大学のOB・OGも活躍 東日本実業団選手権、M高史がライブ配信実況席からリポート
今回の「M高史の陸上まるかじり」は東日本実業団陸上競技選手権大会のお話です。5月18日、19日の2日間、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開催されました。M高史は大会YouTubeライブ配信の実況を務めさせていただきました。実況席から東日本実業団をリポートします!
親戚気分で応援させていただきました
第66回目を迎えた東日本実業団選手権。2021年からはライブ配信も行っています。実業団の監督、コーチ、東日本実業団連盟の皆さまが交代して解説されていて、M高史は2022年から実況を務めさせていただき、今年で3年目となりました。
2日間の熱戦が繰り広げられ、多くの選手が活躍、躍動した今大会。今回の記事では大学OB・OGの選手を中心に、2日間の中でM高史が特に印象に残ったシーンをつづらせていただきます。学生時代に取材させていただいた選手や部活訪問で一緒に走ったことのある選手も多く出場されていました。学生時代と違ったユニホームで走り続けている姿を見るとうれしく思いますし、親戚気分で実況席から応援させていただきました(笑)。
注目度が特に高かった男子1500m
大会1日目は男子5000m競歩で、濱西諒選手(サンベルクス)が日本新記録となる18分16秒97をマーク。華々しい幕開けとなりました。
ライブ配信のご視聴人数が特に多かったのは男子1500mでした。5組によるタイムレースでハイレベルなレースが展開されていきました。
4組目には、ランニング×コメディ×YouTuberでもおなじみのたむじょーさんこと田村丈哉選手(CROSSBRACE)が出場。帝京大学時代に全日本大学駅伝や箱根駅伝に出場したたむじょーさん。積極的な走りを見せて3分52秒34で組5着に。東海大学OB中島怜利選手(TRIGGER AC)や「自称・日本最速通勤ランナー」の松井俊介選手(絆ランニング倶楽部)も出場され、ライブ配信中もコメントが増えて盛り上がっていました。
中島選手は東海大学時代に箱根駅伝総合優勝に貢献。松井選手は通勤ランがメイン練習とのことで、約4kgの荷物を背負いながらも5km15分台のハイペースで走り、ハーフマラソンも1時間03分台まで記録を伸ばしてきています。さまざまな形で競技を続けていて、陸上競技の楽しさや魅力を発信していますね。
5組ではコモディイイダのアレックス・キプチルチル選手がレースを序盤から引っ張り、ラスト勝負も制して3分40秒18で優勝。2位は才記壮人選手(富士山の銘水)で3分40秒87、3位は飯島陸斗選手(阿見AC)で3分41秒34 と好記録が続きました。
10000mは男女ともに、暑さに負けない力走
女子10000mではルートインホテルズのカムル・パウリン・カベケ選手が31分36秒62をマークし、2位以下の選手を全員周回遅れにする圧巻の走りで優勝を飾りました。
2位争いはラスト1周で67秒(手元の計測)の強烈なスパートを見せた原田紋里選手(第一生命グループ)が32分54秒88で制し、3位には大西夏帆選手(ルートインホテルズ)が33分00秒03で続きました。大阪芸術大学を卒業し、ユニバーサルに入社した北川星瑠選手は途中で集団を引っ張る積極性をみせ33分02秒94で4位に。学生時代に「自称日本で唯一ミュージカルを学ぶ長距離選手」として注目された北川選手。社会人になってからの活躍も楽しみですね。
男子10000mでは外国人選手に果敢に挑んだ中山雄太選手(JR東日本)が28分28秒48で7位に入り、日本人トップとなりました。5000mを14分04秒で通過するなど、蒸し暑さの中、今後も楽しみな走りを披露されました。日本薬科大学時代は箱根駅伝の関東学生連合や全日本大学駅伝の日本学連選抜の一員として3大駅伝を経験した中山選手。JR東日本の大島唯司監督も中山選手の走りを高く評価されていました。
日本人2位争いはラスト1周59秒台のスパート合戦! 村山紘太選手(GMOインターネットグループ)、飯田貴之選手(富士通)、片西景選手(JR東日本)が一つでも上の順位をめざし、0.1秒でも前へという気迫を見せていました。
初のタイムレース2組となったシニア男子1500m
