陸上・駅伝

特集:第98回関東学生陸上競技対校選手権

東大医学部の内山咲良、関東インカレで表彰台にあと一歩

東大女子選手初の快挙に迫った

第98回関東学生陸上競技対校選手権 女子1部三段跳び決勝

5月25日@相模原ギオンスタジアム
4位 内山咲良(東京大4年)12m57

陸上の関東学生対校選手権(関東インカレ)はおそらく、日本で一番盛り上がる陸上の大会だろう。応援で競技場全体が熱気に包まれる。レベルも高く、ユニバーシアード代表や世界選手権をめざす選手たちが目白押しだ。そんな大会で、東京大学の女子選手が、表彰台まであと一歩に迫った。

快挙まであと6cm

5月25日にあった女子1部三段跳び決勝。関東インカレ初出場の東大4年生、内山咲良(さくら、筑波大附属)はいきなり12m42を跳んだ。1回目を終わって2位につけた。2回目はさらに伸ばして12m46。その後、昨年までこの種目を2連覇している剱持クリア(筑波大4年、山梨学院)に12m63を跳ばれたが、まだ3位。このままいけば表彰台に立てる。

東大の陸上部は「陸上競技部」ではなく「陸上運動部」という。創設は1887(明治20)年ごろとされ、長い歴史をもつ。しかし、現在まで女子選手の活躍は目立たず、昨年、女子800mで7位に入ったのが、関東インカレの学部生の最高成績だ。現在も女子部員は10人に満たない。

「このままだと、きっと抜かれるな」。そう思いながら迎えた最後の6回目。自分の直前の跳躍順だった4位の日体大の選手が12m63を跳んだ。「記録のアナウンスで抜かれたのは分かりました」。自分の最後の跳躍。「思い切って跳ぶしかない」と助走路に立った。自己ベストを1cm上回ったが、12m57。表彰台に6cm届かなかった。

走り幅跳びでインターハイ出場

高3の夏にインターハイに出ながら、東大理三に現役合格した

4年生の内山にとって、しかし、この関東インカレは「最後のチャンス」ではない。なぜなら、彼女は6年制の医学部生だから。関東インカレは計4回まで出場できる。今回が初出場の内山は5年生、6年生になっても、参加標準記録さえ超えれば出場できる。

筑波大附属中のときから陸上を始め、筑波大附属高3年のときには走り幅跳びでインターハイにも出たが、予選落ち。「やり残したことがある」と感じ、陸上をやめようとは思わなかった。翌春、最難関の東大理科三類に合格した直後、通っていた塾で陸上を続けると宣言した。

種目変更で起きた“突然変異”

陸上運動部に入っても、走り幅跳びを続けていた。転機は3年生の7月。四大戦という対校戦で三段跳びに出たら、11m75と思いのほかいい記録が出た。今春の記録会で11m84を跳んで、関東インカレの参加標準記録を突破した。そのあとのゴールデンウィーク中の記録会で“突然変異”が起きた。

1回目の11m73からどんどん記録が伸びて、6回目には12m56。「あとで動画を見ても、明らかに動きが変わってました。踏み切りに入るときのスピードが、速くなってました」。あまりの伸びに自分でも半信半疑だったが、5月25日の午前中にあった関東インカレの予選は、12m49の一発通過。確信がもてた。土壇場で表彰台は逃したが、「初めてのインカレにしては、悪くないと思いました」と話した。

5年生以降も関東インカレに出るつもりだ

医学部医学科だけに、5年生からは病院での実習も始まるが、競技は続けるつもりだ。「まだスタートラインに立ったばかりなので」。日本選手権のような、さらにレベルの高い大会で戦いたい。そして来年の関東インカレの表彰台は? 「願わくば……。でも周りの方も強いので、もっと記録を伸ばさないと」。今年の日本選手権には残念ながら出場できないが、秋の日本インカレを大きな目標にすえて、ジャンプを磨く。

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