陸上・駅伝

連載:西村菜那子の大学陸上もっと推し活!!!!

前年19位から、箱根駅伝優勝 快挙達成の日本体育大優勝メンバーと西村菜那子が語る

2013年の第89回箱根駅伝で優勝のフィニッシュテープを切る谷永雄一さん(撮影・白井伸洋)

みなさんこんにちは!

突然ですが、みなさんの中で一番記憶に残っている箱根駅伝はどの年でしょうか? 私はメディアでも何度かお話ししたことがあるのですが、2013年の第89回箱根駅伝が最も印象的でした。優勝チームは日本体育大学。往路復路ともに優勝を果たし、圧倒的な強さを見せましたが、前年の第88回箱根駅伝では19位。日本体育大学史上、最も低い順位でした。

その大会直後のミーティングで、翌年度のキャプテンに任命されたのが、当時まだ2年生の服部翔大選手(埼玉栄、現・立正大学陸上部駅伝監督)でした。先輩もいる中でキャプテンを任され、10カ月後の箱根駅伝予選会ではトップ通過。本戦では見事に優勝し、たった1年でチームを立て直しました。

当時のチーム状況や服部選手のキャプテン就任の裏側など、気になることが多くあったため、先日、私がプロデュースしているWEBマガジン「#西村駅伝」のレジェンド対談というコラム企画で、第89回箱根駅伝優勝メンバーの鈴木悠介さん(藤沢翔陵、現・JR職員)、矢野圭吾さん(佐久長聖、現・花王)、服部さんをお招きし、お話を伺うことができました。

今日はその取材での裏話をこちらにもお届けしたいと思います!

「#西村駅伝」でレジェンド対談を企画!その裏側をお伝えします(提供・ILLUMINUS)

箱根惨敗の後「青天の霹靂」だったキャプテン就任

まず取材中に驚いたのは、矢野さんと鈴木さんのスマホに残されたメモでした。取材の内容は事前に送らせていただいたのですが、お2人とも準備万端の状態で挑んでくださいました。ちなみに服部さんはドシっと構えて、まったく緊張されていない様子でした!(笑)。一番緊張しているように感じたのは、矢野さんでした。

まず話題に上がったのは、服部さんのキャプテン就任について。

第88回箱根駅伝の直後、当時監督を務めていた別府健至さん(現・ロジスティード監督)から「来年のキャプテンは服部でいきます」と告げられたそうです。服部さんは「突然の出来事で目が点になった」と当時の心境を振り返りました。

事前の打診もまったくなく、まさに青天の霹靂(へきれき)。一つ上の学年には、埼玉栄高校時代にキャプテンを務めていた先輩がいたため、その中で自分がキャプテンをやる想像はついていなかったそうです。

一方、矢野さんと鈴木さんは「驚いたけど、服部ならできるだろう」と不安視していない様子でした。

服部さんのキャプテン就任や箱根駅伝優勝の背景を深掘りしました(撮影・齋藤大輔)

箱根本戦優勝の自信は「まったくなかった」

その後は箱根予選会に向けて、チームの立て直しを図りました。「予選会をトップ通過する自信はありましたか?」と私が質問すると、矢野さんと鈴木さんは「ありました」と即答。夏場の走り込みも好調で、別府監督からも「トップを目指していく」と実際に言われていたそうで、その覚悟もあったとのことです。

しかし、キャプテンの服部さんは「1位の自信はなかった。4位か5位くらいかと」とお話しされました。当時、服部さんは肉離れを起こしていて、エースでありながらも100%のパフォーマンスを発揮することは難しいと感じていたそうです。

そのため箱根予選会での服部さんの役割は、上位でゴールすることではなく、集団走の牽引(けんいん)役。チームメートを良いペースで引っ張る役割に徹したそうです。

服部さんに頼りすぎることなく、チームは箱根予選会をトップ通過。19位に終わった10カ月前の箱根駅伝より、確実に力をつけていました。

日体大時代の服部選手(撮影・巌本新太郎)

そして、いよいよ箱根駅伝本戦。優勝に向けた自信のほどを伺ったところ、3人とも「まったくなかった」と口にしました。中でも鈴木さんは、「順当にいけば駒澤、東洋、早稲田の次。だけど、チームの調子は悪くないし3位くらいかな」と予想していたそうです。

ただ、4区を終えた時点でチームは2位につけ、復路の9区を任されていた矢野さんは「え、これもしかして服部がトップに出て往路優勝するのではないか」と驚きを隠せませんでした。そして矢野さんの想定通り、往路優勝。自分の役割を果たし、達成感で満ちあふれる往路メンバーの傍ら、復路のメンバーは今まで感じたことがないようなプレッシャーに襲われたそうです。

往路を終えた時点で、寮の雰囲気は「往路組と復路組で真っ二つに分かれていた」と3人ともおっしゃっていました(笑)。

6区の山下りを担った鈴木さんはレース前、緊張するだけでなく、今までに経験したことのない数の報道カメラや中継カメラが自分の周りに集まったため、「僕なんか映さないでください!」と思ってしまうほどの中で、スタートを切ったそうです。

そこからチームは一度も先頭を譲ることなく、9区の矢野さんも10区へ襷(たすき)をつなぎ、総合優勝を成し遂げました。復路組の全員が練習以上の走りを披露し、「まさに先頭効果が出ていた」とパワーを実感されていました。

矢野選手は全国男子駅伝で長野チームの一員として優勝も経験!(撮影・筋野健太)

みなさんにとって印象に残っている大会は?

箱根予選会を通過し、そのまま本戦で優勝を果たした大学は、第73回大会優勝の神奈川大学と第89回大会の日本体育大学だけ。前年19位から1年で優勝をする見事なV字回復を見せた第89回箱根駅伝は、私にとって最も忘れがたく、印象に残っている大会です。箱根駅伝の歴史はこれからも続いていきます。それぞれの世代で様々なドラマを生み出す大会を、これからも楽しみたいと思います。

ぜひ、みなさんが印象に残っている大会も教えてくださいね。

西村菜那子の大学陸上もっと推し活!!!!

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