陸上・駅伝

連載:西村菜那子の大学陸上もっと推し活!!!!

特集:第100回箱根駅伝

有力選手のエントリー漏れに驚き、シード権争いに注目! 西村菜那子の箱根駅伝ガイド

今年の関東インカレに出場した駒澤大の唐澤選手(左、撮影・藤井みさ)と世田谷ハーフ優勝の青山学院大・鳥井選手(撮影・井上翔太)

みなさんこんにちは!

まもなく大学駅伝の頂上決戦、箱根駅伝がスタートします。今回は100回目の記念大会のため、10月の箱根予選会には全国から参加が可能となり、多くの大学が東京都立川市に集結しました。前回大会でシード権を獲得している上位10校と予選会を通過した13校、例年より3校多い23チームが箱根路を駆け抜けます。

12月11日には各チームのエントリーメンバー16人が発表されました。全体的に、有力ランナーが順当にエントリーされている印象ですが、中には少し意外な選手のエントリー漏れも見受けられました。

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唐澤拓海選手が秘める「カリスマ性」最後まで

駒澤大学では唐澤拓海選手(4年、花咲徳栄)が16人から外れました。唐澤選手は高校2年のときに春の高校伊那駅伝で3区区間賞を獲得。トラックでも、3年時にインターハイ埼玉県大会で男子5000m14分18秒07をマークし、大会記録を32年ぶりに更新して初優勝を飾るなど、高校時代から華々しい結果を残していきました。

大学に入ってからも、2年生のときには箱根駅伝で1区区間2位と好成績を収めています。

2年生の箱根駅伝は1区2位で走り、田澤廉選手へ襷リレー(撮影・北川直樹)

その後、不調が続き走れない日々が続いていましたが、最終学年になった今年は4月に行われた第1回NITTAIDAI Challenge Games 男子10000mで27分57秒52をマークし、自身初の27分台をたたき出すなど、見事に復活した姿を見せてくれました。

唐澤選手はチームの雰囲気、その場の空気をガラッと変えるカリスマ性を秘めた選手だと思っています。

申し分ないスピードも兼ね備えているが故に、エントリー漏れは非常に寂しい気持ちが募ります。エントリーが発表された日は「唐澤くん」がX(旧・Twitter)でトレンド入りしていました。それくらい唐澤選手には、周囲を引きつけ、多くの方が応援したくなる魅力があるのです。

最後の箱根路を駆け抜ける姿は見られませんでしたが、絶対王者・駒澤大学の一員として、チームに在籍する唐澤選手を最後まで応援していきたいです。

鳥井健太選手は今後、青学のキーマンに

私がエントリー漏れで一番驚いたのは、青山学院大学の鳥井健太選手(1年、清風)でした。

今年の夏合宿では1年生の中で唯一、全メニューを消化した選手で、監督からの期待も厚く、その後の出雲駅伝では唯一1年生で出走を果たしました。続く全日本大学駅伝では補員となったものの、11月に行われた世田谷246ハーフマラソンでは、錚々(そうそう)たる選手たちを抜き去り、見事に優勝。箱根駅伝メンバー入りを確固たるものにしたと思いきや、今回の16人から外れていました。

駒澤大学同様に、層の厚い青山学院大学ではメンバー争いが非常に熾烈(しれつ)です。まだ1年生の鳥井選手。悔しさをバネに、これからの青山学院大学のキーマンになることを信じて、応援していきたいと思います。

鳥井選手が今後チームのキーマンになることを信じています(撮影・井上翔太)

シード権争い、注目株の大東文化大学

みなさんは、来年の箱根駅伝でどのような展開を予想されていますか?

駒澤大学が優勝と予想されている方も多いかと思います。今年もありがたいことに多くのスポーツメディアから箱根駅伝に関する取材を受けましたが、私も、優勝予想は駒澤大学とお話しさせていただきました。

今の駒澤大学は誰が見ても圧倒的な実力だと思います。

もちろん、優勝争いも箱根駅伝の見どころですが、個人的に注目しているのはシード権争いです。今回の箱根駅伝では例年以上に激戦必至のシード権争いが繰り広げられることと予想しています。

まず注目株は大東文化大学。箱根駅伝予選会では2年連続でトップ通過を果たしました。全日本大学駅伝では7位入賞を果たし、18年ぶりにシード権を獲得するなど今季確実に頭角を現したチームの一つ。 就任2年目の真名子圭監督の指導のもと、より一層強さを増してきています。

10000m28分台は16人中9人。今年の全日本6区で区間2位のピーター・ワンジル選手(3年、仙台育英)だけでなく、日本人選手も活躍しています。

箱根駅伝シード獲得となれば9年ぶり。今年の大東文化大学はシード争いの台風の目になってくれるのではないかと期待しています。

大東文化大で10000mのタイムが最も速い久保田選手(撮影・佐伯航平)

東洋大学「鉄紺の意地」に期待

もう一つ、注目が集まっているのは東洋大学。箱根駅伝常連組の東洋大学はなんと18年連続でシード権を獲得中。これは今回出場チームの中で最多記録。どんな境遇でも強さを見せている東洋大学ですが、今年は試練の年となりました。

昨年度の箱根駅伝では出走した10人中、5人が4年生で、5区の山登りを託されたチームの精神的柱、前田義弘選手(現・黒崎播磨)や8区で区間賞を取った木本大地選手(セキノ興産)など、チームを救った4年生が卒業し、戦力がガラッと変わりました。

その中で、1年生の頃から活躍している松山和希選手(4年、学法石川)や石田洸介選手(3年、東農大二)など、3大駅伝を経験している選手が不調。今年の全日本大学駅伝では14位と苦しい状況が続いています。

箱根駅伝ももしかしたら厳しい展開が待ち受けているかもしれません。

しかし、11月に行われた上尾シティハーフマラソンでは6人が自己ベスト、中でも4年生の奥山輝選手(浦和実業学園)、九嶋恵舜選手(小林)といった、上級生の活躍が見受けられました。

長く大学陸上界を牽引(けんいん)してきた東洋大学が19年連続のシード権獲得となるのか、鉄紺の意地と活躍に今年も注目が集まります。

東洋大の奥山選手。「鉄紺の意地」に期待です!(撮影・佐伯航平)

箱根駅伝が近づくと、センチメンタルな気持ちに

私は箱根駅伝が近くなると、楽しみな気持ちはもちろんですが、「4年生がこのユニホームを着て走る姿を見られるのはもうこれが最後かもしれない」と少しセンチメンタルな気持ちにもなります。

順天堂大学の三浦龍司選手(4年、洛南)や、中央大学の吉居大和選手(4年、仙台育英)、駒澤大学の鈴木芽吹選手(4年、佐久長聖)など、特にスター選手が多い学年だと思います。みなさん1年生の頃から大学を背負って活躍されていたため、私は例年以上に卒業を寂しく感じています。

4年間、大学で陸上を続けた選手の皆さんが、それぞれの気持ちを箱根路に乗せて駆け抜けられるように。部員全員、悔いのないパフォーマンスができることを陰ながら応援して、祈っています。

箱根駅伝が近くなると、少しセンチメンタルな気持ちになります(撮影・齋藤大輔)

1月2日、3日を楽しみにしています。

今年もコラムを読んでくださった皆様ありがとうございました!

西村菜那子の大学陸上もっと推し活!!!!

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