野球

特集:第49回 明治神宮野球大会

平成最後の大会、平成元年Vの近大が復活なるか

侍ジャパン大学代表で、関西学生リーグ最優秀選手にも選ばれた大型スラッガー佐藤

平成の前半に隆盛を誇った近畿大が復権を期し、12年ぶりに明治神宮大会へ乗り込む。
左のエース酒井光二郎を擁し、昭和63年に全日本大学選手権で初優勝。平成元年にも同選手権、明治神宮野球大会を制した。また平成9年にも、二岡智宏、宇高伸次、藤井彰人、山下勝己(現・勝充)、清水章夫といった精鋭を揃えて両大会を制した。

平成の中ごろも全国で準優勝や4強入りを果たす強豪だったが、平成25(2014)年に激震が走った。部員の不祥事が発覚し、秋の関西学生リーグを出場辞退。名門の立て直しを仕切る監督として、田中秀昌氏に白羽の矢が立った。1993年に上宮高で選抜大会優勝。東大阪大柏原高でも2011年、藤浪晋太郎が2年生エースだった大阪桐蔭を夏の大阪大会で破り、甲子園初出場に導いた名将だ。

学生と積極的にコミュニケーションとり、チームとしてまとめあげてきた田中監督

就任5年目を迎え、田中イズムも浸透

田中監督は就任当初から「野球は協調性のスポーツ」と、あいさつや掃除といった生活面の常識を根づかせ、ときには4回生と酒を酌み交わして積極的にコミュニケーションを取り、近大のチームをまとめてきた。そして今年は就任5年目。4学年とも自分がスカウトしてきた選手で固まっただけに、田中イズムの浸透度はこれまでよりも深い。
主将を務める中家健登(4年、近大付)は「投げるにしても捕る人がいるし、打つにしても次に打つ人がいる。常に『自分のことだけでなく人のことを考えよう』と言ってきました」と力を込める。田中監督は中家について「チームメートに嫌われることを恐れず、言うべきことは積極的に言うし、個人練習も人一倍熱心にやってますよ」と感心する。高校時代に痛めた右ひじの影響もあり、中家はこの大会が野球人生最後の舞台と決めた。
「彼を最後、男にしたいんです」。田中監督はしみじみと語り、中家も「まだ日本一というものになったことがないんで」と、有終の美に思いを馳せる。

今大会を野球人生最後の舞台と決めた主将の中家。田中監督からの信頼も厚い

今シーズンは下級生にもスター候補がいる。侍ジャパン大学代表にも選出された大型スラッガーである佐藤輝明(2年、仁川学院)が関西学生リーグ最優秀選手に選ばれた。サイドハンドから最速152kmの球を投げる村西良太(3年・津名)は、関西代表決定戦で終盤3イニングを無安打無失点と成長著しい。

チームの合言葉は「平成最初の日本一は近大、平成最後の日本一も近大」。田中監督は「神宮でも普段やってることが出せれば」と、平常心で戦う重要性を説きながらも、「高校(大阪桐蔭)も社会人(大阪ガス)も関西のチームが日本一になった。大学も続きたい」と欲を出す。近年は全国の舞台で低迷の続く関西の大学野球界復権に、ここがチャンスと意欲をみせている。

奈良県生駒市にある近大グラウンド。平成最後の日本一はなるか

in Additionあわせて読みたい