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連載:OL魂

早稲田大学のLT亀井理陽、3度目の正直で甲子園で躍動し目指すは初の頂点

早稲田大学のOL亀井理陽。3回目の「甲子園」を目指す(撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールで悲願の学生日本一を目指す早稲田大学の今季のオフェンスライン(OL)を引っ張るのが3年生の亀井理陽(りょう)だ。早稲田実時代に選抜高校野球大会で、大学1年の時は全日本大学選手権決勝(甲子園ボウル)で阪神甲子園球場の土を踏んだが、まだ、プレーした経験はない。主力として3度目の甲子園に届くか。早大は11月27日に関東大学1部TOP8の優勝決定戦で法政大学と対戦する。

レフトタックルで体張る

「納得はできていません。まだ、ランプレーを出し切れていない」。早大はAブロックを3連勝で終えたが、亀井はまだまだ上を見ている。ここまでオフェンス陣はパスに比べてランでリズムを作れなかった。身長184cm、体重112kg。大学からアメフトをはじめ、昨年から先発になった。レフトタックル(LT)で相手ディフェンスライン(DL)を圧倒するようなライン戦を思い描く。

アメフトをはじめて3年目。まだ、まだ、納得していない(撮影・北川直樹)

兄の影響で野球少年だった。小さいころから体が大きく、さほど強くはない横浜の硬式野球チームで大きな当たりをかっ飛ばし、打撃が好きだった。初等部から早稲田実に通い、高等部に進むと名門の硬式野球部に入った。一つ上に清宮幸太郎(日本ハム)、同期に野村大樹(ソフトバンク)らがいて、「入った時はレベルの差を感じました」。1年生の新チームからベンチ入りメンバーに選ばれた。準優勝した秋の明治神宮大会(2016年)や春の第89回選抜大会(17年)も一塁手や捕手の控えとして経験した。

早稲田実時代。一つ上の清宮幸太郎(右)と背格好が似ており「影武者」と呼ばれた(本人提供)

生きるマネージャー経験

レギュラー争い真っただ中の2年生の春、痛みをこらえながら続けてきた肩とひじが悪化、治るのに1年ほどかかると言われた。捕手目線で周りが見える選手だった。監督から「選手も続けていいから、マネージャーになってほしい」と打診を受けた。2年秋の新チームからマネージャーに専念することにした。記録員としてベンチに入り、相手投手の傾向や打球が飛ぶ可能性がある方向など選手に伝えた。アドバイス通りになって同僚から「たすかった」「ありがとう」と言われるとやりがいを感じた。3年生のチームは甲子園に届かなかったが、「出ていたら、日本一大きなマネージャーと呼ばれたでしょうか」と笑顔で振り返れる。今つけている背番号「55」は、野村がソフトバンクで背負う番号だ。

立派な体格を生かさない手はない。早大の法学部に進み、「野球や放送研究会のサークルなども考えたんですが、見学したアメフト部の雰囲気がずっと頭の中にこびりついていました」。早実野球部から大学ではアメフトに挑戦する先輩もおり、入りやすい環境だった。ルールもわからず、OLやDLをやるうちに、「止めるより、プレーを出していく方が面白かった」とOLを目指した。大学1年の秋、3プレーだったが、公式戦に出場できた。

上級生になりOL陣を引っ張る覚悟(撮影・朝日新聞社)

昨年からスターターになった。「本当にわかったのは2年生からです。ただ、経験が全然ない状態で初めてしっかり出る公式戦で緊張しました」。アメフト未経験者には実戦を積むことが上達への何よりの近道だが、コロナ禍で思うようにならなかった。リーグ戦は出場辞退もあり、チームは3年連続の甲子園ボウル出場を逃した。

父が見た日本一の光景

同じ楕円(だえん)球だが、父の竜二さん(54)は早大ラグビー部の出身。不思議な縁で、早実野球部で理陽の先輩だった清宮幸太郎の父、克幸さんと同期で大学日本一(1990年)を達成している。父はラグビーでスクラムを支えるプロップだった。アメフトのOLも同じように地味だが、チームの勝利には力勝負で負けるわけにはいかない。

「マネージャーもそうだし、縁の下の力持ちが合っているんでしょうか」。亀井はブロックにパスプロテクションと体を張り続けてこつこつとオフェンスの道筋を築いていく。3度目の正直、甲子園で悲願に届けば、父も見た頂点からの景色を見ることができる。

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