陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

東洋大OBの陸上系YouTuber「TKDプロジェクト」が吹かせる新たな風!

陸上系YouTuber・TKDプロジェクトのお二人。TKDさん(左)、よしきさん(右)。(写真提供・すべてTKDプロジェクト)

今回の「M高史の駅伝まるかじり」は、TKDプロジェクトさんのお話です。TKDさん(本名:武田脩平さん)、よしきさん(本名:神永よしきさん)のお二人で活動されている陸上系YouTuber。2021年2月現在、チャンネル登録者数7万人超え、動画総再生回数3000万回以上です。

お二人とも東洋大学OB。短距離のTKDさんは日本選手権リレーに出場。長距離のよしきさんは駅伝主務も務められました。どのように陸上競技の世界からYouTubeの世界に飛び込んでいったのか取材しました。

兄の背中をすぐに追い抜き全国へ〜TKDさん〜

山形県出身のTKDさん。陸上を始めたのは中学に入ってからでした。「100m11秒台だった兄に憧れて陸上を始めました」。中学時代は試合に出るたびに自己ベストを連発。「兄がきっかけで陸上を始めたのに、兄の高校3年の記録を中学2年で超えてしまいました(笑)」という急成長。

天童第一中学では全日中、ジュニアオリンピックにも出場しました

「足が速いとモテると思っていましたが、それは小学校までですね(笑)」と笑いながらも100mでは11秒16をマークし、全日本中学陸上の標準記録も突破。「全中やジュニアオリンピックなど、やればやるほど出場できました」と順調な中学時代でした。

山形中央高校に進んでからも高校1年生で国体少年B100mに出場。「ここまでトントン拍子でした。何をしても結果が出ましたね」。国体では決勝を狙っていましたが予選落ち。全国との差を改めて痛感しましたが、同時に可能性も感じていました。

さらなる飛躍が期待された高校2年生のシーズン。けがの影響もあり、大スランプに。「当時はそれまでのプライドもあって周りの声を全然受け入れられず、泥沼にはまり全く成績を残せませんでした」

そんな中、同期3人が全国大会に出場。「今まで自分の方が速かったのに複雑な気持ちでした」。100m10秒9だったのが11秒9まで落ち込んだことで、信頼している仲間から技術的な動きのアドバイスがありました。「アドバイスを取り入れたら良い状態になりましたね。いま思うとその前からも言われ続けていたと思いますが、当時は受け入れられなかったんですね」。素直さが大事だということを実感したそうです。

山あり谷ありの高校3年間でした。写真左がTKDさん

素直に真摯に向き合い、高校3年生では見事に復活を遂げ、100m10秒76と自己ベスト更新。インターハイにも出場しました。「山あり谷ありの3年間でしたが、第三者の言葉や客観的意見を1回素直になって聞いてみることを学びましたね。取り入れすぎもよくないかもしれないですが、まずは耳を傾けるようと思いました」

けがを乗り越え日本選手権リレーに出場〜TKDさん〜

高校卒業後は東洋大学に進んだTKDさん。「大学の競技レベルの高さに打ちのめされました(笑)」。最初は競技面、生活面での厳しさにも驚きました。

だんだん練習にも慣れて、順調にできてきた矢先、肉離れ。けがに苦しんだ大学生活となりました。ちなみに、TKDさんの1つ後輩には桐生祥秀選手(現・日本生命)がいました。けがに苦しんだTKDさんでしたが、コツコツとできることを続け、けがから復帰。ついに日本選手権リレーのメンバー入り!

「肉離れをしてから辛い時期が続き、秋までずっと辛かったですね。最初の復帰戦で割と良いタイムで走れたことが監督に認められて、日本選手権リレーに出場することになりました。メンバーに選ばれて公式ユニフォームを着ることができるのは嬉しかったですね!」。アンカーを任された4×100mリレー。順位が決まってしまうプレッシャーもありましたが、大役を全うしました。

けがに苦しみながらも日本選手権リレーのメンバー入りを果たした東洋大学時代。写真右はウォルシュ・ジュリアン選手(現・富士通)

「4年生になってチームを応援できる状況になって陸上が楽しくなりました。3年生まではけがもあって自分のことだけで精一杯。仲間を心の底から応援できていればもっと陸上人生楽しかったかもって引退間際に気づいたんですよね」と4年目に気づいた大切なことを教えていただきました。

