ボブスレー

連載:4years.のつづき

北野建設・松岡晃輝(下)走り幅跳びと両立するボブスレーは「改めて繊細なスポーツ」

大学卒業後は陸上競技とボブスレーの二刀流の選手として挑む(提供・北野建設陸上部)

陸上競技とボブスレーの「二刀流」に挑んでいる北野建設の松岡晃輝。連載「4years.のつづき」前編では、幼少期から大東文化大学までの陸上人生をたどった。大学を卒業した現在は「ボブスレーを多くの人に知ってもらいたい」と熱く話す。後編では2競技の両立方法やボブスレーの魅力について語った。

【前編はこちら】北野建設・松岡晃輝(上)走り幅跳びを「ロジカルに追求」した大東文化大学での4年間

2023年秋に新設された陸上部に所属

ボブスレーは専用のソリに4人、または2人の選手が乗り、氷上のコースを最高時速約130キロで滑走してタイムを競う。松岡は関係者にセンスを買われ、大学4年の夏ごろから始めた。競技を経験する中で「どうやったらボブスレーの認知度を高められるか」を考え、SNSで発信した。特にInstagramで投稿した、ボブスレートレーニング内容のリール動画は449万回再生され「かなりの反響があった」と驚きを隠せなかった。

スキー・ノルディック複合の渡部暁斗が所属していることでも知られる北野建設に入社した決め手は、大東文化大の恩師でソチ冬季オリンピック・ボブスレー日本代表に選出された経験もある佐藤真太郎先生が、中心に動いてくれたことが大きかった。大学時代ともに戦った假屋も北野建設へ。2023年秋、陸上部が新設され、假屋とともに所属選手となった。

大学の同期である假屋とボブスレーでも一緒に歩んでいく(提供・北野建設陸上部)

活動拠点は長野市。午前中はスポーツジムでインストラクターとして働き、午後に練習している。仕事での心がけは「会員様のニーズに応えられるように工夫しながら、メニューを考えること」と話す。やりがいは、レッスンが終わった後に「ありがとう」といった感謝の言葉をもらうこと。第一線で競技を続けていることは知られており、「結果を見たよ」「すごいね」といった声をエネルギーにしている。生活環境については「他の社員の方と同じように、会社の社宅に假屋選手と住んでいて、素晴らしい設備で暮らせています。栄養学を学んで、自分自身を実験台にしながら自炊を楽しんでいる」と話した。

遠征や大会中は「四六時中ボブスレーを考える」

夏場は陸上競技、冬場はボブスレーを中心に取り組んでいる。陸上では昨年6月の日本選手権男子走り幅跳びで7m61(追い風0.1m)をマークし、7位入賞を果たした。「初出場で入賞できたのはかなり大きな経験となったが、正直自己ベストを更新したかった」とうれしさの中に悔しさも残った。7月の長野県選手権では7m80(追い風0.9m)を跳んで準優勝。自己ベストにあと2cmと迫ったが「内容を振り返ると動きにバラつきがある。自己ベストをマークした動きを何回でもできるよう、いかなる環境でも再現性を追求していきたい」と満足していない。

初の日本選手権で入賞を果たした(提供・北野建設陸上部)

ボブスレーでは国際派遣標準Aを突破し、代表候補選手として海外遠征に参加。コンバインテストと全日本プッシュボブスレー選手権の結果を加味して、強化指定選手にも選出された。松岡は「やるからにはトップを取ることを目標にしていた。選ばれる自信はあった」と振り返る。

今年1月にはヨーロッパ選手権第7戦(スイス・サンモリッツ)と第8戦(オーストラリア・インスブルック)に出場した。松岡は「パイロット」と呼ばれる前方ポジションを務め、「最初のスタートタイムであるプッシュタイムは1桁に入れる順位を取れている。思ったよりも戦えると感じたし、場の雰囲気を感じたことが一番大きな経験となった」と収穫を挙げた。

海外遠征に参加しメキメキと力をつけている(提供・北野建設陸上部)

一方で課題は「練習でできていたことが、本番でできなくなっている」。遠征や大会を通して「四六時中、ボブスレーのことばかり考えるようになった。暇さえあれば、頭の中でコースをイメージして目をつぶり、ハンドルを握ってひたすら操縦のイメージトレーニングをしていた」と語った。1日で滑走できる回数が決められているため、「その中でいかに完璧な滑りをできるかが重要になってくる。約1分の滑走の内容をいかに完璧に近づけるか、改めて繊細なスポーツだと感じました」と集中することの大切さを知った。

パイロットとしてイメージトレーニングを欠かさない(提供・北野建設陸上部)

アントニオ猪木さんの名言を胸に

尊敬する選手にはドイツのフリードリヒを挙げる。松岡と同じパイロットのポジションで、世界選手権やオリンピックで数々の優勝を誇る。「滑走やプッシュの時の動きを見ると、レベルの高さを感じる。世界各地の環境に慣れていて、当たり前のように最高のパフォーマンスをしていて、すごい選手だなと感じました」と松岡。好きな言葉でもあるアントニオ猪木さんの名言「迷わずいけよ、いけばわかるさ」を胸に、「これをやっても自分の記録につながらないでしょってことも、とりあえずやってみて、フィードバックして、次これやってみようと。とりあえず好き嫌いせずにやってみることを心がけています」と競技への思いを語った。

ボブスレーの仲間たちと世界の舞台に挑んでいく(提供・日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟)

今後の目標は、走り幅跳びが8m超え。「跳躍種目の分、体重を増やしすぎると関節に負荷がかかってしまい、動きが鈍くなるので、徐々に体重を増やしながら、トレーニングも工夫して、けがをしないことを最優先にコツコツやっている」とケアも欠かさず行っている。「感覚をつかめばもっと飛躍できる。引き続き負けん気の精神で頑張ります」

ボブスレーでは2026年の冬季オリンピック出場とメダル獲得を目指す。まずは「全日本プッシュ選手権でも優勝とトラックレコード更新。遠征メンバーに選出されて、シーズン中に準備してきたことを存分に発揮したい」と今後も練習を積み重ねる。

ボブスレーの魅力を尋ねると、「一番はスピードですが、滑っているだけではなくて、速い中で瞬時に左右のレバーを操縦していて繊細な競技であることも魅力です。是非、ボブスレーについて少しでも興味を持って欲しい」と熱弁した。魅力は自身のSNSでも発信していくことを誓う。

学生に向け出張練習も行っている(提供・北野建設陸上部)

陸上競技とボブスレーの「二刀流」として。そしてボブスレーの発展と世界に挑戦するため、これからも鍛錬を続ける。

4years.のつづき

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