ENEOS・林咲希3 白鷗大ラストイヤー、関東6位から「団結力」でインカレ初優勝
今回の連載「プロが語る4years.」は、バスケットボール女子日本代表としても活躍する林咲希(26)です。大学時代は白鷗大学でプレーし、2017年に卒業してからはWリーグのENEOSサンフラワーズに所属しています。4回連載の3回目は学生生活最後のシーズンについてです。
まさかの関東6位発進、4年生がチームを立て直す
シーズンは春の関東大学選手権で幕を開ける。林が加入してからの白鷗大は、過去3年間で優勝、3位、3位といずれも上位の成績を収めていた。だが、最終学年を迎えたこの年は無念の6位。日本体育大学に敗戦し、上位4チームで争う決勝リーグに進むことすらできなかった。
敗因の1つには、大会直前まで林が代表活動の合宿に参加していて、チームへの合流が遅れたことが挙げられる。しかし林は「連携だけじゃなくて、気持ちも全くかみ合ってなかった」と、敗因はそれだけではなかったと認める。このままではまずい。そんな暗雲が立ち込めた中、チームはすぐにアクションを起こした。「負けたその日に4年生だけで話し合って、これからはこうしていこう、ああしていこうと本音で語り合いましたね」
当時の4年生は決して多くはなかった。選手は林を含めて4人、マネージャーは2人で計6人。その日から今まで以上に結束が深まり、練習では4年生一人ひとりが「勝つためにできること」に取り組み、後輩たちの手本となり、チーム全員で厳しい練習を乗り越えた。
「練習はキツかったです。走るチームなのでもちろんラントレはありますし、走る系のシュート練習もノルマ120本とかありました。それが4分以内に入らなかったら、シャトルランをやったり。シュートが入るまで練習するので、終わらなかったら延々と繰り返すという感じでした」
小学生の頃から走ることが好きな林でさえも、大学時代の練習は相当つらかったようだ。それでも、リーグ戦では3年連続となる2位で終え、林を擁する白鷗大は初の日本一をかけ最後のインカレに挑んだ。
ラストチャンスで初の日本一
トーナメントを勝ち上がっていった過程で、昨年の決勝で惜しくも敗れた筑波大学へのリベンジも果たし、3年連続でインカレ決勝の舞台へ。過去2年間はここで涙をのんできた。今回の相手は春の選手権で連覇を達成し、リーグ戦3位の東京医療保健大学。立ち上がりから両者譲らず、第3クオーターを終えて54-53と試合は拮抗(きっこう)した。しかし、白鷗大は最後の10分間で19-9と一歩抜け出し、3度目の正直で大学バスケの頂点に立った。
チームとしても初のインカレ制覇を成し遂げたこの試合、林はチーム最多タイの16得点をあげ、他の4選手も2ケタ得点をマーク。最終第4クオーターでの守備も光り、まさにチームバスケでつかんだ日本一と言える。そんな中、今大会の得点王(平均20.6得点)、そして最優秀選手賞に輝いたのは、やはり頼れるエース・林だった。
「4年生があの6人で良かったなと思っています。マネージャーも2人いてくれて本当に助かりましたし、選手もそれぞれ個性があるんですけど、勝ちたいという気持ちはみんな同じでした。4年生になると、教育実習で練習にいない時とかあるじゃないですか。その時に4年生が2人とか1人になっても勝つために何ができるかを考えて、残ってるメンバーだけで頑張ろうと励まし合いながらやってましたし、自分自身も結構周りに厳しく言ってましたけど、それが良かったのかなと思います」
大学で学んだ2つのこと
林が大学4年間のバスケ生活と日本一を成し遂げた経験から学んだこと、それは「チーム力と4年生の団結力の重要性」だ。
「大学生は高校生と違って自由度もありますし、いろんなチームからいろんな選手が集まってくるので、チーム力が重要だと思います。そのためにはやっぱり4年生の団結力が必要で、4年生の本気度で後輩たちがついてくるかどうかが変わりますね。それに対して1年生から3年生は自分のプレーを全力でやり抜くことが大事だと思っていて、勝ったり負けたりいろんな経験がありますけど、そこで一個ずつ学んで次に生かすことを心がけた方がうまくいくのかなと思います」
また、大学では教育学部のスポーツ健康学科を専攻していた林は、勉強面においてもためになったと主張する。「栄養学とかスポーツ運動学とか、自分の体に関することも学びました。大学時代に食事の管理、体のケアも自分で考えてやっていたのは、今振り返っても本当に良かったと思ってます」
体や食事、時には金銭面などを自分たちで管理しながら切磋琢磨(せっさたくま)し合った白鷗大での日々は、高卒でWリーグに進むのとはまた違った良さがあったのではと、林は自らの経験を踏まえて述べる。そして林は、日本一という最高の結果を置き土産に、白鷗大学を卒業。次なるキャリアは、ENEOSサンフラワーズへの加入を決断した。更なる成長を求めて。