バレー

連載: プロが語る4years.

世界でいかに戦うか、175cmのセッターができること 堺ブレイザーズ・関田誠大4

ステージがVリーグに上がってからは、より「世界」を考えるようになった(写真提供・全て堺ブレイザーズ)

今回の連載「プロが語る4years.」は、バレーボール男子日本代表としても活躍するセッターの関田誠大(27)です。2016年に中央大学卒業後、Vリーグのパナソニック・パンサーズに進み、18年より堺ブレイザーズで戦っています。4回連載の最終回は中大卒業後から、東京オリンピックを前にした今についてです。

跳躍力や技術、洞察力で高さを補う

中大を卒業した16年、パナソニックパンサーズに入部するも試合出場機会はなかなか訪れなかった。同年に日本代表へ選出されたが、試合に出て相手との駆け引きや様々な状況を経験することが力になるセッターというポジションにおいて、最も力になるには試合に出ること。新たな活躍の場を求め、関田は18年に堺ブレイザーズに移籍した。

日本代表でも同年イタリアで開催された世界選手権では、屋外コートで行われた地元イタリアとの試合でスタメン出場を果たすなど、大学時代に備えた武器をいかんなく発揮し、堺でも試合出場を重ねる。19年に広島、福岡で開催されたワールドカップでは正セッターの座をつかみ、アタッカーの打点を生かした丁寧なトス、なおかつ様々なバリエーションを加えた攻撃を展開。エースの石川祐希(現・パワーバレーミラノ)や、オポジットの西田有志(現・ジェイテクトSTINGS)の攻撃力の高さを引き出し、8勝3敗で12チーム中4位と好成績を収めた。

相手とネットを挟んで対峙(たいじ)するバレーにおいて、高さが武器になるのは紛れもない事実である中、身長だけを見れば175cmの関田は前衛時にブロックのウィークポイントになると指摘されることも少なくない。実際、セオリー通り攻める相手の大半は、関田が前衛時には関田の前にいるスパイカーにトスを集める傾向が高い。しかしミドルブロッカーのようにブロック時に中央からサイドへ移動を伴うことが少ないセッターは、脚力を生かした跳躍力、ブロックの手の出し方など、高さで補えなくとも技術や体力、筋力、相手に対する洞察力で十分勝負できることもある。

関田も一度ならず数度、顔面に当たるアクシデントもあったが、ワールドカップでブロックポイントをたたき出したのも記憶に新しい。そのポイントにつながったのは、小学校や中学校、高校で培った基礎と、大学でトレーニングを重ねた成果、そして試合に出続けた経験がベースの数々だ。それでもなお、小さいことをウィークポイントとする人がいても構わない。自分が世界でいかに戦うか。その設計図は、関田の中に描かれている。

チームメートを生かし、面白いと思えるプレーで観客を沸かせたい

「どれだけいい選択ができるか。例えばこの状況で相手が『ここは絶対ライトに上がる』と分かっている状況で、そのまま本当にライトへ上げたら、僕の中では失敗だと思っているんです。例えブロックが何枚だろうと、そこで僕はクイックを使いたいし、パイプでもいい。その時、一番いい選択をし続けたいし、それは例え小さくても絶対に可能なことだと思うんです」

劣勢でも挽回してチームを勝たせるセッターに

試合に出れば出るたびに課題が生まれ、映像やデータを見返せば後悔することもある。

「あーこっちに上げちゃった、とか、相手はこう守っていたのにこんなトス回しをしちゃった、とか。むしろそんなことばっかりです(笑)。でも、いかなる状況でもいくら決まるからといって、リーグの試合で外国人選手ばかりに打たせてこの選手が何十本も打ったよ、すごいね、という話を聞いても、面白くないじゃないですか。むしろ一番得点を取った人だけでなく、ミドルが何十本打ったとか、そういうことが話題になる方がずっと面白いし、見ている人も面白いと思うんです。だから僕は、そこは妥協せず貫きたいです」

1年延期になった東京オリンピックも今夏開催される予定で、代表選考を兼ねた合宿がすでにスタート。大会会場となる有明アリーナでのテストマッチとなる中国戦(5月1、2日)に連勝し、合宿や国際試合を経て東京オリンピックに出場する12人が発表される。誰がその場に立つか。ふたを開けてみなければ分からない。だが、その場所へ立つために何をすべきか。それは十分、分かっているつもりだ。

「世界で戦えるセッターになるためには、精度やトス回し、ミスが許されない場面や状況でこそ安定したプレーが求められる。劣勢でも挽回(ばんかい)してチームを勝たせる。そういうセッターになりたいです」

「従うだけの人間にはなりたくない」

石川や柳田将洋(現・サントリーサンバーズ)、福澤達哉(現・パリ・バレー)など、ともに戦ってきたメンバーが海外で経験を重ね、日本代表もより多くの経験、厚みが加わった。19年のワールドカップのように日本代表として強みを発揮する。そんな戦い方ができれば、例え険しくとも、いかなる世界であってもきっと道は開ける。そんな期待が高まる一方、甘い世界でないことも経験を重ねれば重ねるだけ、嫌というほど突きつけられる。

「プレッシャーが当たり前の世界。でも、どんな場所でも大事なのは、自分が何をしたいか、ですよね。やっぱり勝たないと面白くないし、そのためにはミスした、決まった、という結果に関係なく、プレーや発言でチームにその都度示すべきだと思うんです。例えば、トス回しでも監督からは『どうしてここを使わないんだ』と言われたとしても、自分はそう思わなかったのなら『俺はクイックを使いたいんだ』と言うし、そこは貫きたい。言われたことをやるだけ、従うだけの人間にはなりたくないですよね」

人からの意見も大事。それでも自分の芯となる部分は決して曲げない

振り返れば、これまで歩んできた道もそうだった。ここまでやるか、と思うほど厳しい中でボールを追いかけた小中学生の頃。そして自由な中にも勝つためのセオリーを考えた高校時代、そこから一段階、新たな発想と経験、結果をつかんだ大学時代。そして今に至るまで、変わらない。

例えぶつかっても主張し、自分が信じた道をいく。

「世界で戦うだけじゃなく、世界で活躍できるセッターになりたい。どんな場面でも貫いて、結果を残したいです」

一つひとつ着実に。目指す場所へとつながる階段を上り続けていくだけだ。

プロが語る4years.

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