陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

城西大の箱根駅伝初出場時のメンバー齊藤秀幸さん 現在はスポーツ鬼ごっこ日本代表に

城西大学箱根初出場の時に6区を走った斉藤秀幸さん。現在はスポーツ鬼ごっこ日本代表に。隣はスポーツ鬼ごっこデビューをされた愛娘・葉月さん(写真提供全て本人)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は齊藤秀幸さん(39)のお話です。城西大学が箱根駅伝に初出場した時のメンバーで、6区を走りました。現在は「スポーツ鬼ごっこ」という競技で日本代表。さらには「かくれんぼ世界選手権」出場も目指しています。

城西大城西で過ごした中高一貫の6年間

埼玉県出身の齊藤秀幸さん。中学受験をして中高一貫の城西大附属城西中学に入学。両親も走るのが好きだったということもあり陸上部へ。「当時、中学・高校一緒に練習していましたが、人数が少なくて、おもに高校の陸上の先輩と練習していましたね。3〜4つ年上の先輩たちにすごくかわいがってもらいました」

中学時代の齊藤さん。高校の先輩にもかわいがっていただいたそうです

城西大附属城西高校といえば今では強豪校となっていますが「当時はのびのびした部活でした。すごく楽しかったですし、いろいろなことを教えてもらいました。合宿はみんなで川で遊んだり、学園祭では陸上部で焼きそばを作ったりもしていました(笑)。部活が厳しいとかは全くなかったですね!」。遊びの要素が将来にもつながっていたといいます。

学園祭では陸上部で焼きそばも出店しました!

当時、指導されていた栗原輝行先生はご自身でも国体800m出場経験がありました。「栗原先生が800mをやっていたこともあって、中距離に魅力を感じていました。やっていて強くなりたい気持ちもありました」。楽しみながらも練習は真剣。メリハリをつけて練習していたところ、中学では800mで関東大会に出場。高校でも800mで関東高校新人大会に出場しました。

「勝つためにはと思って、自分で自主練もしていました。ただ、陸上は陸上でやっていましたが、バンドもやっていました(笑)。バンドでお金がかかるのでアルバイトもしていましたね!ベースをやっていたのですが、ベースを持って陸上競技場に行ったりもしていました(笑)」と高校生活そのものも楽しまれていたそうです!

中学時代、合宿では練習の合間に川遊びも!

高校2年生の関東高校新人に出場でき、インターハイも目指していた3年生のシーズンにまさかの疲労骨折。「それまでけがなく順調だったのですが……インターハイに出たら陸上はいいかなと思っていたのですが、悔しくて、このままじゃ陸上をやめられないという気持ちになっていました」。そんな中、恩師・栗原先生がある行動に。「無言で新聞をポンと渡してくださいました」。その記事には一般入試で入学し、箱根駅伝を走った選手のことが書かれていました。

「中距離をやっていたので、箱根のイメージがわきませんでしたが、大学で箱根を目指そうという気持ちになりました」

都大会で競い合っていたライバル・大作治彦さん(保善高校〜城西大学)が城西大学に進学予定という話を聞きました。大作さんから「来年、城西大学に駅伝部ができて箱根を目指すらしいよ」という噂を聞き、齊藤さんも城西大学へ進むことになりました。 

「城西大学に行くまで実は本当に男子駅伝部ができるかわからなくて、3月くらいに陸上雑誌に書いてあってホッとしました(笑)」と笑って振り返りました。

創部したばかりの城西大学男子駅伝部へ

齊藤さんが城西大学に入学した時は、平塚潤監督(当時)が駅伝部監督に就任したばかり。選手も最初8人からスタートしました。

「当時、女子駅伝部が強くて、3つ上の4年生に赤羽有紀子さん(現:城西大学女子駅伝部コーチ)がいらっしゃいました。赤羽さんは5000mでもたしか15分前半では走っていたので、女子選手よりも遅いところからスタートしましたね」

女子選手の方が速いと言われていた1年目でしたが「遠方の記録会まで連れて行っていただいたり、エスビー食品の合宿に参加させていただいたり、貴重な経験をさせていただきました」と周りのメンバーと必死で走り続けました。

2年目になると、一気に25人ほど後輩が入ってきました。「当時まだ寮がなくて、近くのアパートで6畳に3人くらいで暮らしていました(笑)」。実力がある後輩たちが入ってきた中「やるしかない」と気合いも入りました。

得意な部分を伸ばし自信に

まだ大学2年生の頃、「5000mで15分を切れなくて、その時に櫛部静二コーチ(現:城西大学男子駅伝部監督)と話していた中で一度箱根を諦めたんです。元々スピード練習は得意だったので、1500mでインカレに出ると目標を変えました」。目標が明確になったことにより、練習もできるようになっていきました。

3年生になると、のちにユニバーシアードの日本代表となる田上貴之さん(現:九電工陸上競技部男子部コーチ)をはじめ強いルーキーたちも入学してきました。

それでも「自分には1500mがあるという自信がありました」。スピードに自信もつき、1500mで3分52秒をマーク。インカレ標準を切れたことで「明るい道筋が見えました。スピードだったらやっていけると思いました。櫛部コーチの提案で目標を変えられてよかったです」。苦手なこと、課題を克服するよりもまずは長所進展。得意分野を伸ばすことで結果にも繋がり、自信もついていきました。

