大学野球

連載:野球応援団長・笠川真一朗コラム

特集:第68回全日本大学野球選手権

「人生に野球の心を」恩師・原田監督と観戦して

平安高校出身の元氏。彼もまた「野球の心」をもつ一人です

4years.の野球応援団長に就任いたしました「野球大好き芸人」の笠川真一朗です。今日も私は東京ドームにいました。もちろん全日本大学野球選手権の2日目です!「今日は何を書こうかなぁ」なんて考えながらドームに向かっていたとき、うれしいニュースが飛び込んできました。なんと東京ドームに僕の恩師である龍谷大学付属平安高校(以下、平安高校)硬式野球部の原田英彦監督がおこしになられるとのこと。「こんな機会はめったにない……」と思い、原田監督にお願いしてお話を聞きながら、第2試合、立命館大学ー東海大学の試合を観戦しました。原田監督も「なんや話聞いてくれるんか? ええぞ!」と、優しい笑顔で快く応じてくれました。

「あの3年間のおかげで頑張れる」

立命館大学のメンバーには、3番打者の3回生、橋本和樹と副将の4回生、元氏玲仁(もとうじ・れいじ)の2人の平安OBがいます。原田監督は自身の教え子である部員の、全国での晴れ舞台を見るために京都から来られたんです。

教え子たちが大学野球最高峰の舞台で活躍していることが、監督の目にどう映っているのかを試合前に聞いてみたところ「そりゃうれしいよ。素直にうれしい。高校の3年間で学んだことを大学で生かしてくれるのはうれしい」と、率直な気持ちを語ってくれました。さらに「3年間いろんなことを吸収して卒業してくれた。おれもそうやけど、あの3年間で学んだことは大学に出ても社会に出ても絶対に力になる。いくつになっても『あの3年間のおかげ、野球のおかげで頑張れる』と思う瞬間が何度もある」と、高校野球への思いを口にしてくれました。

原田監督のお話を聞きながら観戦できる、とても貴重なお時間でした!

僕にも、そんな瞬間が何度もありました。
苦しいとき、しんどいとき、何度もあの3年間と野球が自分に力を与えてくれます。
野球人生の幕を閉じても、野球で培った精神力は僕たちの中に一生の財産となって残り続けます。

教え子への熱い思い

試合が始まると、原田監督は三塁を守る橋本を見つめながら「橋本は人間的にしっかりしてる。高校のころは体力もなかったし、走ることも苦手で苦労してたけど、あいつは何ひとつ文句を言わない。がまんのできる強い人間やった。卒業して甲子園の宿舎にあいさつに来るときも、あいつは制服を正しく着こなして来る。足元もしっかりビジネスソックスを履いてた。やっぱりレベルの高い大学野球の世界で結果を残せる人間は、日々の生活からキッチリしてる。信頼できる人間に成長してくれた」。教え子の成長ぶりを語りました。

サードを守る橋本。原田監督の期待も高いです

出場は終盤の代打だけとなりましたが、副将として率先して声を出して指示を送るなど、献身的にベンチでチームをまとめた元氏に対しては「元氏は感情の波が激しいから、いいときはいいし、悪いときは悪い。自分の感情をコントロールするのが苦手で、彼は頭がいいから、悪いときに考え込んでしまうタイプ。開き直って思い切ってやってほしい。自分の役割を頑張ってるとは思うけど、選抜優勝メンバーやねんから試合に出て活躍してもらわんと」。元氏への期待も話してくれました。

控えの元氏は、笑顔でベンチに戻る選手を迎えます

元氏は第86回選抜高校野球大会で平安高校が初優勝を成し遂げたときに活躍した選手。原田監督は元氏選手に期待しているからこそ、厳しい言葉を送ったんです。僕には分かります。監督は決してウソをつかない方です。僕たちはそんな監督のもとで野球人としての生き方を学びました。

ひとりの人間として、成長してほしい

教え子が高校を卒業するとき、一体どんな思いで大学に送り出すのかを監督に聞くと「日々の生活や努力の積み重ねを大切にしてほしいと思う。頑張るか頑張らないかは自分次第。周りに流されず、どれだけ強い志を持って踏ん張れるか。人に言われて気づくんじゃなくて、自分でいろんなことに気づける人間になってほしい。その作業をしっかりすることで子どもから大人になっていく。その過程を大切にしてほしい。それができないと、高校3年間で学んだことに意味がなくなってしまうから」と、答えてくれました。

