日本選手権覇者も参戦! 元・東大生箱根ランナー主催「M×Kディスタンス」が熱い
9月11~13日に日本インカレが開催され、学生アスリートのみなさんの熱戦が繰り広げられましたね。今年は例年とスケジュールも準備の過程も大きく変更を余儀なくされて、選手のみなさんもいつもと違うトレーニング環境、スケジュール変更などコンディショニングも難しかったのではないでしょうか。
そんな中、今回の「M高史の駅伝まるかじり」は、アスリートから市民ランナーさんの間でも話題に上がっている「M×Kディスタンスチャレンジ」(通称:M×K)についてのお話です。
東大生として21年ぶりに箱根路を駆けた松本翔さん
9月14日、第35回M×Kディスタンスチャレンジが織田フィールド(代々木公園陸上競技場)で開催されました。平日ということもあり、夕方からのナイター開催でした。この日、僕はMCと実況を務めさせていただきました。帝京大学で日本インカレ5位、全日本大学駅伝、箱根駅伝を走ったランニング×コメディ×YouTuberたむじょーさんも、MCとペースメーカーでご登場!
M×Kディスタンスを主催されているのは松本翔さんです。宮崎県出身の松本さん。中学時代はサッカー部ながら都道府県駅伝の宮崎県代表に。小林高校では10000mで宮崎県高校記録を樹立(当時)。全国高校駅伝(都大路)にも2度出場されました。
全国高校駅伝からセンター試験まで約4週間という過密スケジュールの中、現役で東京大学文科一類に合格。1年生の時に箱根駅伝予選会で好走し、関東学連選抜チームで8区を走りました。この時、東大生としては21年ぶりの箱根路。文武両道ランナーとして注目を浴びました。
大学卒業後は実業団・東京電力で競技を続け、その後は日税ビジネスサービスへ。マラソンでは2時間13分38秒をマーク。Team M×Kの代表として、定期的にM×Kディスタンスを開催されています。また昨年5月からは渋谷区議会議員となり、ご自身も多忙な中で走り続けられています。
「市民ランナーのために」で始まったM×Kディスタンス
第35回を数えた今回のM×Kディスタンス。そもそも開催し始めたきっかけを松本さんにうかがったところ、「現役の選手と市民ランナーの接点がまったくないと思って、練習会からスタートしました。そして、市民ランナーのための公認の競技会を作りたいという思いがありました」
さらにこう続けます。「ホクレンディスタンス、八王子ロングディスタンスのようなイメージです。(公認競技会は)大学の競技会もありますが、タイム順にタイムテーブルが組まれるため、市民ランナーの方はどうしても暑い日中や、朝早くなどの組になることが多いんです。条件の整ったコンディションで 本当の自分の限界の自己ベストを狙える環境を用意したいと思ったのがきっかけでした」。当初は市民ランナーの方がベストコンディションで挑める公認競技会を、というのが始まりだったんですね。
ペースメーカーは現役の大学生や元実業団選手、フルマラソンでも2時間20分を切るような市民ランナーの方が務めるなど、豪華な顔ぶれで安定してペースを刻むことから、人気の競技会です。年々レベルも上がり、とくに今年はコロナ禍により出場できる公認競技会が限られていることもあってか、今大会では市民ランナーさんだけではなく、実業団や大学、高校生のみなさんが参加。箱根予選会出場資格である標準記録突破を目指す大学生も、多数出場しました。
高校は駒大高校、流経大柏高校、鎌倉学園高校など、全国高校駅伝出場経験のある強豪校の姿もありました。今回、M×Kディスタンス初出場となった駒大高校の渡邉聡先生によると、「開催してくださったことに感謝です。すごく雰囲気のいい競技会でした。おかげさまでうちの選手たちも5000mで10人が自己ベストを出せました!」。今回走った高校生のみなさんから近い将来、学生駅伝を走る選手が登場するかもしれないですね。
箱根駅伝予選会のスタート地点に立つために
