立命館大学を支えるマネージャー・岡本紗弥さん ラストイヤーに懸ける想い!
今回の「M高史の陸上まるかじり」は岡本紗弥さんのお話です。岡本さんは立命館大学体育会男子陸上競技部長距離パートのマネージャー。3回生だった昨年度は主務も務めました。4回生の今年はマネージャーとして強豪・立命館大学を支えます。
中学・高校では陸上部で長距離選手
東京都江東区出身の岡本紗弥さん。中学で陸上部に入部します。「元々小学校から水泳をやっていました。水泳の体力強化のために陸上を始めたところ、気がついたら陸上にのめり込んでいきました」。中学時代から駅伝が好きで、地元・江東区の駅伝では3年連続で区間賞も獲得しました。当時から大学駅伝もテレビで観戦していました。
中学時代一番の思い出は2年生の時の中学生「東京駅伝」大会でした(令和2年度の大会は中止、大会そのものも終了)。全国中学駅伝の予選となる東京都中学駅伝とは別の大会で、毎年2月に都内区市町村対抗でそれぞれの代表選手が選ばれて走る中学生の駅伝。岡本さんは江東区のキャプテンを任されました。「練習のモチベーションも高くて自分自身も自己ベストにもつながりました」。しかし、本番はまさかの雪で中止に! 熱い気持ちをぶつけることなく終わってしまったそうです。
高校は宝仙学園高校へ。「中学の最後に故障をしてしまい、実は陸上をやめるつもりで高校を選んだんです。ただ、高校に入って違う部活を見て、やはり陸上をやりたいなと思いました」。陸上強豪校ではありませんでしたが、陸上への熱い気持ちが実り、東京都の第4支部予選を通過して東京都高校総体大会にも出場。「都大会では暑くて思うようにいきませんでした。より一層頑張ろうと思いましたね」。悔しさをバネにより一層練習に打ち込みました。
長距離部員が岡本さん1人だったため、短距離部員にも走ってもらい東京都高校駅伝にも出場。「1区6kmを走りました。練習でもペース走でしかやっていない距離でしたが、走りきれました。2区以降はみんな短距離の選手でしたがフィニッシュまで無事に襷(たすき)がつながって、いい思い出になりました! みんなのおかげで駅伝に出られたので感謝しかないです!」
高校3年間は「結果を残せたわけではないですが、改めて陸上が大好きという気持ちを確認できました。選手としてやりきれた満足のいく3年間でした」と熱い3年間を過ごしました。
マネージャーになりたくて直談判!
高校卒業後は立命館大学スポーツ健康科学部へ。「中学、高校と陸上をやっていく中で、体育教師になりたいという気持ちもありました。ただ、好奇心も旺盛で、いろんなことに興味を持っていたので立命館大学のスポーツ健康科学部に行くことを決めました」。施設の充実、スポーツが身近にあるというのも決め手となりました。
入学当初は部活に所属することもなく、授業に専念。実際にトレーナーさんの近くで学ぶ機会も多かったそうです。さまざまなスポーツの現場を見ていて感じたのはやはり陸上への想いでした。
「陸上以外のスポーツを見ていた時に、やっぱり陸上をずっと見ていたいと思ったんです(笑)。トレーナーになったからといって陸上のトレーナーになれるとは限らないですし、せっかくの大学生活、陸上に携わりたいと強く思いました」。陸上部のマネージャーになりたいという気持ちが湧き上がってきました。
「ただ、当時は今の男子長距離パートでは女子マネージャーを募集していなかったんです。そこをどう突破しようかと思いました。高尾(憲司)コーチにご挨拶して面談させていただくことになりました」。ちょうど長距離の男子マネージャーを募集しているタイミング。岡本さんは「使ってください」と直談判。高尾コーチからも熱意を認められて「頑張ってほしい」と晴れてマネージャーになることができました。
「いま思えばよく行ったなと思います(笑)」と岡本さんはふりかえります。その後は現3回生の吉田遼子さん(吉祥女子)がマネージャーをしているように、女子マネージャーも入部できるようになりました。岡本さんの熱意が後輩たちにも門を開くきっかけとなったんですね!