僕たち平安OBは、野球の技術・戦術の指導と同じぐらい、人間的成長につながる指導や助言を受けることが多かったです。監督からは多くのことを学びました。

「日々の習慣が、いざというときに絶対にプレーに出る。
私生活の姿。グラウンドでの姿。ベンチでの姿。
見てる人はしっかり見てる。
長く野球を続けたいなら、そういう細かい部分をどれだけ手を抜かず真剣に取り組めるかが重要。プロ野球のスカウトの方や、社会人野球の方はそういう細かい部分を隅々まで見られている。
ひとつのプレーにひとりの人間のすべてが出る。
野球は勝負の世界やから何が起こるかわからない。
細かい事をきっちりやっても絶対に勝てるとは限らない。
でもきっちりやってる人間は、負けてもまたしっかり反省して次につなげることができる。
それが習慣になると、人間として野球選手として成長できる。
ひとりの野球人として、ひとりの男として、やり遂げてほしい」

監督の口から出てくる熱い言葉を久しぶりに聞いて、僕は本当に泣きそうになりました。話を聞いてるうちに僕が平安に入学したころ、新入生が集まったときに監督がおっしゃっていた言葉をふと思い出しました。

「もっと成長したい」と語った橋本

「甲子園なんてどうでもいいねん。そんなことよりも人間的に成長して、卒業してしっかりとした大人になってくれ」

初めて聞いたときはこの言葉に僕も驚きましたが、これには「人間的な成長なくして野球での成長は決してありえない」という意味が込められています。甲子園に出たって出られなくたって、人間的に成長できれば野球を続けていたことに大きな意味があります。それは高校野球も大学野球も同じはずです。

競技が終わってからの人生の方が圧倒的に長いんです。その先の人生をどのように立派に生きていくかで、取り組んでいた競技人生に本当の価値が出ます。野球には、スポーツには、そんな力があると改めて感じました。

たくさん話を聞いていると、試合はあっという間に終わってしまいました。

試合は4ー3で東海大学の勝利。
細かい試合内容は今日もプロの記者の方にお任せします!笑

後輩の活躍に刺激を受けて……

原田監督の言葉をたくさん聞いて、試合後の橋本と元氏に「監督はこんな思いで君たちのことを見守ってたよ」ということを伝えに行きました。

橋本は「僕は2回目の大学野球選手権の出場なので、ドームの雰囲気とかはわかってますし、嫌な緊張感はなかったです。チームとしても普段と変わらず試合に臨めましたけど、僕自身はノーヒットでチームの力になれなかった。メンタルの部分がまだまだ足りないです」と、試合を振り返りました。

原田監督が橋本に対して語っていた言葉を伝えると「監督さんは僕らが思ってる以上に僕らのことを見てくれてます。本当に野球での成長より人間として成長できたのが平安での3年間でしたし、それが今も確実に生きてますし、一生忘れません。感謝してます。だからもっと成長して大事な場面やチームが苦しいときに1本打てるバッターになりたいです。そういう人間になって、絶対にまた戻ってきます」。力強く語ってくれました。

代打で打席に立つ元氏。原田監督の社会人時代の背番号25をつけることは、平安OBの目標なんです

元氏は「控え選手でも、とにかくいま僕がチームに貢献できるベンチワークは全力でまっとうしてきました。主将の大本はグラウンドで必死に頑張ってるので。副将として僕は現段階でできることを必死にやります。もう秋しか僕たち4回生にはチャンスがありません。今日の終盤の代打でもいい結果を出せなくて、悔しいです。あの場面でしっかり自分の働きができるようにしたいです。監督さんには絶対にいいところを見せたい。自分が活躍することが何よりの恩返しになると思ってます。これから秋に向けて必死にやります」。悔しさをにじませながら話をしてくれました。

僕も先輩として後輩の活躍は正直めちゃくちゃ楽しみですし、うれしいことです。必死に頑張ってる姿を見たら、先輩として負けてられないと刺激をもらってます。

平安のグラウンドに、胸を張って帰るために

僕は彼らと同じように平安高校で野球人、男としての生き方を学び、大学野球の世界も経験してきました。監督さんのいる平安高校のグラウンドに胸を張って帰ることが、僕たちOBにとっても監督にとっても何よりうれしいことです。胸を張って帰るには、頑張って頑張っていい結果を出して立派にならないといけません。橋本、元氏はまだこれからも続く野球人生に全力を注ぎ、僕はこれからの自分の仕事を全力でやり遂げます。

平安高校を卒業するとき、原田監督は直筆のメッセージをボールに書いて僕たち一人ひとりに手渡ししてくれます。書かれているメッセージは「人生に野球の心を」です。これからも監督さんが僕たちに教えてくれた野球の心と平安魂を胸に、必死に生きて、立派な人間になってみせます。

橋本、元氏! ありがとう!
お互い頑張ろうな!

そして監督さん、今日はありがとうございました!
ずっとこれからも大好きです!

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