大学サッカー

連載:あなたにエール

今度は「壮大の兄」として支えるよ 明大・蓮川壮大へ兄・蓮川雄大からのエール

FC東京に内定した蓮川壮大(右)へ、兄・雄大さんがこれまでの歩みと思いを語ってくれました(写真は本人提供)

アスリートの成長を身近に感じてきた方が独自の目線でたどる連載「あなたにエール」、今回は明治大学サッカー部の蓮川壮大(4年、FC東京U-18)へ、兄・雄大さん(24)からのエールです。ふたりはFC東京の下部組織で鍛えられ、ともにプロを目指してきました。雄大さんはけがもあり、早稲田大学卒業後は一般就職へ。壮大は今年7月、FC東京に内定し、10月4日には特別指定選手としてJ1デビューを果たしました。

早稲田ア式蹴球部5年目の蓮川雄大 プロの夢破れるも「悔いはまったくない」

同じ道を歩み、顔を合わせれば喧嘩ばかり

「スポーツはできる方が楽しいよね」と親に勧められたこともあり、弟は僕と同じ流れで幼稚園の時にサッカーと出会いました。レジスタFCに入ったのは、壮大が小1、僕が小3の時。そのころ、父親も一緒になって3人で練習をしていて、最初は上手下手は置いておいて一生懸命頑張ろうという感じで、試合があればそこに向けて「何の練習をしようか」と言い合いながらやっていました。

壮大(右から2人目)も兄と同じ流れで、幼稚園の時からサッカーをしてきた(写真は本人提供)

僕が小5の時、順番待ちだったFC東京のスクールの体験にやっと行けて、ほどなくアドバンススクールという選抜クラスの試験を受けたら? と声をかけてもらえました。壮大も同じタイミングでスクールに入って、選抜クラスの試験を受けたのかな。そのあたりから徐々に上を目指してじゃないですけど、こだわって練習をし始めました。でも僕もおそらく壮大も、小学生の時はサッカーの試合を真剣に見ていたかというとそうではなく、いろんなことをしながらサッカーと向き合っていたと思うんですよ。

でも中学生になって、(FC東京U-15)深川に入ってからは景色が変わりました。それまではある程度のレベルの中でやれていたはずなのに、「あれ? 自分意外とできないな。周りはうまいな」と感じ始めて、壮大もそんな思いをもって深川に飛び込んだと思うんですよ。僕が中1だった時、体が大きくスピードも技術もある中3の選手たちに打ちのめされました。壮大が中1だった時には僕が中3だったので、「雄大の弟」というのを壮大も意識させられていたんじゃないかなと思います。

振り返ると、小学生の時に僕は一度、区立から私立の小学校に編入してて、壮大も同じ私立の小学校に進みました。僕も壮大も中学校に上がる時、中学受験よりサッカーの環境を優先して同じ区立の中学校に通い、深川でサッカーをしていました。結局、同じ道をずっと歩んできたんですけど、僕は自分で道を選んできたし、逆に壮大には僕の経験を元に選択してもらった方がよりよい選択をできるんじゃないかなと思っていました。壮大が進路を選ぶ時は、壮大の意見を聞きながら家族みんなで話し合っていた記憶はありますね。

でも当時は、ちゃんと面と向かって真剣に色々話ができる関係ではなかったです。兄として負けたくないとかじゃなくて、シンプルに喧嘩ばっかりしていたんで、こいつとは馬が合わないなってずっと思っていました。僕はきっちりやりたいタイプだけど壮大は大雑把で、そういうところもちょっと気にくわないなとか思いつつ(笑)。夕飯で「お前の方が1枚多くお肉食べただろう!」とか、泥汚れがついた洗濯物を壮大がそのまま洗濯機に入れてて「なんで考えて洗濯できないの?」とか、しょうもない喧嘩です。壮大も自分が悪いって分かっていながらも聞き入れない年頃だったと思うし、僕もすぐにカッとなってしまいがちで……。同じ学校で同じクラブでもカテゴリーが違ったら全然顔を合わせないですし、家でも夜だけで接点が多かったわけでもないのに、顔を合わせればほぼ喧嘩しかしていませんでした(笑)。

がむしゃらに頑張れるところが壮大の強み

高校はお互い別の学校に進みましたが、ふたりともユース(FC東京U-18)昇格の話をいただきました。これは壮大が小学生だった時から思っていたことなんですけど、壮大の良さって何かが突出して秀でているよりかは、めちゃくちゃ一生懸命で、がむしゃらでひたむきにやるところ。気がついたら試合に出ているし、気がついたらキャプテンになっているし、気がついたらみんなから信頼されている。そういう周りを巻き込んでいく力は小学生の時からずっとありました。今ではガタイもよくなって、うしろからドリブルで駆け上がってということもやるような強みも段々出るようになりましたけど。

