バスケ

連載: プロが語る4years.

長谷川健志さんにディフェンスの神髄を学び「楽しい!」と思えた 川崎・藤井祐眞3

藤井(7番)は2013年と15年にユニバーシアードを経験し、その13年の時に長谷川さん(藤井の左)にチームディフェンスの大切さを学んだ (c)JBA

今回の連載「プロが語る4years.」は、Bリーグ・2020-21シーズンにレギュラーシーズン ベストファイブ(2年連続)、ベストディフェンダー賞(2年連続)、ベストタフショット賞を受賞した川崎ブレイブサンダースの藤井祐眞(ゆうま、29)です。2014年に拓殖大学を卒業し、同年からNBL・東芝ブレイブサンダース神奈川(現・川崎ブレイブサンダース)に加入してプレーしています。4回連載の3回目は拓殖大学3、4年生の頃についてです。

怒られたくない」から始まったバスケ道 川崎ブレイブサンダース篠山竜青・1

大学時代に影響を受けた2人

超攻撃型プレーヤーとしてならした中高時代から、リーグを代表するディフェンスマンとなった現在へ。バスケキャリアにおける重要な分岐点となった拓殖大時代、藤井は2人の人物に大きな影響を受けた。1人は第2回で紹介した鈴木達也(現・京都ハンナリーズ)。そしてもう1人、藤井のどんぐりまなこを更に大きく開かせたのが、ユニバーシアード日本代表チームのヘッドコーチを務める長谷川健志さん(現・青学大アドバイザー)だった。

長谷川さんは、体育系学部がなく推薦枠の少ない青山学院大学を日本屈指の強豪に育て上げ、比江島慎(宇都宮ブレックス)、張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)ら何人もの日本代表選手の礎を作った人物だ。藤井は大学3年生の時にユニバーシアードの代表候補に選出され、長谷川さんの薫陶(くんとう)を受けた。藤井が長谷川さんに学んだのは、考えながらバスケをすることの醍醐味だ。

「それまではあまり深く考えず、自分の感覚で自由にプレーしていたんですが、ユニバで長谷川さんやアシスタントコーチの佐々宜央さん(現・宇都宮ブレックスアシスタントコーチ)と一緒にやったことで『バスケってやっぱり考えながらやるもんなんだ。一生懸命考えながらバスケをするってすげえ楽しい』って思うようになりました」

藤井いわく、長谷川さんは常日頃からバスケのことばかり考えているような人だという。「移動中とかちょっとした待ち時間に普通の雑談をしていても、すぐに『それってバスケにもこういうふうに使えるじゃん』みたいなことを思いつくんですよ。いつも『この人すごいな』と思っていました」

長谷川さんの“ドロップゾーン”に「すげえ! 楽しい!!」

また、長谷川さんが得意とする、統制のとれたチームディフェンスにも大きな刺激を受けた。

「長谷川さんは『ドロップゾーン』というディフェンスをよく使っていたんですけど、『オフェンスはこういうところを狙ってくるから、その時はディフェンスはこうやって動く』みたいな感じで、すごく頭を使いながらバスケットするんですよ」

学生時代にたたき込まれたディフェンスは今も体に染みついている(写真提供・B.LEAGUE)

藤井はあまり多弁なタイプではないが、この下りでは珍しく、ひとり語りが長く続いた。

「それまで僕は、ほぼ勘だけでディフェンスをやっていたんですけど、長谷川さんの下でバスケをやっている内に、段々『ここを守ったら次はこう来る』って考えられるようになりました。例えば『相手はインサイドの選手が当たってるから、次も絶対にインサイドに入れて勝負してくる。だったら自分のマークを捨ててでもインサイドの選手を助けに行かないと』みたいな……。そういう読みが当たって、相手のアタックを止めたりボールを奪えたりした時は『すげえ! 楽しい!!』って思いました」

鈴木には個で守る意志と技術を学び、長谷川さんにはチームで戦う知恵を授けられた。3、4年生になってからはチーム事情もあってオフェンスへの意識の方が強まったと藤井は言うが、大学時代にディフェンスの大切さと楽しさの種を得られた幸運は、ニック・ファジーカスと辻直人(現・広島ドラゴンフライズ)という不動のスコアラーが鎮座していた東芝(現・川崎)で藤井が自らの役割を見出し、大成する上で大いに生きたと言えるだろう。

学生へ「オンとオフをしっかり意識して」

大学におけるラストゲームとなったインカレは4位で終えた。優勝が狙えたチームを自身の絶不調で負かしてしまったという後悔は残っているが、大学時代を振り返ると総じて楽しい思い出ばかりだと藤井は言う。

学生時代の友情は今も続いている(右から張本天傑、小林遥太、藤井、写真はコロナ禍以前に撮影したもので本人提供)

「チームメートと夜遅くまでゲームしたり、遊んだり、楽しかったですね。他の大学の人ともめちゃくちゃ仲良くなって、4年の頃はほぼ自分の家に帰らず、青学のバシオ(小林遥太、現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)や他の大学の友達の家に泊まってました」。懐かしそうに振り返りつつ、後輩たちとなる現役大学生には「遊ぶ時は遊ぶ、バスケする時はバスケする。オンとオフをしっかり意識して学生生活を楽しんでほしいですけど、羽目を外しすぎると大変なことになるので、そこはしっかり肝に銘じておいてほしいです」と真に迫ったアドバイス。更にモラトリアムを謳歌(おうか)した学生生活への反省も踏まえて、こんなメッセージも送ってくれた。

「僕は卒業後、2年だけですが会社員も経験しましたが、その時は何にもできなくて、『大学の時にもっと色々やっておけばよかったな』ってことがいっぱいありました。特に3、4年生は、将来自分がなりたいものを思い描いて、ビジョンを持って生活していってほしいとも思います。今はBリーグができて、選手以外にもバスケに関わる仕事がたくさんありますし、そういう仕事に就きたいという人は、自分が持っているいろんなコネクションを使いながら、チャンスをつかむ努力をしてほしいですね」

プロが語る4years.

in Additionあわせて読みたい