陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

筑波大で日本選手権800m3位の谷本有紀菜さん 陸上経験を活かし次のステージへ!

中学、高校、大学と全国レベルの活躍を見せた谷本有紀菜さん。現在はアスリートモデルなど幅広く活動されています(写真提供全て本人)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は谷本有紀菜さん(現姓:宮良さん、28)のお話です。田布施中学では800mと1500mで全国制覇。西京高校ではインターハイ800m2位。筑波大学では日本選手権800m3位と中距離の舞台で活躍してきました。現在はアスリートモデルの活動や中学生の指導をされています。

中学2年で全国制覇!

山口県出身の谷本さん。「音楽好きな父の影響で3歳からピアノを習っていましたが、幼稚園の運動会では常に徒競走トップで、小学校に入ってからも持久走大会などでは男子と競るくらい走るのが得意でした。ピアノはやっていましたが、運動する方が好きでしたね(笑)」

中学ではバスケットボール部に入りたかったそうですが「当時の陸上部の顧問に誘われて、高校でバスケやるかぁくらいの軽い気持ちで中学では陸上部に入りました」。1年生の時に400m、800m、1500mといろいろな種目に挑戦。一番結果が良かったのが800mということで、2年生では800mに打ち込みました。

2年生になり、急成長をとげ全日本中学陸上出場を決めました。全中の直前までの自己ベストは2分14秒。「決勝まで行けたら万々歳のつもりでした」と無欲で挑んだ本番では予選、準決勝も通過し、決勝へ。優勝候補だったのは今年の東京五輪で女子マラソン代表となった鈴木亜由子選手(現:日本郵政グループ)。その鈴木選手に最後の直線で競り勝ち、2年生にして大会新記録での優勝を飾ったのです!

「全国の速い選手たちに引っ張ってもらってタイムも2分09秒で走れたんです。憧れだった鈴木亜由子さんが勝つと思われていたレースで、まさかの優勝で、夢なんじゃないかと思いました」。この全国制覇で正式にピアノもやめたとか(笑)。

全中だけではなく、ジュニアオリンピックでも1500mで優勝を飾った谷本さん。「陸上を純粋に楽しんでいた中学時代でしたね」とふりかえりました。

西京高校での3年間

高校は強豪・西京高校へ。高校時代インターハイ800m2位などの実績を残した谷本さんでしたが「陸上に関して伸び悩んだ3年間でした。インターハイでは2番になれたのですが、中学2年のときの記録がなかなか超えられなかったです。『なんで中学の記録が超えられないんだろう』『なんで伸びないんだろう』という気持ちでした」。思い悩むことの多い高校生活となりました。

「高校生になって体も変化するし、今まで順調にいってたのが、ちょっとずつ順調にいかなくなっていましたね。いま思えばもっと自分で考えて練習や生活などの行動をするべきだったかなと思います。当時は受け身な姿勢がかなりありました」。今だったらもっとこういう風にやれるのにな、とも思われるそうです。

また高校3年間は慣れない寮生活。「実家を離れて寮に入っていい経験になりました。寮には陸上部以外に柔道部、テニス部など他の部活の生徒もいました。寮の規則や先輩も厳しくて心が休まらなかったですね。今となっては笑えるくらい挨拶も厳しかったです(笑)。それでも強くなれるいい経験になりましたし」。挨拶・礼儀に関しても徹底的に身についたといいます。

西京高校時代の谷本さん

トラックシーズンは800mに取り組んでいましたが、駅伝シーズンには長距離にも取り組み都大路にも出場。「2区を走りました。ペース配分や走り方がわからなくて、最初飛ばし過ぎて、後半はキツかったですね(笑)」と苦い思い出もありますが、長距離の友達ができたり輪が広がったといういい経験となりました。

大学4年で日本選手権の表彰台に

高校卒業後は筑波大学へ。「(高校までの)寮生活から1人暮らしになってガラッと変わりました。アパートを借りて、自分の身の回りのことは自分でやらなければいけませんでしたが、家に帰ってホッとする時間ができて嬉しかったですね(笑)」と新しい環境にも順応。学業や研究も競技に活かせるという環境で、競技にも集中できました。

