箱根駅伝2年ぶり出場の専修大学 予選会昨年18位から2位に躍進した背景は〝改革〟
今週の「M高史の陸上まるかじり」は専修大学陸上競技部のお話です。10月の箱根駅伝予選会で2位となり、2年ぶり72回目の本戦出場を決めました。暑さもあって波乱の展開となった今年の箱根予選会で、昨年の18位から大きくジャンプアップ。創部100周年という記念すべき年に復活を決めた専修大学の皆さんにお話を伺いました。
春から箱根駅伝予選会を見据えた練習内容に
まずはチームを指揮する長谷川淳監督に予選会を振り返っていただきました。「大会前、10000mランキングは15位で、持ちタイムはなかったですが『悪条件になれば専修は来るんじゃないか』というところを発揮できたと思います。チームのカラーとしては新しいかもしれないですね。練習に関しては過去に予選を通過していた時よりもかなり良かったです。『これで通らなかったらどうやって通るのか』というくらい良かったです。調整もうまくいきました」
振り返れば4年前(第97回大会)、7年ぶりの箱根予選会通過を果たした時は、冷たい雨が降りしきるコンディションでした。今年の予選会は暑く、多くのチームが苦しむ展開に。そんな中でも、きっちりと実力を発揮しました。
長谷川監督は「昨年18位だったので、変えなければ」と練習に関することから、スタッフの役割まで、見直しを図ったそうです。
練習面では、春先から箱根予選会を見据えた内容に変えました。例年は関東インカレや全日本大学駅伝関東地区選考会に向け、スピード練習を続ける時期ですが、今年は春から距離走をじっくり行いました。「下級生も含めてスタミナづくりは時間がかかりますし、暑くなる前に長い距離に対応することもできます」と長谷川監督。
スタミナ強化に取り組んだことが、5000mや10000mなどのトラックでの好記録にもつながりました。「長い距離をやっているとトラックも走れるようになるんですよね。私自身も選手時代に経験がありました。ただ、今の選手たちにはスピードの方が良いのかなと思っていたこともありました。やはり、長距離を走るわけなので土台作りって大事だなと思いましたね」
夏合宿に入る前の7月は、専修大学が練習拠点にしている多摩川の河川敷で、暑い中での練習を積みました。コース上にはほとんど日陰がありません。朝早くに走る、氷をたくさん用意するなど暑さ対策を徹底して、乗り越えていきました。
「7月は暑い中でも選手たちは本当に頑張ってくれました。8月に入って1次合宿は車山、2次合宿は黒姫で、例年と同じ場所で行いましたが、量、質ともに手応えを感じる合宿となりました。9月に入ってからも状態が良かったです。選手たちも『変わらなきゃ』と思って、ハードなトレーニングにもついてきてくれました」
スタッフの役割を明確に、手厚いサポート体制
スタッフの役割もより明確にしたそうです。
「私と五ヶ谷(宏司)コーチが現場。柴内(康寛)コーチがスカウト。岡田(拓也)コーチが留学生担当と明確にしました。また、五ヶ谷コーチは外部コーチからヘッドコーチとなり、選手たちのモチベーターの役割も果たしてくれています」
そして、チームを支えるマネージャーさんは13人。手厚いサポート体制がとられています。「練習の準備はこちらが指示しなくても、行ったらできあがっています。組織力、マネージャー力は高いですね。SNS、ブログ、ホームページも充実していますし、マネージャーには『速報性が大事だから』と伝えているのでホームページの更新も早いですね」
これまでに様々な改革を行ってきた専修大学。余談ですが、長谷川監督もご自身を変えようと、走っているそうです。朝練の集団走についていくこともあるとか。夏合宿ではキツい坂で長谷川監督がスパートをかけ、選手たちもかなり盛り上がったとか(笑)。言葉や指導だけでなく、監督自らが汗をかいて必死に走る姿を見せることで、選手に伝わったものもあったかもしれません。
長谷川監督に箱根本戦の目標を伺いました。
