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連載:サッカー応援団長・岩政大樹コラム

上武大の監督になり、岩政大樹が学生に感じた「無限の可能性」

岩政さんは監督として、Aチームだけではなく、部全体の空気感を変える行動が必要だと考えている(撮影・山本倫子)

上武大学のサッカー部監督と准教授に就任し、活動がスタートして約1カ月。怒涛(どとう)のような毎日を過ごしています。大学出身といっても私が大学生だったのは、もう20年も前のこと。自分の経験など忘れてしまった方がいいくらい、世代は入れ替わっています。

島で育ち、勝つためのサッカーを悟る 元日本代表・岩政大樹さん1
“何事も一生懸命”を貫き、上武大学のアドバイザーとして新たな一歩を

学生主体で「班」を作る

私はサッカー部ではAチームの監督を担当しています。30人強の学生たちと日々トレーニングに励む中で、日々発見があり、学びがあり、その一つひとつが指導者としての貴重な経験となっています。同時に、私は上武大学サッカー部に加入するにあたり、考えたことがありました。私はAチームだけを見ていればいいわけではない。1年生が入学してくれば200人を超えることになるサッカー部員を全体で巻き込む活動をしていかなければ。

そこで思い当たったのが、「班」を作ることでした。これまでは“選手”という枠組みで“縦”にしか分けられていなかったサッカー部を横断して活動するような「班」を作る。それによりサッカー部全体の空気感を変え、会話を変え、その中からサッカー界に“選手”以外の関わり方でも活躍する学生が生まれ、結果、上武大学サッカー部が強くなっていく。そう考えてみたのです。

しかし、気をつけなければならないことがありました。それを学生たちが主体的に始め、進めなければ意味がない、ということです。私が「やれ!」と言ってやらせるものではない。ただ私は場を与え、環境を設定したら、あとは学生の意思で始められるものでなければ。そこで、私は提案という形で学生たちに話をし、希望を募ってみました。

20年前の記憶よりも、今の学生たちと向き合う

当初は不安でした。誰もこんなこと面倒くさがってやらないのではないか。そうなると、どう部全体をまとめていこうか。しかし、その心配は杞憂(きゆう)に終わりました。今、すでに8個の班が作られ、計30人以上の部員が動き出しています。20年前の自分だったらどうだっただろうと考えると、きっとやらなかったのではないかな。そう考えるとやはり、もう自分の経験など忘れて、今の学生たちと向き合うべきなのだな。そう感じさせられた出来事となりました。

現在、コーチング班、フィジカル班、トレーナー班、メンタル班、サッカー研究・分析班、プロモーション班、レフェリー班、地域貢献班が、それぞれに立ち上がっています。何やら面白そうでしょう? どんな活動をするのか、は全て学生たち次第です。私はただ相談役としてそこにいて、みんながやりたいと思ったことをサポートする役目に徹しています。

岩政さんは監督からの強制力ではなく、学生自身が考えて行動できる部を目指している(撮影・小澤達也)

これから学生たちが色々と始めていくと思いますので、ぜひ注目してやってください。そして、これを読んでくださっている方にもご協力を仰ぐこともあるかもしれませんので、その時はどうかよろしくお願いします。

失敗したらやり直せばいいのだから

上武大学の宣伝のようになってしまいましたが、私がお伝えしたかったのは、今の若者たちの元気です。外向きの好奇心です。そして、そんな元気な若者たちには「無限の可能性があるのだ」ということです。

私も若い頃に似たような言葉を聞いた気がします。「無限の可能性がある」、だから「まずやってみればいい。若者は失敗が許される」。そんな言葉たち。しかし私は若い頃、それがあまりピンときていませんでした。現実的な性格が災いしましたかね。しかし、もう40歳手前のおじさんになって20歳離れた若者たちを見た時に、確かにその「無限の可能性」を感じるのです。「興味を持ったら、まずやってみればいい。失敗したらやり直せばいいのだから」。そう心から言えるのです。

監督業が始まって1カ月。私は私で指導者として成長させてもらいながら、その何倍ものスピードで成長している学生たちに毎日驚かされながら、今このタイミングでこの仕事に出会えて良かった、と感じています。そして、若者たちと接していく中で、40手前のおじさんもまた無限の可能性というものを人生にもう一度見いだしていかないとね、って思い始めています。

サッカー応援団長・岩政大樹コラム

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