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連載:OL魂

159cmのOLがいた!! 同志社・光松は小さくても、仲間の信頼は絶大

京大戦のウォータータイムアウトのとき、光松(中央)が声を上げた

球技なのに、基本的にはボールにさわれない。オフェンスを前に進めるため、ただひたすらにぶつかり続ける大男たちがいる。自己犠牲のポジションとも言えるOL(オフェンスライン)の生きざまについて書き尽くす連載「OL魂」。それが今回は大男じゃありません。身長159cm、体重78kg。同志社大学ワイルドローバーの光松達訓(みつまつ・たつのり、4年、南山)だ。日本の各地区のトップリーグに所属する大学のOLでは、最も小さな選手だろう。

いつも最前線にいた主将 神戸大・藤川凌

昨年までRB、人数不足でコンバート

5月25日、この秋2年ぶりに関西学生リーグの1部で戦う同志社は京大との交流戦に臨み、0-3で負けた。この試合、同志社のオフェンスを見ていると、OLの5人の中にひときわ小さな選手を見つけた。左のG(ガード)の63番だ。メンバー表を見ると、彼の身長は159cm。驚いた。いまや180cm、120kgクラスの選手が当たり前のOLに、しかもスターターとして出ているOLに、ここまで小さな男がいるとは……。

彼に注目していると、京大の大きなDL(ディフェンスライン)に当たりにいって逆に押し込まれたり、パスプロテクションを軽々と破られたり。第4クオーターには「フォルススタート」の反則。OLの仲間から「ドンマイ、次いこうぜ」とばかりにヘルメットをポンポンとたたかれていた。「ああ、4回生やけどOLになって間がないんやな」。私はそう思った。一方で必ずプレー終了の笛が鳴り終わるまであきらめずにプレーする姿も、印象的だった。

光松(中央)が相手をしっかりブロックし、RB(左)を走らせる(撮影・篠原大輔)

試合後、光松に声をかけた。4years.ですと言うと、「あ、読んでます」と満面の笑みになった。光松は私の想像通り、新米のOLだった。昨年12月に新チームに移行すると同時にRB(ランニングバック)からOLになった。同志社の昨シーズンのOLのスターターは5人中4人が4回生。彼らが抜けてOLの人数が足りなくなったのがコンバートの理由だった。

スタッフになると告げると、仲間は反対した

OLになる前に、光松は大きな決断をしていた。
「代替わりするときに、新4回生で来年どうするかという話し合いをするんですけど、僕はそこで『スタッフになる』って言ったんです」

名古屋市にある中高一貫の南山(なんざん)中学校でアメフトを始めた。南山高校は部員の少ないチームだった。攻守両面で奮闘して、関西大会のベスト4になった。1年の浪人を経て同志社へ。RBとしてやってきたが、3回生まで公式戦にはまったく出られなかった。裏方になった方がチームの役に立てると思い、光松はスタッフへの転身を申し出た。

同期の仲間たちは言った。「お前は選手を続けた方がええ」と。「ヘルメットをかぶったら、お前は変わる。その瞬間に気合が入って、思いっきりブロックにいってくれる。そういうとこを、もっと出したらええねん。なんで出さへんねん。お前はもっとやれる」と。

同志社オフェンスのハドルブレイク。光松(右端)は頭一つ小さい

うれしかった。そんなことを言われたのは初めてだった。新しい自分を見つけられたような気がした。光松は、うれしかった。

1日5食、早出・居残りも欠かさず

選手を続けることに決めたらすぐ、OLへのポジション変更を告げられた。「信じられなかったし、割とショックでした」。光松は苦笑いで明かす。

12月15日の京大との練習試合には64番をつけてOLのスターターで出場。しかし途中でRBの後輩がけがをすると、急遽RBに入ることになった。チームとして審判に事情を話し、本来はパスを受けられない64番のままRBとしてプレーし、パスキャッチもした。
それでも光松がOLであることに変わりはなかった。

覚悟を決めた。OLとして試合に出られるよう、少しでも大きくなると決めた。今年1月から1日5食にした。入部当時70kgだった体重は78kgに。それと同時に、この小さな体でどんなブロックをすれば、どんなパスプロテクションをすれば通用する可能性があるのか、コーチに聞きまくった。練習が始まる前、と練習が終わったあと、同期の仲間に付き合ってもらって、コーチに教えてもらったブロックとパスプロを実践した。

試合後にコーチの話を聞く光松(右)

5月4日、春の初戦となる立教大戦にOLのスターターとして出た。とにかく緊張した。プレーの前には、目の前のDLが自分から見てどの位置にセットしているのかを仲間に声で伝えないといけないが、緊張でその声が出なかった。春の2試合目の京大戦では多少緊張が和らいだが、セットしてからまだ雑念が入る。
「だから反則もしてしまって……。早く無心でプレーできるようにしないとダメです」

あの日の仲間の言葉が支え

試行錯誤の日々が続き、就活もなかなかに苦戦しているそうだ。つらいときは、あの日の仲間の言葉が支えになる。
「お前はヘルメットをかぶったら変わる。お前はもっとやれる」

最後の秋のシーズンへ向けて、光松は言う。
「一戦必勝を掲げてますので、相手が関学だろうと立命だろうと勝ちにいきます。OLとして、チームにどう役に立てるのかが第一です。できることを全力でやりきります。」
そして最後に、OLになって半年、OLとしての喜びについて尋ねた。
「パスのとき、自分がQBを守れたときが一番うれしいですね。一番のOLの魅力だと思います。秋のシーズンでそれを少しでもたくさん感じられたら、すごく幸せでしょうね」

日本一小さなOLは、仲間の大きな信頼を支えにラストシーズンへと向かう。

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