陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

一般もシニアも、全選手の思いが詰まった東日本実業団選手権、M高史も走りました!

カンセキスタジアムとちぎにて、東日本実業団陸上競技選手権大会が開催されました

今回の「M高史の陸上まるかじり」は第65回東日本実業団陸上競技選手権大会のお話です。宇都宮市のカンセキスタジアムとちぎ(栃木県総合運動公園陸上競技場)で5月20、21日の2日間、開催されました。

実業団選手、実業団登録をしているクラブチーム、市民ランナー、市民スプリンターをはじめ多くの社会人選手が挑戦。コロナ禍では無観客ということで関係者しか入場できなかったのですが、今年は大きな声での熱い応援も飛び交いました。やはり、応援の声は選手にとって元気をもらえますし、力になりますよね!

そして、大会ではYouTubeでライブ配信も。私、M高史はライブ配信のMC、進行役を務めさせていただきました。 さらにはMCの合間に大会2日目のシニア男子1500mにも出場。ライブ配信と選手として挑んだ東日本実業団選手権をまるかじりレポートします!

引退に花を添えた市立船橋高校の先輩・後輩対決!

初日に話題となったのは男子1500mの最終4組。3分42秒43で優勝した才記壮人選手(富士山の銘水)と2位に入った舟津彰馬選手(小森コーポレーション)の差は、わずか0秒03の大接戦でした。3分45秒前後の選手がなだれこみ好記録が続出した一方、このレースは実はKaoの前田恋弥選手の引退レースでもありました。

前田選手といえば千葉・市立船橋高校時代に800mで1分48秒08の高校記録(当時)を樹立。インターハイでは800m、1500mの二冠を達成。全国高校駅伝の2区(3km)では史上2人目(当時)となる7分台(7分59秒)で区間賞を獲得するなど、大活躍されました。

明治大学に進み、カネボウそしてKaoで競技を続けてきました。この日は3分45秒95をマークし10位でフィニッシュした前田選手。これで引退というのは惜しいくらいの激走を見せられました。

今大会で現役引退を発表された前田恋弥選手(左)。並走するのは市立船橋高校の後輩・たむじょー選手(提供・たむじょーさん)

前田選手の高校時代の1学年後輩で、現在はランニングコメディYouTuberで大人気のたむじょーさん(選手登録は田村丈哉選手、所属はCROSSBRACE)もこの組に登場!市立船橋高校の先輩・後輩対決となりました。たむじょー選手は3分53秒16とシーズンベストをマーク。市船の先輩・後輩対決は、先輩の前田選手に軍配が上がり、たむじょー選手も尊敬する先輩の引退レースを同じ組で走ることができたことがうれしかったそうで、感慨深い様子でした。

ランニング×コメディ×YouTuber 帝京大卒箱根ランナー・たむじょーさんの挑戦!
先輩・前田恋弥選手(右)とたむじょーさん(左)。高校の恩師・中村先生が見守る中、レースに挑まれました(提供・たむじょーさん)

レベルが上がり続けるシニア種目

東日本実業団選手権では、一般種目の他にシニア種目があります。種目は100m、1500m、砲丸投の3種目。男子は35歳以上、女子は30歳以上でシニア種目に出場することができます。

実業団選手権ではありますが、シニア種目に関しては実業団登録の有無に関わらず出場することができます。2年前に書かせていただいた僕の記事を見てエントリーしましたと言ってくださる方もいたり、ここ数年、特にシニア男子1500mの出場者数が増えています。2年連続で10位となり、目標の8位になかなか入れないM高史ですが(笑)、今年はさらに出場者のレベルが上がり厳しい戦いが予想されました。

M高史、東日本実業団選手権に出場 13年ぶりに1500mに挑戦!