「箱根本戦は流れもありますし、簡単ではありません。他大学も強いですし、うちは個の力はまだまだですので、本人の力が引き出される区間、適材適所を心がけたいです。選手たちがわかりやすい目標を細かく設定していきたいです。実は予選会もかなり細かく目標を設定していました。その中で幅を持たせていて、バリエーションもあったので、選手たちも焦らずに走りきれたのだと思います」
「革新と挑戦」のスローガンを胸に
選手、マネージャーさんにもお話を伺いました。
主将 千代島宗汰選手(4年、鳥栖工業)
「(主将として)陸上に向き合う姿勢、人よりも長く練習することを意識しています。下級生の意見も大事にしたいので、自分から積極的に声をかけています。昨年は予選会18位で、『箱根に出られることは当たり前じゃない』という危機感を持ちました。『革新と挑戦』をスローガンに掲げ、創部100周年を機に新しい組織づくりを目指していかないと、戦えないと思いました。(箱根に向けて)チームの最大の目標はシード権獲得です。3回連続(第97回~99回大会)で20位とふがいない結果だったので、まずはそこから脱却したいです。2年前は1区でしたが、今年はアンカーの10区を走りたいです」
新井友裕選手(3年、浦和実業)
「箱根予選会はタイムを稼ぐ役割でした。(個人)30~40番程度と思っていましたが、思った以上に当日うまく走れて納得のいく結果になりました(個人21位、チーム内2位)。昨年はケガが多かったので、今年はトレーナーの方とも相談しながら練習を継続してきました。監督、コーチからも事前に暑さ対策の指示があったので、他校の選手よりも暑さに自信を持って臨めました。(箱根に向けて)2年前は4区19位と思うような結果が残せなかったので、悔しさを晴らせるような走りをしたいです。自分の走りがしっかりできれば、シード権を狙えると思うので、まずは自分がしっかりと走っていきたいです。後半の粘りが強みなので、箱根駅伝でも順位を上げていきたいです」
駅伝主将 藁科健斗選手(3年、横浜)
「新チームになってから副キャプテンをしていたのですが、夏にキャプテンが故障していたこともあって、駅伝主将になりました。やることは特に変わっていないですが、周りに声をかけたり周りを見たりするようにしています。予選会ではチームとして作戦を立てていた通り、2位になれましたが、自分の走りはチーム9番手で、もっと上に行かなければいけなかったです。昨年と比べて1日の走行距離が増えましたし、自然と週間、月間の距離も伸びていきました。距離が伸びたことでハーフに対する適性もついてきています。箱根本戦に向けて、チームとしてはシード権が目標ですし、チームに貢献できる走りをしたいです」
藁科選手の兄・寿和さんは駒澤大学でマネージャーをしています。寮の食事がない時などは一緒にご飯を食べにいくこともあるそうです。
主務 中田紗也加マネージャー(4年、四天王寺)
「姉の影響で小さい頃から箱根駅伝を見ていました。大学からマネージャーをしています。私は陸上経験がないので最初はわからないことばかりでしたが、色々経験させてもらいました。マネージャーミーティングを行うなど、コミュニケーションと情報共有を意識しています。(マネージャーのやりがいについて)選手から『ありがとうございました』と言われることもうれしいですし、選手が自己ベストを出した時はもちろん、良い走りをした時や、一つの練習をこなせた時の表情を見るのがうれしいです。(箱根では)4年間のことを出せるようにサポートしていきたいですし、チームとしては予選会2位で通過したからには、シード権獲得が目標です。卒業生の方からも応援していただいているので、結果でお返しできたらと思っています」
インタビューの後、練習にも参加させていただきました。専修大学の皆さんにとってホームグラウンドとも言える多摩川の土手。暑い日も風が吹く日も、ここで力をつけてきました。冬場は暗くなるのが早いので、授業が終わる時間帯によっては足元に気をつけながらの練習となります。
多摩川を挟んで神奈川県側は國學院大學、東京都側は駒澤大学といった強豪校も走る中、専修大学の選手の皆さんもコツコツと力をつけてきました。チームスローガンである「革新と挑戦」を掲げ、2年ぶり72回目の箱根路に挑みます!