2年生の日本インカレでは800mで2位に。「ここまで800mをやったから極めたいという気持ちがありました。800mは短距離っぽい練習と長距離っぽい練習の両方が必要になります。これだけやっておけば大丈夫というのがないので、バランスよく練習する面白さがありますね」

筑波大学時代の谷本さん。インカレでも活躍

谷本さんの場合は「長距離が得意なタイプの中距離選手だったので、その分、スピード練習もしっかりやっていましたね。そうやって分析するのも楽しいです」とご自身の強みや課題を分析しながら練習にも打ち込んで結果につなげていきました。

4年生で迎えた日本選手権800mでは3位に。「最後の日本選手権で決勝に残れて表彰台に上れて良かったです。中学でいい結果が出せたからこそ、もっと頑張りたいという気持ちが強かったです。高校も大学もいろんな思いで競技に打ち込んできたので。本当だったら中学でバスケかピアノやっていたはずなのに(笑)。(中学で陸上を始めた)あの時が始まりだったので」と念願の日本選手権表彰台となりました。

「いろんな知識を吸収して、自分の競技に活かせたと思います。自主性、自分たちで考えて練習、身を持って体験できました」と充実した大学4年間となりました。

ランニングを「楽しむ」こと

大学卒業後はナイキに入社。「少し競技もやったのですが、気持ち的に続かなかったです。その後は一般のランナーさんとランニングをする機会もありました。今までずっと競技として陸上しかやってこなかったので『ランニング=楽しむ』ということがなかなか理解できませんでした。その感覚が抜けなくて……『走る=競う』でしたね」

「走るとマインド的にも健康維持できる」ということで、大学卒業後も走り続けている谷本さんですが「時計をつけて走ろうとすると1km何分ペースって確認してしまうんです。あとは、前回はこれくらいだったから、今回はこれくらいでいかなきゃと。気持ちの方が疲れてしまうんですよね(笑)。特に出る大会があるわけでもないし、リラックスのためにやっているのに」

距離やタイムなど数字に追われすぎているということで「時計をつけずにペースも決めずに陸上用じゃない普通のTシャツを着て走ったり、競技っぽい走りから離れてから、ランニングがまたちょっとずつ楽しくなってきました」とリラックスするためのランニングも身についてきたといいます。

アスリートモデルとしても活動しています(右前が谷本さん)

その後、スポーツジムやオリンピック関連施設の受付のお仕事などもされるほか、地元・山口県で中学生の指導にも携わりました。

「陸上ですごい経験をしてきた人、というと身構えてしまうので、なるべくフランクに話しかけるようにしていました。ちょっとした悩みも話してくれるようになって嬉しかったですね。部活が始まる前とかみんな話しかけてくれて。みんな言ったことを素直に受け入れてくれるんです。『陸上を好きになること』『練習が楽しい』というのは中学の時にすごく大事だと思っています」と未来あふれる後輩たちにも陸上の楽しさを伝えています。

ちなみに、谷本さんは3姉弟。弟・拓巳さんは中央大学で箱根駅伝出場(第91回、第92回いずれも6区)。末っ子・昂士郎さんは現在、大牟田高校1年生で中学時代には都道府県駅伝にも出場されました。今後の活躍にも注目ですね。

谷本さんは現在、アスリートモデルなどのモデル活動、山口県の観光をSNSで発信するなど活動は多岐にわたっています。

大好きなキャンプを通じて、山口県の魅力も発信しています

「陸上競技をずっとやってきていろんな経験ができて、引退後もその経験が活かされてきたことがたくさんあります。失敗したり成功したりしながらいろんなことにチャレンジしていきたいですね!」。いままでの経験を活かして、新しいことや興味を持ったことにも挑戦し、どんどん現状打破されています。

失敗や成功を通じてどんどん新しいことにも挑戦していきたいと話されました

「マラソンをそろそろ走ってみようかなという気持ちが出始めました。楽しみながら走ってみたいなぁと。でも走り始めたらすぐアスリートモードのスイッチが入ってしまいそうですね(笑)」

中学、高校、大学と全国レベルの舞台で活躍してきた谷本さん。陸上経験を活かし、楽しいことに挑戦していく姿はモデル活動、中学生の指導、地元のPRなど様々な活動でもきっと輝いていきますね!

M高史の陸上まるかじり

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