年に1回、このレースで顔を合わせる方もいて、招集所はなんだか同窓会のような雰囲気です。エントリー24人のうち4人が欠場で、20人の選手が出場。場内アナウンスで選手紹介が行われ、スタジアムに号砲が鳴り、一斉に駆けだしていきます。

先頭集団は400mを65秒ほどで通過し、早くも縦長の展開に。僕は72秒前後のペースを刻んでいましたが、後方で必死についていきます。400mを72秒というと1000m3分のペース。よく駅伝やマラソン中継で1km3分というのが目安になってくると思いますが、選手の皆さんは軽々と刻んでいくペースなのに、いざ自分が走るとこんなに必死なんて、あらためて選手の皆さんを尊敬します!

シニア男子1500mのラスト1周。写真先頭から金塚洋輔選手、中里綾介選手、渡邉清紘選手、小西亘選手と続きました(提供・K-project)

レースは以前、4years.でも取材させていただいた金塚洋輔選手(K-project)が4分07秒51で優勝。金塚選手は大東文化大学OB、実業団Hondaで競技を続け、現在はK-project監督をしながらご自身でも走られています。金塚選手は1984年生まれでM高史と同い年。今年で39歳になりますが、まだまだ走りも健在ですね!

大東大で関東インカレ優勝の金塚洋輔さん 山形県上山市から陸上界へ恩返し!

4分08秒13で2位に入った渡邉清紘選手は1987年生まれ。山梨学院大学OBです。渡邉“選手“とご紹介しましたが、NDソフトで監督をされているので普段は渡邉監督。この日は選手としてシニア1500mに出場しましたが、レースが終わればまた監督に戻られました!

4位に入った小西亘選手(NINE TOCHIGITC)は1967年生まれ(今年で56歳)。実は前日に一般1500mにも出場して4分11秒79で走り、「M55」という55歳から59歳カテゴリーのマスターズ世界記録を更新!(従来は4分12秒35)。2日連続のレースとなったシニア男子1500mでは4分12秒45と前日の記録には及ばなかったものの、先頭争いに加わり熱戦を繰り広げられました。800mからマラソンまで、さまざまな記録でマスターズ記録を塗り替えてきたという小西選手の挑戦は続きます。

さて、M高史はといいますと……スタートから上位争いに加わることができず、最初から最後までほぼ72秒ペースを刻み、4分32秒03で17位という結果でした。一昨年は4分33秒23で10位、昨年は4分26秒81で10位でしたが、今年は17位ということで、4分10秒から20秒あたりの選手が増えた印象があります。走りながらもシニア種目の盛り上がりが伝わってきました。現状のベストは尽くせたと思いますが、やはり走り終わってからは悔しさが湧いてきましたので、また来年に向けて現状打破していきたいです!

M高史もシニア男子1500mに出場し、4分32秒03で17位となりました(提供・竹内大輝さん)

出場選手の人数も増え続けています!

シニア女子1500mは 黒田なつみ選手(GRlab関東)が4分50秒47で2年連続の大会新記録で優勝しました。

1991年生まれの黒田選手。高校時代1500mのベストは4分43秒でしたが、社会人になってからも大好きなランニングをコツコツ続けていったところ、昨年13年ぶりの自己ベストとなる4分38秒82をマーク。3000mでも9分46秒14まで記録を伸ばし、ホクレン・ディスタンスチャレンジの出場資格(9分45秒00)を目指しています。

シニア女子1500m2位(5分15秒99)に入った今泉愛子選手(阿見AC。旧姓:石原さん)は1965年生まれ。明石市立魚住中学時代から全国区で活躍をされ、中学2年生ながら日本選手権800mで3位という快挙。3年生では全日本中学陸上で優勝も飾られました。中学のベストは2分11秒5! その後、明石南高校では国体1500m4位、東京学芸大学でも競技を続けて関東インカレ5000m4位や都道府県駅伝8区区間賞などの活躍をされました。その後は陸上から離れましたが、約30年のブランクを経て、2018年から再び走り始めて800mでマスターズ日本記録(W55、55歳から59歳のカテゴリー)を更新する2分32秒をマーク。今年58歳になる年ですが、今なお挑戦し続けています。