小中の時は副キャプテンで、ユースで壮大はキャプテンになったんです。でも高2の時はほぼスタメンではありませんでした。そんなこともあって「俺、キャプテンやるかも」って聞いた時は、「おい、大丈夫か?」とは思いました(笑)。でもあいつが決めたことで、それだけ自信があるから決められたんだろうし、「頑張れよ」とだけ言いました。結果を見たらクラブユースとJユース杯で2冠達成で、U-18プレミアリーグでも2位。僕たちの代はクラブユース準優勝、Jユース杯準決勝敗退、U-18プレミアリーグ昇格だったので、ここ最近では一番いいかなって思っていたんですけど、あっさり壮大たちに超えられてしまって、あ~もう、弟の方がすごいんだなって思いましたね。

壮大(前列左から5人目)は高3の時、FC東京U-18の主将を任され、2冠を達成。チームメートには当時中3だった久保建英(前列左から3人目)もいた(写真は本人提供)

その後、壮大は明治に進んだんですけど、大学進学にあたり、僕も色々相談に乗りました。小さいころは喧嘩ばっかりでしたけど、壮大が高2の時、僕が早稲田大学ア式蹴球部の寮に移ってからは自然と喧嘩をしなくなり、徐々に大人の会話ができるようになりましたね。お互いの週末の試合を報告したり、僕のけがを気にかけてくれたり。物理的に距離ができたこともあって、お互いにリスペクトすることができたのかな。

壮大の元にいくつかの大学からオファーがあって、早稲田の練習にも参加していたので僕なりに早稲田の良さは伝えましたけど、「もちろん他の道もあるよ」という話もしました。その結果、壮大が明治がいいと選択したので、それはもう、結果から見れば正解だったと思うし、今の壮大があるのは明治に進学して、明治で4年間やってきた経験・自信が今のあいつの姿にも現れていると思うんで、いい選択ができたんじゃないなかと思っています。でももし壮大が早稲田にって言ってきたら、僕はできることはして協力しようかなとは思っていましたし、別に同じ大学になることに違和感はなかったです。

苦しんだ先でつかんだインカレMVP

壮大が大学に上がる前、僕の大学2年間の経験から伝えていたことがあります。ユースではみな、選手はプロを目指して試合に出たいという意欲でプレーをしているけど、大学は必ずしもそういう環境ではないよ。いろんな目的を持ってサッカーに挑戦している人たちがいるから、そこはお前も覚悟を持ってやった方がいい。能力はあったのに、誘惑に負けてプロになれなかった選手はいくらでもいるよ。大学が合わないとか、スタイルが合わないとか、いくらでも言い訳はできる。だから自分はどこを目指しているのか、自分はどういう将来を見ているのか、最後は自分にかかってくるんじゃないかなって。あいつの性格的にもサッカーに力を抜くことはないと思っていたので、そこら辺の心配はあまりなかったんですけどね。

壮大が1年生になった時、早稲田は2部に降格していたので壮大がいる明治と対戦する機会はありませんでした。翌年に早稲田も1部に戻ってきたんですが、壮大はほぼ公式戦に絡んでおらず。壮大が3年生で僕が5年生になった去年はチャンスがあったのに、結局タイミングが合いませんでした。でもお互いベンチにはいたので、直接対決こそはなかったですけどコミュニケーションはとっていました。

僕の大学時代はけがの連続で、壮大も最初の2年は大学サッカーに十分入り切れていなかった部分があったと思うんですけど、LINEで連絡をとりながらお互い今ある悩みなどを話していました。僕はけがでサッカーができなかった身だったので、おそらく壮大もそういうことを感じ取って、言葉にはしませんでしたけど、その分、頑張ろうと取り組んでくれていたと思います。

前回のインカレ決勝で壮大(右)は逆転弾を決め、大会MVPに選ばれた(撮影・うさみたかみつ)

その2年間の準備期間があったから3年生になって徐々にスタメンになれて、去年のインカレ決勝での輝きにつながったんだと思います。桐蔭横浜大学との一戦で、壮大は延長で逆転弾。明治の10年ぶり3度目の優勝を引き寄せ、大会MVPにも選ばれました。僕は現地には行けなかったんですけど、速報は追っていました。あいつが決めた時とか「まぢか!」って思って、ハイライトを見返しながら「FWみたいな動きしてんな」とか(笑)。あいつが悩んでいたのを知っていましたし、そんな努力が報われた瞬間だったのかなと思えてすごくうれしくて、誇らしかったですね。