得意のスピードを磨き1500mでは日本インカレにも出場しました(一番前が齊藤さん)

この年、1500mで関東インカレ、さらに日本インカレにも出場。1500mで結果を出し始めた齊藤さんですが、思わぬ変化が。「スピードに自信があったので、あとはスタミナだなと。夏合宿に入って苦手な30km走にも取り組めました」。長所を伸ばし自信をつけたことで、一度は諦めかけた箱根駅伝も視界に入ってきたのです。

「1500mに自信があったので、狙うならスピードを活かせる6区山下りでした。練習でもちょっとアピールして、下り坂になると速く走るなど精一杯見せてましたね(笑)。下りは好きでしたし、体重も軽かったので、活かせるのはここだなと。JOGの時も下りを意識していました。『どうしたら箱根に出られるか』『どうしたら自分が輝けるのか』を常に考えて練習していましたね」と自身をセルフマネジメント。

箱根駅伝出場のためには、まずは予選会突破が必要になります。この年は第80回記念大会の予選会ということで、箱根芦ノ湖での開催となった伝説の予選会。城西大学は見事に箱根初出場を決めました。斉藤さんはエントリーメンバーに入ったものの補欠になりましたが、「チームメイトの頑張りで初出場でき、みんなで大喜びでしたね!」

第80回記念大会で箱根駅伝初出場を決め、チームメイトと歓喜!

迎えた箱根駅伝本番では見事に6区のメンバーに。「競っていた後輩もいましたが、1週間前にメンバーを言い渡されました。いざ迎えた本番では、当時の自分としては全力を出しましたが力不足でした。出し切ったと思いましたが、今思うと後悔の残る走りでした。それでも襷(たすき)の重みはすごく感じましたね。応援がすごくて、声が耳に入ってくるんですよ!」。区間18位と悔しい結果でしたが、目標としていた箱根6区を駆け抜けました。

チームとしては初出場。個人でも目標としていた箱根6区を駆け抜けました

陸上は大学までと決めていた齊藤さん。就職活動をしながら競技を続けていましたが「4年生の時は思うように走れなかったですね。いま思うと貧血だったかなと。食事のことなども知識が少なかったです」。最終学年では箱根出場はなりませんでしたが「中学、高校とはまた違って、本気で陸上に向き合うことができました。どういうプロセスで目標へアプローチしていくか。また、集団生活も身につきましたね」。チームととも1年1年成長を続けてきた4年間でした。

チームの成長とともに1年1年成長できた4年間でした

新たな競技で日本代表に!

大学卒業後は美容関係のお仕事をしています。「ウィッグの営業をしています。箱根駅伝を走ったことが営業マンとしての最大の武器になりましたね(笑)」。思っていた以上に箱根駅伝の影響力を感じたそうです。

また「スポーツ鬼ごっこ」という新たなフィールドにも挑戦。「始めたきっかけは、なんでもいいから日本代表になりたいと思ったんですよ(笑)。調べたら出てきたので、そこから色々な練習会に参加するようになりました」。スポーツ鬼ごっこについて「7人制の競技で、相手の陣地の宝を取り合う競技です。走るだけではなくチームワークが大切です。年齢、性別関係なくできますし、スポーツ経験のある方から、未経験の方、学校の先生までいろんな方がやっています」と教えていただきました。

齊藤さんはスポーツ鬼ごっこの日本代表に!「役割としては競技を普及すること。そして日本中、世界中に発信していくことですね」と新たなやりがいを感じています。

箱根路からスポーツ鬼ごっこへ!齊藤さんの新たな挑戦は続きます

また、スポーツ鬼ごっこだけでなく、「日本かくれんぼ協会」にも所属。かくれんぼ世界選手権出場を目指しています。「日本でいうところの『缶けり』みたいな感じです。世界共通のルールがあって、鬼ごっことはまた違うスキルが必要です」と楽しそうに話される斉藤さん。

「箱根駅伝6区にしても、スポーツ鬼ごっこにしても、かくれんぼにしても、少しずつ目標を決めて『ここならいける』という場所を見つけて勝負しています」。自身の能力や現在地を客観的に分析し、レッドオーシャンでの激しい競争を避けて、激戦区ではないブルーオーシャンで自分の椅子を見つけるという斉藤さんの戦略は、アスリートの方にもビジネスをされている方にも参考になることも多いのではないでしょうか。

言語の壁を超えて老若男女が楽しめるスポーツ鬼ごっこを世界に発信されています

鬼ごっこ、かくれんぼをやっていて「ワクワクできるんですよ! 大人がはしゃぐ機会って少ないですよね。大人が真剣に楽しんでいるところをこどもたちにも見せたいです。常に現状維持ではなくて現状打破ですね! 結果を出してこどもたちにも見せていきたいですし、今まで関わってきた方にもお見せしたいですね!」。現状に甘んずることなく常に輝いていたいという齊藤さんは今日も走り続けます!

M高史の陸上まるかじり

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