シニア女子1500m。写真左から優勝・黒田なつみ選手、2位・今泉愛子選手、3位・徳永昌子選手(提供・阿見AC)

ブランクを経て復帰された方から、中には陸上未経験で社会人になってから走り始めた方など、さまざまな経歴を持つ選手が集うシニア種目。特にシニア男子1500mはレベルも上がり、出場人数も増えてきているので、近い将来、1組ではおさまりきらず2組、3組と増えていくかもしれないですね(笑)。

今回はNDソフトの渡邉監督が出場されたように、過去にも実業団の監督さんやコーチの方が出場されていました。僕が東日本実業団のシニア種目に興味を持ったのも、駒澤大学で今年監督に就任された藤田敦史監督が現役を引退後、富士通所属でシニア1500mに出場し、優勝(2013年)されていたのを拝見してからです。その時に「自分も35歳以上になったら出場してみたい」と思っていた憧れの大会でもありました!

年齢を重ねて、体力や走力が落ちるのではなく、むしろ年々、記録が向上している方もいらっしゃる方がいて、ライブ配信で解説をされていた各チームの監督さんたちも驚かれていました。「来年、出ようかな?」というお声も聞こえてきました(笑)。

シニア男子1500mで優勝した金塚洋輔選手率いるK-projectの皆さんも多数出場(提供・K-project)

大学を経て実業団に進んだ選手も活躍

自分もライブ配信の合間に1500mを走りましたが、終わり次第、すぐにスタジアム4階にある実況席に戻りました!

ストップウォッチも新調し、選手の皆さんの通過タイムをなるべく細かく配信できるように心がけていました。

特に集団が分かれたときや外国人選手がポーンと飛び出した時など、臨機応変にラップタイムを測るようにしていました。学生時代にマネージャーとしてタイムを測っていた経験が今になって生きるのはうれしいですし、本当にありがたい経験をさせていただいたんだなと感謝の気持ちでいっぱいです。

男子5000m4組では、村山紘太選手(GMOインターネットグループ)が素晴らしいスパートで3位(日本人トップ)。女子5000m2組では鈴木優花選手(第一生命グループ)が集団を積極的に引っ張り、76秒ペースをきっちり刻んでいきます。ラストはさらにペースを上げて15分46秒87で全体5位、日本人トップとなりました。

村山選手は城西大学OB、鈴木選手は大東文化大学OG。大学での4years.を経て、実業団でも活躍を続けている選手を見るとうれしくなります! また、大学から実業団に進んだばかりのルーキーも実業団選手権デビューを飾りました。

創価大学からGMOインターネットグループに進んだ嶋津雄大選手が3組に登場。駅伝でもたびたび披露してきたロングスパートがさえ、13分55秒63で3組トップを取りました。

4組では日本大学からKaoに進んだ松岡竜矢選手が13分47秒41で組5着(日本人2位)、順天堂大学から富士通に進んだ伊豫田達弥選手が13分49秒36で組6着(日本人3位)となりました。

パラ・デフリンピックをめざす選手たちも現状打破!

視覚障がいの部も男女の1500mと5000mが行われ、来年のパリパラリンピックに向けて楽しみな選手たちが出場。視覚障がい男子5000mでは東京パラ銅メダリスト(T12 男子マラソン)の堀越信司選手(NTT西日本)が15分07秒42で大会新記録をマークし優勝を飾りました。

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視覚障がいの部では、日本ブラインドマラソン協会強化委員長の安田享平さんがレースを解説してくださいました

また、オープン参加で聴覚障がいのある選手も出場。2025年に東京で開催されるデフリンピックに向けて盛り上がってきています。以前、4years.で取材させていただいた昨年の夏季デフリンピック女子1500m銅メダリスト・岡田海緒選手(MURC)が800mに出場され2分20秒67で走られていました。

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今回の記事でご紹介できないほど多くの選手が躍動し、それぞれの目標に向かって現状打破した2日間となりました。各チームの選手、関係者の皆様、現地やライブ配信で応援してくださった皆様、ありがとうございました!

M高史の陸上まるかじり

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