての出場が遠ざかっている亜細亜大学。男子マラソンで2000年のシドニー・オリンピック日本代表の佐藤信之監督、16年のリオデジャネイロ・オリンピック日本代表の佐々木悟コーチがタッグを組み、そこへ射場雄太朗コーチが加わって指導にあたられています。
注目は4年生エースの片川祐大選手(4年、報徳学園)。昨年の関東インカレ2部10000mでは5位。日本選手としては当時駒澤大学4年の唐澤拓海選手(現・小森コーポレーション)に次いで2番目に入るなど、箱根出場校の他の選手たちに競り勝つ走りを見せました。今シーズンも4月の金栗記念で10000m28分11秒20と亜細亜大学日本人最高記録を樹立。さらに、留学生のジョンソン・モゲニ選手(2年、遊学館)も兵庫リレーカーニバルで10000m27分58秒36をマーク。ゴールデンゲームズinのべおかでは5000mで13分27秒21の自己記録を出し、いずれも大学記録を更新しました。
ポイント練習に参加させていただきました
取材で亜細亜大学の日の出キャンパスに到着すると、スタート時間に合わせて各自でウォーミングアップを行っていきます。取材の日は、10000mペース走のあとに400mを8本というメニュー。M高史も練習に参加させていただきました。とはいえ、亜細亜大学の皆さんの10000mペース走は、僕が完走したら10000mの自己ベストを更新してしまうようなペース! 佐藤監督から「つけるところまででいいですよ」と優しく声をかけていただきました。
せっかく練習に参加させていただいているので、気持ちだけは負けないようにと必死についていきましたが、6000mでギブアップ(汗)。僕にとってはレースペースを上回るラップタイムでしたが、選手の皆さんは余裕を持って刻んでいました。ペース走のあとの400mインターバルは、「今度こそつけるところまでつこう」と必死でした。うっかりしていて本数を勘違いしましたが、皆さんより1本少ない7本をなんとかコンプリートしました。
ペース走である程度負荷をかけた状態から、そのままトラックのレースを意識したペースでの400mインターバルということで、5000mや10000mの中盤から後半につながるイメージの練習となりました。
僕にとってはレース以上の負荷がかかり、120%を出し切るハードな内容でしたが、選手の皆さんにとっては日常のポイント練習の一つです。颯爽(さっそう)とメニューをこなしたあとは、学内の芝生などを利用してクールダウンをされていました。
練習後は寮で皆さんとシャワーを浴びて、昼食をご一緒させていただきました。春休みなど学校がない期間は朝、昼、夕の3食。普段は朝、夕の2食。寮で栄養バランスのとれた温かくておいしい食事をとることができます。
「2年計画の2年目」「今年は狙える!」
練習後、監督、選手、マネージャーの皆さんにお話を伺いました。
佐藤信之監督
「昨年は、ジョンソンと片川が学生トップレベルの結果を残してくれました。他のメンバーも自己記録を更新して、成長を感じる1年でした。しかし、箱根駅伝予選会では26位となり、目標としていた第100回箱根駅伝出場には大きく届かない結果となりました。振り返ると4、5月は良い滑り出しでしたが、6、7月で思ったような強化ができず、そのしわ寄せが、8、9月に回り、10月の予選会でも実力を発揮できずに終わってしまった感があります。今年度の目標は、箱根駅伝に出場し、少しでも上の順位を目指すことです。2年計画の2年目になります。昨年の課題となった5月から9月に充実した強化を行い、10月の箱根駅伝予選会で最高のパフォーマンスを発揮したいと思います」
主将・片川祐大選手(4年、報徳学園)
「昨年は全種目で自己ベストを更新できました。前半シーズンで一番狙っていた兵庫リレーカーニバルと関東インカレ10000mで入賞できたのはうれしかったです。達成感もありましたが、そのあと疲れが出て思った以上に苦戦しました。今年は7月のホクレンで10000m27分台を狙っていきたいです。一人ひとりがちゃんと走れれば、最終的にチーム目標が達成できるという考え方を持っています。まずは自分がエースなので、自分のできることをしっかりやって、それにチームメートがついてきてくれたらいいなと思います」
光安航希選手(3年、明星)
「昨シーズン、前半はけがが多く、あまり試合に出られませんでした。身長179cmなのですが、1年生の時は49kgくらい。昨年も夏までは52〜53kgと細くて故障しやすい体でした。補強をして筋肉をつけていったところ、けがもしなくなりましたし、走りに余裕も出てきて、後半の粘りもついてきました。今は55〜56kgとだいぶ体もできてきました。昨年11月の日体大(長距離競技会)で5000m14分11秒で走れたので、今シーズンは5000m13分台、10000m28分台を目指していきたいです。ハーフマラソンでも予選会で箱根につなげられる走りをしたいです。4年生が強いので、今年は狙える年です!」
杉谷蒼天選手(3年、報徳学園)
「1年目はチームでも最下位の方でしたが、2年目はチーム内の順位を上げていけて夏合宿は最後までAで帯同できました。けがやコンディション不良がなく、継続できたので、実力を上げていけました。今シーズンは箱根予選会に出場して個人では64分を切り、チームの箱根出場に貢献したいです。片川先輩は報徳の先輩で、ずっとお世話になってきたので、今年は何としてもという気持ちです。報徳出身の先輩、後輩が活躍しているので(一つ後輩は東京農業大学の前田和摩選手)そこに割って入るくらいの気持ちでいます」
主務・遠藤駿太さん(4年、札幌山の手)
「2年間競技をしていましたが、3年生になるタイミングでマネージャーに転向して、4年生で主務になりました。マネージャーになって外部の方との関わりが増えました。マネージャーは男子5人、女子6人、合計11人いるので、担当をある程度決めて分業しています。選手が競技に集中できるようにできることをやっていきたいですね。選手が大きな大会に出場したり、好記録を出してくれたりする時に達成感を感じます。将来は教員(社会科)を目指しているので、マネージャー経験を生かして陸上部の顧問とかをやれたらと思っています」
間近に迫った関東インカレ、さらには全日本大学駅伝の関東地区選考会、そして箱根駅伝予選会に向けて、現状打破し続ける亜細亜大学の皆さんに注目です!