弟のJ1デビュー、うらやましい気持ちはあっても

去年、試合に出始めるようになってから、壮大は絶対プロに行けるだろうと思っていて、それがFC東京だったら一番いいなと僕も思っていました。壮大も僕のことも育ててくれた場所ですから。兄弟ということで、僕のこれまでのことを知っている人もたくさんいたので、多分あいつ自身も「期待に応えなきゃ」とか、「兄貴のために」という気持ちもあったと思うんですけど、でも「そこは気にしなくていいよ」という話はずっとしていました。自分が進みたい道に進めばいいと思うし、後悔しない道を選ぶのが一番だと僕も思っていましたから。去年の年末、ふたりとも実家に帰っていたので一緒にボールを蹴ったんですけど、その時も「自分がどうなりたいか、どういう選手になりたいかを一番に考えて進んだ方がいいよ」と伝えました。

その後、壮大がFC東京から話をいただいたと聞いた時はうれしかったし、いろんな道を考えた結果、壮大がそれでもFC東京を選んだ時はさらにうれしかったです。僕も兄貴として応援したいですし、FC東京を代表する選手になってほしいなと思っています。

10月4日、湘南ベルマーレ戦で壮大はJ1デビューを果たしました。仲間が1点とった瞬間に途中出場したから、大丈夫かなって僕もちょっと緊張してしまったんですけど、でも壮大の表情を見たらすごく落ち着いているようだったし、これだったら大丈夫だなと思いました。プロを目指していた身としては、うらやましいなという気持ちも半分。でも勝ってピッチに立っている壮大を見て、僕もすごくうれしかったです。さらに今後、もっと試合に出て活躍してくれると、応援をする側として楽しみが増えるのかなと思っています。いつか両親と一緒に味の素スタジアムに行って、壮大の応援ができたらいいですよね。

今は120%サッカーに集中してほしい

10月10日からは大学サッカーのリーグ戦後期が始まります。明治は昨シーズン、関東大学勢初の3冠(総理大臣杯・リーグ戦・インカレ)をなし遂げたので、そのプレッシャーもあると思うんです。でも今年は新型コロナウイルスの影響で、総理大臣杯とインカレが中止になりました(来年1月にインカレの代替大会を実施)。明治はリーグ戦前期をトップで終えていますし、限られた残りの試合も悔いのないように全力で戦ってほしいです。でもごめん! 明治が早稲田と対戦する時は、やっぱり早稲田を応援するよ(笑)。OBになってからも早稲田の結果を気にしているんで、頑張ってほしいなとずっと思っています。

今年はインカレが中止となり、代替大会が来年1月に開催される。明治はリーグ戦4位以上で出場できる (C)JUFA/REIKO IIJIMA

コロナであらゆることが一変してしまい、自分が今の大学4年生と同じ立場だったらやっぱりやり切れないと思う。でも今の状況で何ができるのかを考えて行動に落とし込める人が先に進んでいくんだと思いますし、4年生として後輩に何が残せるかを本気で考えてほしいなと願っています。

僕も壮大もプロを目指してサッカーを続けてきて、でも僕がけがで断念せざるを得なくなった時、僕を気遣うあまり、家族の中でサッカーの話がなくなっていました。でも僕は今までの自分の選択を後悔していないし、そういう気遣いはしないでほしいと伝えていました。今は僕も社会人となり、働きながら好きなサッカーをしています。いつけがをするか分からないけど、それでも体が動く限りは続けていきたいです。家では壮大のサッカーのことも僕のサッカーのことも話していますし、僕が点をとったら「とったぞ!」って報告しています。僕も壮大の試合のことを気にかけていますし、明治が取りこぼしたりしたら「どうした?」って声をかけています。

壮大もプロが決まる前は、就活をするかしないかという話もちょっとしていました。今はもちろん、プロサッカー選手としてどうしていくかということしか考えていないと思いますが、それでいいです。サッカーに120%集中してほしい。もし相談ごとがあれば、一応、僕もプロを目指してやってきた選手ですし、何でも聞いてあげられる存在ではありたいなと思っています。でもいつか、その後のキャリアのことを考える日がきたら、その時は先に社会に出た人間として何かアドバイスができたらいいな。

小さい頃の壮大(左)と雄大さん。プロサッカー選手を目指してきた夢は弟に託すも、兄としてこれからも弟を支えていく(写真は本人提供)

ふたつ上に僕がいて、今までは「雄大の弟」と言われることも多かったと思うんですけど、今度は逆に僕が「壮大の兄」として応援していけたらいいなと思っています。

あなたにエール

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