坊主が嫌で陸上の道へ〜よしきさん〜

ここからはもう1人の主役、よしきさんのお話です。よしきさんはTKDさんの2歳先輩になります。

福島県出身のよしきさん。中学から陸上部に。「本当は野球をやりたかったんですけど、坊主が嫌でやめました(笑)。走るのも得意だったの陸上部でいっかという理由で始めました(笑)」というのが陸上との出会いでした。

小学6年生のときのよしきさん。中学では坊主が嫌で野球部ではなく陸上部へ入部しました(笑)

最初は短距離、次に走幅跳とやっていましたが、全く芽が出ず。そんな中、長距離に転向したところ県大会に出場できるようになり、周囲からも認められる存在になっていきました。中学では800m2分06秒、1500m4分29秒まで記録を伸ばし陸上の楽しさを感じ始めたそうです。

高校は柏原竜二さんの母校でもあるいわき総合高校へ。「オレンジのユニフォームを着て一列になって先頭で走る姿がかっこよかったんです。やるからには誇りを持って陸上競技をやりたいと思いました!」と意気込んで高校へ入学。1年目は貧血にも苦しみましたが、やがて貧血を乗り越えると記録も一気に伸びて徐々に力をつけていきました。駅伝のメンバーにも入り、「結果を出していくことが陸上の醍醐味」と感じるようになりました。

いわき総合高校時代のよしきさん(写真右)。陸上に熱中し、青春を捧げた3年間となりました!

高校3年生の福島県高校総体1500mでは大接戦の末、6位。「最後はヘッドスライディングしながらフィニッシュしてギリギリ6位でしたね(笑)」という決死の走りで、1500mで東北高校総体まで駒を進めました。

坊主が嫌で始めた陸上でしたが、高校3年生のときには「自分で気づいたら五厘にしていました(笑)」と心境も大きく変わるほど競技にのめり込んでいきました。

マネージャーに転向、駅伝主務に〜よしきさん〜

東洋大学に入学後は「けがが多かった学生生活でしたね。頑張りすぎてしまうところがあって、けがをして治ってまたけがをしての繰り返し。いいところまでいってもレギュラーに届かない状況でした」

転機となったのは3年目の春。腸脛靭帯を痛めて全く走ることができず、マネージャーになるという決断をしました。「いかに選手の時に何も考えてなかったのかってすごく感じましたね(笑)マネージャーになってみて今までマネージャーに色々やってもらっていたのに気づかされました。マネジャー経験は自分にとって人生の財産ですね。陸上に対する視野も広がりました」

4年生になると、よしきさんは駅伝主務に。当時、主務だった根本侑さんと2人体制でチームや選手のサポート、運営を行いました。「仕事を分割して、チーム運営していました。やりがいは感じていましたが(駅伝主務になって)一段と大変でしたね。箱根前は生きた心地がしなかったです(笑)」

東洋大学では駅伝主務を務めました。写真左は同級生の今井憲久さん

マネージャー業務の中でも実は当時、パソコン作業が苦手だったそうで「今、YouTubeでパソコンをガッツリ使っているので、当時の仲間には驚かれますね(笑)」と笑います。

恩師・酒井俊幸監督については「よく、イケメン、イケメンと言われますが、中身もかっこいいです! とにかく真面目で筋が一本通っている方です。選手への声かけ、フォロー、選手が頑張れるようにモチベーションが上がるような言葉をかけられていましたね」。人間として成長させていただいた4年間と振り返られました。

TKDプロジェクト始動!

さて、同じ東洋大学とはいえ、短距離と長距離でブロックも違い、学年も2つ違ったTKDさんとよしきさん。いったい何があってYouTuberの道へと進んでいったのでしょうか?

動画を作るのが得意だったTKDさん。SNSに動画を投稿していたのが話題となり、TKDさんが投稿する動画を楽しみにしているファンの方もいらっしゃったそうです。大学卒業後、地元・福島に帰ってスーパーの社員をしていたよしきさんも、そんなTKDさんのファンの1人でした。

TKDさんは大学卒業後、サラリーマンとして陸上からは全く離れた生活。動画はあくまでも趣味でした。ところが「東洋大学で4年間、厳しい環境でやってきて多少のストレスは大丈夫と思っていましたが(笑)」。社会人となり、陸上とは全く違う分野で壁にぶつかりました。「遊びで作っていた動画に関して、もうちょっとできそうだなと思ったんです。仕事をやめて動画を作りたい!とだんだん思うようになりました」

そんな時に、大学の先輩であるよしきさんから突然連絡がありました。一緒に食事をして、話をしているうちにYouTube活動がスタートすることに! 2017年の5月のことでした。周囲は「え?YouTuber?(笑)」という反応だったそうですが、TKDさんもよしきさんも本気でした!