熱い気持ちを持ってマネージャー生活がスタートしましたが、最初は戸惑いもありました。岡本さんご自身も中学、高校と陸上経験者とはいえ、立命館大学は関西トップクラスの実力。「自分の身近にはいなかったレベルですし、見てこなかった世界にどうやって近づいていけばいいか、どうやって支えていけばいいか……。例えば設定タイム、ラップタイムにしても感覚も違いますし、かけ離れて速いので。ただただ尊敬でしたね。すごいなと思っていました」。弓削圭介さん、福島奈槻さんといった先輩マネージャーからも多くのことを学びました。
立命館大学でのマネージャー業務についてうかがうと「選手に見えているところでは給水の用意やタイム計測ですね。それ以外では大会エントリー、スケジュール調整、SNSの運用です。現在はTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeで発信しています。時代もSNS中心になってきているので、どういう風に見られているか学ぶところも多いです」。マネージャーの仕事にも、時代に合わせて求められることが新たに追加されているようです。
現在、岡本さんはTwitterを主に担当。「拡散されやすいツールですね。試合結果はもちろん、できるだけ情報をこと細かく発信していきたいです」。さらに、チームでYouTubeも始めました。「監督のメッセージ、さらにはOBの方へのオンライン取材も配信しています。OBの方の経験、苦労、特別なところに焦点を当てているので、高校生の皆さんにもぜひ見てほしいですね」。チームの魅力を発信するのもマネージャーとしての役割です。
主務としてチームを支える
2019年度は出雲駅伝6位、全日本大学駅伝12位。またこの年の全日本大学駅伝が終わって、2回生の11月から3回生の11月まで1年間、主務も務めました。
「コロナ禍の影響で例年通りじゃないこともたくさんありました。気持ちを強く保っていたのですが、出雲駅伝が早い段階で中止となり、個人的にはショックでしたね……。ところが選手たちは『そんなの関係ないでしょ、全日本と関西があるから!』と切り替えていたんです。選手から勇気をもらいましたね」。前回のリベンジと思って挑んだ昨年の全日本大学駅伝。「結果としては15位に終わってしまって、関東勢のレベルの高さを痛感しましたが、コロナ禍で限られた環境下で選手も工夫して練習していたのを陰ながら見ていました」と岡本さんも主務として一緒に戦ってきました。
一方で、関西学生駅伝では3連覇を達成。岡本さんが入学してから連続優勝中ということもあって「4回生で4連覇を達成して、関西では嬉し涙で終わりたいですね」と笑顔を見せました。
ラストイヤーへの想い
4回生となった今年度は選手からマネージャーに転向した赤川雅直さん(4年、大東文化大学第一高校)が主務となり、岡本さんは再びマネージャーとしてチームを支えます。
「選手のサポートはもちろん、自分の経験をふまえて、マネージャーにも教えたりして行きたいですね」
チームの魅力をうかがうと「みんな個性がとても豊かで、各々が個人を強く持っています。また、自分の考えをしっかりチームで共有しています。他人の考えを吸収するのも大事だと思っていますね」。1つの考えに偏らずミーティングを繰り返しながら共有しています。
そして、競技だけではなく勉強もしっかりやる文武両道のチームなのが立命館大学。選手の皆さんもきちんと勉強されていますが、ご指導されている高尾コーチも今年、立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程を修了されました。「高尾コーチが一番勉強していますね(笑)」というほどコーチ自ら猛勉強されているのも学生の皆さんにとっても大いに刺激となっているようです。
例えば、昨年卒業した今井崇人選手(現・旭化成)が所属していたのは田畑泉先生のゼミ。田畑先生といえばアスリートの間でもよくトレーニングで取り入れられているタバタ式トレーニング(タバタ・プロトコル)を考案された先生。「(今井選手は)当時、全日本大学駅伝と卒論の時期が被って、かなり大変そうでしたね。それでも勉強もしっかりされていました。全日本の後の八王子ロングディスタンスでは関西学生新記録を出されて、やはりすごいなと思いました」。エースも文武両道を貫くことで、部員全体に良い影響を与えていったそうです。
岡本さんはスポーツ健康科学部で学びながら「現場と研究室の架け橋になれたら」と意識されています。「勉強したことをマネージャーにも活かせますし、マネージャーで経験したことを勉強にも活かせます。勉強したことを選手にも還元したいです」。勉強していることがすぐに選手のために活きるのは勉強のモチベーションになるそうです。
「勉強でも難しいことはたくさんありますが、陸上に関連づけると自然と興味が湧くんですよ」と話される岡本さん。陸上が本当に大好きということが伝わってきます。2021年度も注目の立命館大学。「マネージャーとしてあと1年なので結果を残したいです」とラストイヤーに懸けています。
大学卒業後は大学院に進んで研究したいそうです。「将来はスポーツメーカーさんの研究職に就きたいです。メーカーさんの商品は年々進化していてすごいなと感じています。そこに携わって選手に貢献できたら嬉しいですね!」。将来、岡本さんが開発に携わった商品を使った選手が駅伝を走るかもしれないですね!
立命館大学の選手の皆さんの活躍を支え、現状打破し続けるマネージャー岡本紗弥さん。ラストイヤーの1年にも注目です!