大会2日目は、年々注目度が高まっているシニア男子1500mが行われました。こちらには毎年、M高史も出場しておりまして、今年もエントリー。個人的に今シーズンは、マラソンでも1000mでも1500mでも自己ベストを更新できそうな状態でした。ただ、調子が良すぎて反動がきてしまったのか、4月に故障してしまいまして……。5月に入ってから急ピッチで仕上げたものの、レース直前に少し再発してしまい、選手としては無念の欠場に。今年は実況のみに専念させていただくことになりました。
シニア男子1500mはここ3年ほどで出場選手も増え、この種目が新設されてから初のタイムレース2組での開催に。持ちタイムの速い選手が集まった1組では、中里綾介選手(八王子市役所)が先頭を引っ張り66秒、68秒とややスローな入りでレースが進みました。1000mを過ぎてからは64秒までペースアップ。さらに激しいラスト勝負へ。ラスト100mで昨年も優勝を飾った金塚洋輔選手(K-project)が抜け出し、4分06秒18で2連覇を達成。2位には新井一匡選手(埼玉西部消防)で4分07秒19。6位の中里綾介選手が4分07秒81と、先頭から2秒以内に6選手がなだれこむ大接戦となりました。
優勝した金塚選手は大東文化大学時代に関東インカレ2部10000m優勝を飾るなど活躍され、実業団のHondaでも競技を続け、現在はクラブチームK-project代表兼監督でもあります。2位に入った新井選手は国士舘大学時代に箱根駅伝に出場。現在は消防士をしながら走り続けています。
ちなみに2位に入った新井選手とは大会の1カ月半前、一緒に1000mタイムトライアルをさせていただきました。その時は2秒差で僕が負けたのですが、新井選手が今回2位に入ったのを実況席から見ていて「自分もあの舞台で勝負したかったなぁ」という気持ちがより強まりました! もちろん勝負事に「もしも」はありませんし、そもそもスタート地点にすら立てていませんので、完全に負け惜しみのように聞こえてしまいますが(笑)。来年こそは2年分の思いを込めて現状打破します!
シニア種目にはもともと、実業団の指導者の方も出場されていました。今回はNDソフトの渡邉清紘監督が選手として出場し、4分11秒40で7位。実業団で指導をされている方が選手として出場すると、その後の指導にも生きるかもしれないですね。
今回は欠場となりましたが、800mで日本選手権優勝経験もある笹野浩志さん(富士通)もエントリー。さらには第一線で活躍し続けている梶原有高選手(コモディイイダ)もエントリーはされていましたので(今大会では5000mに専念)もしかしたら来年以降の参戦があるかもしれません。
そして、シニア女子1500mでは黒田なつみ選手(GRlab関東)が3連覇を達成。練習会を主催するほか、低酸素トレーニングも新たに採り入れて進化し続けています。
シニア種目の出場資格は男子が35歳以上、女子は30歳以上となっています。マスターズ陸上のように5歳刻みで部門が分かれるわけではないので、現在出場している選手の皆さんも毎年のように新たな挑戦者との勝負になってくるわけで、ウカウカしていられません。世代を超えた「大人の青春」を感じられるのも、シニア種目の魅力ですね!
実業団の監督やコーチの皆さんによる解説も魅力
男子5000mには大学時代に駅伝で活躍した選手が多数登場しました。4組では坂東悠汰選手(富士通)が13分45秒64で日本人トップの5位。駒澤大学を卒業してKaoに入社した安原太陽選手も中盤に積極的な走りを見せて、ラスト150mからのスパートで日本人2位に浮上し、13分46秒90で6位となりました。
実業団の監督やコーチの皆さんが交代で解説されるのも、東日本実業団ライブ配信の魅力の一つだと思います。中でもコニカミノルタの宇賀地強監督とご一緒させていただいた男子5000m3組は、感慨深いものがありました。というのも宇賀地監督はM高史にとって駒澤大学の後輩で、僕が4年生の時の1年生。当時、僕が主務で、宇賀地監督はルーキーながらチームを引っ張り、1年目から3大駅伝のエース区間をまっとうされていました。それから18年の時を経て、実況席でご一緒させていただけるとは、当時は想像もつきませんでした!
解説で宇賀地監督が発する言葉の端々からも選手への思いや、陸上競技が好きという情熱が伝わってきました。情熱といえば、大八木弘明監督(現・総監督)。恩師の情熱をきっと細胞レベルで受け継いでいるのでしょう。今年から監督に就任され、宇賀地さんの指導者としてのご活躍も心から応援したいです。