アメフト

連載:OL魂

父から継ぐOL魂 中央大・加藤駿佑

中大も父の広島大も、愛称は「ラクーンズ」

基本的にボールにはさわれない。そもそも、自分に向かって投げられたパスは反則になる。アメフトのOL(オフェンスライン)は、日の当たらないポジションである。1試合約60プレー、ただひたすらに体当たりを続けるのみ。だからこそ、自分を犠牲にして仲間のためにプレーする彼らに光を当てたい。

そんな思いを込めたシリーズ「OL魂」。5回目は中央大の#57加藤駿佑(しゅんすけ、4年、岡山朝日)だ。岡山の名門校出身の彼は、知らず知らずのうちに父から受け継いだOLとしての心で、日々闘っている。

第2の青春はOLに捧ぐ 早大・金子竜也

走ってはぶつかり、走ってはぶつかり

9月30日の日体大戦。加藤は今シーズン2試合目にして始めてOLのスターターとして出場した。4年生ではあるが、5人で組むOLのレギュラーではない。いわゆる「1.5本目」の立場だ。今回はレギュラーメンバーに負傷者がいたため、最初のオフェンスからフィールドに立った。しかし、早々にやらかした。「スクリーン」と呼ばれるパスプレーで相手をブロックにいった際、「腰から下へのブロック」の反則を犯したのだ。「僕がキーとなるブロッカーだったので、緊張がピークになってしまって。でも、あれで緊張もほぐれました」と笑った。

5人が横一列に並ぶOLの中で、この日の加藤のポジションは右のG(ガード)。OLの中でも比較的右へ左へと走っていって相手にぶつかるケースの多いのがGだ。加藤は身長180cm、体重105kgの体でバランスよく動き、的確に敵をブロックしてRBやQBの走路を切り開いていた。OLは相手の体に両手を当てるシーンが多いためフットボールグローブを着ける選手が多いが、加藤は素手でプレーしていた。

第2Qには、相手を押しのけた直後に倒れ込んだ加藤の上を、RB(ランニングバック)山田款太(かんた、2年、大阪府立池田)が飛び越えてTD。試合後にそのシーンを指摘すると、加藤は「結構不安なままブロックしたんですけど、『ああ、これでよかったんだ』と思えました」と言って、ほほえんだ。自分の背中についてきた味方がタッチダウンする。OLにとって一番うれしい瞬間だ。中央大は日体大の追い上げをかわし、17-10で今シーズン初勝利をあげた。

機動力も兼ね備える加藤

「野球ができなくなったら、アメフトだぞ」と父

加藤は岡山朝日高校出身。藩校の流れをくみ、1874年に創立。140年以上の歴史を持つ全国屈指の伝統校であり、進学校だ。そこで加藤は3年間、野球部で白球を追いかけた。私は日体戦の試合後に加藤を取材したが、事前に高校時代の野球の成績を調べていた。「3年の夏は6番サードで5打数ノーヒットでしたねえ」と言うと、一瞬驚いてから苦笑い。「あの試合は、ほんとに全然ダメでした」と振り返った。1、2年と夏は1回戦敗退で、主将になった3年の夏は「今年は絶対に初戦を突破する」と新聞にもコメントしていたが、二度あることは三度あった。高校野球最高の思い出は、2年春の県大会1回戦での4打数4安打だ。

野球漬けの3年間を過ごした加藤は関東の国立大を目指したが、1浪の末に中大へやってきた。東都大学リーグに所属する硬式野球部に入る気概はなく、「サークルで野球やるぐらいなら、体育会の別の部活でやろう」と決めた。そのとき自然に頭に浮かんだのがアメフトだった。

というのも父の孝志さんが広島大のアメフト部出身。ポジションはOLで、しかもGだった。「野球ができなくなったら、アメフトだぞ」。加藤は少年時代からずっと、ずっとそう言われてきた。大学でアメフトをやると言うと、父は喜んだ。面白すぎる合致もあった。広島大も中央大もアメフト部のニックネームが「ラクーンズ」。加藤は父から教えられて入学前にそれを知った。何ともいえない巡り合わせで、息子は父と別の大学ながら、同じ愛称のチームでアメフトをすることになった。

最初はボールにさわれるポジションを希望し、TE(タイトエンド)になった。しかし系列高校も含めてアメフト経験者の多い中大だ。ブロックもパスキャッチもするTEでは先が見えず、1年の秋からOLになった。高3のときに180cm、80kgあったから、うすうすはいつか父と同じポジションになると思っていた。いざやってみると、これが難しい。奥が深い。「レシーバーたったらパスを捕ればOKですけど、OLはずっとブロックし続けてもプレーが進まないと何にもならないところがあって……」。3年まではどこに活路を見いだしていいのかも分からず、ずっと控えに甘んじていた。

最上級生になるにあたり、腹をくくった。相手のディフェンスについて調べ上げる「スカウティング」を徹底的にやると決めた。チームのOLの誰よりもやった。そうするうち、プレー全体の理解も高まり、効果的なブロックが打て始めた。レギュラーのOLたちに、有効な情報を提供できるようにもなった。ようやく本当の意味でアメフトを知り、チームの一員になれた。

加藤(中央)が体を張ってランニングバックに走路をつくる

加藤にOLのどんなところを見てほしいかと尋ねた。「アメフトの中で、一番の力勝負を繰り返してるとこですね。目立ちはしないんですけど、1対1の勝負を見てほしいです」。OLになってよかったかと聞くと、笑顔で大きくうなずいた。「同期でキャプテンの川西(貫太、大阪府立豊中)は日本一のOLですから、一緒にやれてるのが楽しい。後輩にも恵まれてますし、ほんとにこのチームのOLになれてよかったです。

父はリーグ最終戦の11月25日、横浜スタジアムへ応援に来てくれる予定だ。サービス業に就くことが決まっている息子は、今シーズン限りでアメフトとお別れするつもりだ。「最後だし、いいとこ見せたいっすね」。その日、きっと父はQBもRBもWRも見ていない。ただただ、しっかりOLとして生き抜いた57番の背中を見守るのだろう。

父と子の「OL魂」が、そこで完結する。

5人でひとつ、涙の初勝利 近畿大・若山涼

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