駒澤大OB・前田伯さん 社会人でも生きる大八木弘明監督の「先読み・大胆・繊細さ」
今回の「Ｍ高史の陸上まるかじり」は前田伯（つかさ）さんのお話です。鹿児島実業高校で全国高校駅伝に出場。駒澤大学では2年間、選手として競技を続け、3年生からマネージャーに転向し、4年生では副務を務められました。現在は鹿児島県の指宿（いぶすき）市役所に勤めながら、クラブチーム「IBUSUKI.R.B」を設立されたり、指宿ナイターという競技会の運営に携わったりするなど精力的に活動しています。
中学、高校と駅伝で全国大会を経験
鹿児島市出身の前田さん。喜入（きいれ）中学では野球部に所属しながら、特設の陸上部にも所属して大会に出場されていました。正式な陸上部はありませんでしたが、全国中学駅伝に出場。前田さんは2区を走り、全国の強豪選手相手に区間4位と好走しました。「同級生、強い仲間に恵まれました。全国では、その後の競技人生では考えられないくらいうまくいきましたね（笑）」
鹿児島実業高校に入ってから、本格的に陸上を始めました。
「中学では和気藹々（わきあいあい）と走っていましたが、高校では環境も大きく変わりました。いま思うとあっという間ですが、当時は相当長く感じましたね！」
1、2年とけがが多かった前田さん。3年生の時に全国高校駅伝のメンバーに入り7区を走りました（区間18位）。
「テレビで見ていた世界で、これが都大路か！ と興奮しました。アンカーで前を追うだけの展開だったので、がむしゃらに走ったあっという間の5kmでした。この3年間は、この最後のために走っていたのかと思いましたね。けがが多くてつらいこと、思うようにいかないこともありましたが、きっと人生ってこういうものなのかなと成長できた3年間でした」
駒澤大では、3年からマネージャーに転向
高校卒業後は駒澤大学へ。「強い駒澤大学に自分がいけるとは思っていなかったです。寮生活が初めてだったので、どんな感じかドキドキでしたね。練習の距離も伸びましたし、レベルがガンと上がって、なかなか対応できませんでした。当たり前の練習もできなくて試行錯誤していました」
3年生からマネージャーに転向することになった前田さん。「けがも多くて悩んでいました。『走ることで貢献できないのであればマネージャーで』と思いました。サポートの難しさも感じましたが、選手という立場からょっと離れて陸上を見られたことで、陸上がすごく好きになりました」
同級生の高木将希さんが主務を務め、前田さんは4年生の時に副務になりました。「主務とは業務の差が全然違ったので。ただ、そこを見られたことは大きかったです」
大八木監督の練習パートナーも！
前田さんの人柄が伝わってくるエピソードも！「大八木監督がジョグをされる際、練習パートナーとして一緒に走っていました（笑）。一番感じていたのは大八木監督の人柄ですね。あとはストイックなところです！ 走ってサウナへ行ってまた走ってという感じで、追い込んでいらっしゃいました。『まだ俺はお前に負けねんだ！』と負けず嫌いな方でもありました（笑）」
一緒に走っている時は、大八木監督からたくさんのことを学びました。
「大八木監督がおっしゃっていた『気づかい』『先を読んだ行動』などは社会人になっても生きています。さらに大八木監督の情熱とパワー、そして大胆かつ繊細なところもですね。大胆でありながら本当に繊細な部分まで気を使われていました。そして、直感力ですね。すごいタイミングですごいことをひらめかれますし、思いつかれるんですよ！」
夏合宿だったり、距離走を自転車で伴走することだったり。マネージャー時代の夏合宿の思い出は、今でもよみがえってくるそうです。
「自転車のカゴに給水ボトルをたくさん積んで、かなりの距離をこいでいましたね。土曜日は授業の関係で午前中に距離走をする選手と、午後に距離走をする選手がいたので、何十kmも自転車をこいでいましたね」
最後の箱根は往路で、同級生で主将だった井上翔太選手の付き添いをしました。
「最後の最後、井上の付き添いができてよかったです。東洋大学の柏原竜二くんが4年生の時でした。井上は練習でも調子が良かったので『いつも通り』と声をかけました。走り終わって、井上の顔を見た時に決して満足する感じじゃなかったのを覚えていますが、4年間の思いをぶつけてきてくれたんだなと思います」
「また、9区を走った窪田忍君からは『優勝できなかったので、もう1年残ってください。来年勝ちますから！』と言われたのを覚えています。相当悔しかったんだなと感じましたね。振り返ると大学4年間、いろいろな方に出会えました。今に生きるかけがえのないとてつもない4年間だったなと思います。先輩、後輩、同級生は今でも交流がありますし、マネージャーの経験は社会人になった今でも生きています」と熱く過ごした4years.を振り返られました。
指宿から陸上を盛り上げる！
大学卒業後は3年間、鹿児島県警に勤め、その後は指宿市役所に入庁されました。
現在はデジタル戦略課で勤務されています。「指宿市のデジタル化を推進し、市民の皆さんが便利に生活できるよう市役所全体で取り組んでいます。市役所内で多くの職員とコミュニケーションをとり、目標に向かって進んでいくプロセスは、マネージャー時代の経験が生かされています」
市民ランナーとしても走り続け、マラソンで2時間25分33秒をマーク。指宿市役所内に陸上部ができた時は主将を務め、2021年にはクラブチーム「IBUSUKI.R.B」を立ち上げました。昨年は九州実業団駅伝にも出場。鹿児島県下一周駅伝では指宿市代表として毎年、襷（たすき）をつないでいます。
「IBUSUKI.R.Bでは、駒澤大学の先輩の安西秀幸さんが監督を務めてくださっています。安西さんは入れ違いの先輩ですが、卒業後も駒澤大学を拠点に練習されていました。当時からいろいろなお話をさせてもらったり、たまにご飯に連れて行っていただいたり、かわいがっていただきました。安西さんは陸上に対して真面目で、走りの動きや体の使い方を重視する方で、よくアドバイスもいただきました」
また、指宿では「指宿ナイター」という中・長距離の競技会も開催。小学生から社会人まで自己記録更新や目標に向けてチャレンジする舞台を作り、陸上を盛り上げています。
「指宿は自然豊かで気候も温暖です。おいしい食事も温泉もあって、観光としても魅力的です！ ぜひ、たくさんの方に指宿へ遊びに来ていただきたいですね」と笑顔でお話しされる前田さん。指宿を様々な角度から盛り上げるために、今日も現状打破しています！
は全力で学生スポーツを応援します。