大学生は箱根駅伝予選会の標準記録(5000m16分30秒以内)を意識した組み分けもされました。ペースメーカーも豪華な顔ぶれ。高校・大学・実業団と日本で活躍し現在は明治学院大学コーチのサイラス・ジュイさん、学生時代は城西大学で箱根2区を走り実業団経験も豊富な河野孝志さん、冒頭でご紹介したたむじょーさんといったみなさんが引っ張ります。
16分30秒のペースメーカーを担当されたのは、フルマラソン2時間23分29秒の自己記録を持つ市民ランナー長江隆行さん(48歳)。「箱根駅伝予選会の参加資格を狙ってのタイム設定でしたので、ペースメーカーとして絶対に失敗が許されないレースでした。聞いたら僕よりも選手の親御さんの方が年下という選手が多かったですね(笑)」
ペースメーカーも例えば16分30秒ですと1000m3分18秒平均になりますが、ずっとそのペースを刻むのではなく、最初の1000mは少し速めに入り(3分15秒)、その後は3分18秒ペースに戻し、最後少しラストスパートでペースアップして16分25秒で走るというもの。「入りが速くなりすぎないこと」「ギリギリだと16分30秒を超えてしまう可能性があるので、16分25秒あたりをイメージ」という細やかなシミュレーションを想定して挑まれていました。
「フィニッシュ後、16分30秒を切った選手は仲間と喜びを分かち合い、切れなかった選手は悔し涙を流していました。悔し泣きしていた選手には、これからの長い人生で勝者になってもらえたらと声をかけて、無事に任務を終えました」。長江さんは独特のプレッシャーを感じながらも、無事にみなさんが走り終えたことで安堵されていました。
激戦となったハイレベルな1500m
5000mと10000mの間に行われた1500mは、全部で3組行われました。2組ではたむじょーさんが400mを59秒、800mを2分02秒、1000m2分34秒でレースを引っ張りました。大学生では帝京平成大学の郡山京梧選手が3分54秒6で1着、2着には関東学院大学の野中拓海選手が3分56秒5で続きました(今大会の計測は手動計時のため、単位は10分の1秒まで)。帝京平成大学と言えば、陸上競技部長距離の藤井重明監督は駒澤大学OBです。また、関東学院大学と言えば、日本選手権優勝経験を持つ岸川朱里コーチのご指導にも注目ですね!
続く1500m3組では、3分40秒台が続出しました! 日本選手権で2度優勝経験のあるサンベルクスの戸田雅稀選手が貫禄を見せ、3分46秒9で1着。2着にはコモディイイダの松村陣之助選手が素晴らしいラストの追い上げで3分47秒7。6着までが3分50秒を突破するハイレベルな熱いレースとなりました。先日、取材させていただいたひらまつ病院の梶原有高選手も3分51秒4で8着となりました。
また、3分50秒4の7着に入った山中優選手(清新JAC)は日本大学の3年生ですが、陸上部ではなくサークルに所属。高校までは野球部で大学から陸上を始めた異色の経歴! 現在は清新JACで小学生・中学生のコーチもされています。先日のセイコーゴールデングランプリ1500mでは、800mまでペースメーカーを務められました。今後の活躍にも大注目ですね!
受付で見られた例年とは大きく違う2つの点
先日、日本陸上競技連盟が発表した「陸上競技活動再開のガイダンス策定のお知らせ」をもとに今大会は開催されました。このガイダンスに従って体調1週間前からの体調を「体調管理表・症状チェック表」に記入し、当日受付に提出します。提出のない場合は参加ができません。
また、受付時にはレースで使用するシューズの確認もありました。シューズの計測があり、厚さ25~40mmのシューズも使用可能でした(記録には厚底の有無TR5を記載)。体調チェックシートとシューズを手に、受付に集まる選手のみなさんということで、いつもとはちょっと違う光景でしたね。
競技会が無事に開催されるということで、参加された選手のみなさんからは「このようなご時世の中、開催していただいたことに感謝」という、走れる喜び、感謝の声があがっていました。今年は練習環境や大会なども限られていますが、それでもみなさんが目標に向けて頑張れるよう、私も応援しています!