「最初はめちゃめちゃ大変でしたね(笑)。まずは金銭面です。YouTubeの収入が入るまでも時間がかかりましたし、最初はアルバイトして、動画撮影をして、編集して、走ってといった感じでしたね。ガスを止められたこともありましたね(汗)」とTKDさん。

最初は金銭面で大変だったと語るTKDさん。その経験が今につながっています

「2017年の5月から僕らの活動が始まったのに、1本目の動画は6月に上がっているんです。編集に1カ月かかっているんですよ(笑)。パソコンの使い方が本当にわからなかったです。編集の仕方もわからない。イチから調べて、慣れない字幕を入れたり、長い動画をカットしたり……。今は3〜4時間で1本の動画を編集できるようになったんですけどね(笑)」とよしきさんは当時を振り返って苦笑い。

TKDさんの動画センスを信じて、辛い時も一緒に走り続けてきました!

それでも「彼の動画のセンスは人並み外れているんですよ!(TKDさんに)ついていけば大丈夫と突っ走りましたね!」。よしきさんはTKDさんへの絶大な信頼を置いていました。初めて動画で広告収入が入った時は「感動でした! 自分たちの活動で本当にお金が入ってきているんだ!」と喜びを感じました。

視聴者の方からの応援コメントが嬉しいです!というお二人。ファンの方を大切に動画を配信し続けています

本気で陸上を盛り上げたい!

その後は、試行錯誤しながら、笑いあり、本気あり、陸上への熱さが伝わる動画を配信し続けて、3年半ほどでチャンネル登録者数も7万人を超えて、陸上系YouTuberの中でもトップを走っています。

TKDさんが短距離出身、よしきさんが長距離出身ということで「どっちもやっているのが自分たちの強みですね。長距離を走るのは苦手でどっちかというと大嫌いですけど(笑)。7万人に見ていただいてるんだと思うとモチベーションが上がりますね!」。企画で苦手な長距離走に挑むこともあるTKDさんですが、キツいながらも楽しんでいるのが動画から伝わってきます。

ちなみに、いま気になるYouTuberについて伺ったところ、2人とも「たむじょー」さんの名前を挙げました。「行動力と本気なのが伝わってきますね!」。時にはたむじょーさんとのコラボ動画も企画。陸上界を新しい角度から盛り上げていこうという姿勢が伝わってきます。

ランニング×コメディ×YouTuber 帝京大卒箱根ランナー・たむじょーさんの挑戦!
ランニング×コメディ×YouTuberたむじょーさん(中央)とのコラボ企画も。陸上界を盛り上げる仲間を応援しています!

トップアスリートとのコラボでは「持ち味を前面に出しつつ、編集の際にアスリートが伝えたいことや表現をねじ曲げないように、受け手に間違って伝わらないように気をつけています」と気を配りながらも、「テンポよく、陸上を知らない人でも楽しめるわかりやすい動画」を目指して日々、現状打破されています。

今後は「まずは、チャンネル登録10万人! そして、TKDプロジェクトとしてイベントを開催したいですし、視聴者さんと一緒に走る機会を増やしていきたいですね!」とTKDプロジェクトとしての目標を話されました。

「ダッシュで行こうぜ!」「刻んでいこうぜ!」で日々楽しく熱い動画を配信し続けてます!

「いま青春しています!」と楽しそうにお話されるTKDさんとよしきさん。良い結果も挫折も味わいながらも本気で陸上に捧げてきたからこそ、本気で陸上を盛り上げたいという気持ちが伝わってきますね!

「ダッシュで行こうぜ!」のTKDさんと「刻んでいこうぜ!」のよしきさんが織りなすハーモニー。今後も陸上界に新たな旋風を巻き起こす陸上系YouTuber・TKDプロジェクトさんに注目ですね!

TKD PROJECT YouTubeチャンネル

M高史の陸上まるかじり

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