陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

連載300回記念、駒大主務対談! 並木大介さんが見た主将の姿、運営管理車の声かけ

連載300回を記念して、今回は「駒大主務対談」です!(撮影・M高史)

今回の「M高史の陸上まるかじり」は駒澤大学で3年間、主務を務めあげた並木大介さん(4年、大多喜)に取材させていただきました。

この連載が300回目ということで、今回は「駒大主務OB現役対談」という形でお送りいたします。2022年度から2024年度の3年間、主務をされた並木さん。お相手は2005年度、2006年度に主務をさせていただいた私、M高史です!

ちなみに並木さんが主務だった時期の3大駅伝の成績は以下の通りです。

2年 出雲優勝 全日本優勝 箱根総合優勝
3年 出雲優勝 全日本優勝 箱根総合2位
4年 出雲2位 全日本2位 箱根総合2位(復路優勝)

なんと、3大駅伝で優勝か2位しか経験していないのです!

並木さんが1、2年生の時は大八木弘明監督、藤田敦史ヘッドコーチ体制。3、4年生で大八木総監督、藤田監督体制になっています。対談内で監督という文言が出てきますが、2年生の話は大八木監督、3年生以降は藤田監督を指しています。

長いようで、あっという間だった4年間

M高史(以下、M):まずは4年間お疲れ様でした!

並木大介さん(以下、並木):ありがとうございました。気づいたら長いようで意外と早くてあっという間だったのと、あとは想像以上に濃い4年間でした。

M:並木さんは入学時からマネージャーでしたが、大学からマネージャーを志した経緯を教えてください。

並木:高校まで競技をやっていましたが、駅伝が好きで、強い大学で4年間やりたいと思っていました。マネージャーという形でも挑戦したいと思ったんです。

M:駒澤大学に入った時の印象はいかがでしたか?

並木:やっぱりイメージ以上にメリハリがあって、「もう1回覚悟を決めないと」と率直に思いました。覚悟して入ったつもりでしたが、改めてもっと引き締めないといけないなと思いました。大八木総監督、藤田監督はテレビで見る以上に普段の生活では笑う人だなと(笑)。テレビで箱根を見ていて、ずっとああいう感じではなく、普段のギャップを見てホッとしました(笑)。

M:1年生の時はサブマネージャーで、2年生から主務になったんですよね。僕は3年、4年と主務をさせていただいて、もうこれ以上はないくらいおなかいっぱいでしたが……(笑)。2年生からなんて信じられないです!

並木:1年目から選手と同じ寮で生活して、主に練習のサポート、記録会、合宿の準備などをしていました。1年目はがむしゃらに覚えるしかないと思って、やった上で来年につなげられるようにと思っていました。2年生の7月終わりに大八木監督から「明日からお前がやってほしい」と言われて、2年生の8月1日から主務になりました。

M:大八木監督から指名されるということは、きっと並木さんの普段の行動などを見ていてくださったんでしょうね。でも、2年生で主務ということは、先輩に3年生も4年生もいるわけですよね? そのあたりの難しさはありましたか?

並木:いきなり取りまとめる立場になりましたが、皆さん協力的でありがたかったです。急に変えても混乱すると思ったので、とりあえず基盤のままの上で、もしやりづらいことがあれば変えていけばいいかなという感覚で、考え込みすぎずにやっていきました。

4年間、苦楽を共にした同級生と!並木さんは後列右から3番目(本人提供)

主務の立場から見た主将たちの姿

M:主務1年目となった2年生の駅伝シーズンに「三冠」を達成したわけですが、いま振り返るといかがでしたか?

並木:実は8月の全体の夏合宿は、チーム状況が厳しかったんですよ!

M:そこからよく三冠しましたね!

並木:大八木監督から「マネージャーがしっかりしないと勝てるものも勝てない」と言われていました。夏はチーム状況が厳しかったのですが、9月の選抜合宿でみんなグッと上がってきたんです。感覚的にそろった感じがありましたし、出雲駅伝のエントリーを提出して、監督会議の時にオーダー表を見た時は自信がありました。

M:出雲駅伝は駒澤大学にとっても久しぶり(9年ぶり)の優勝でしたね!

並木:当時の主将だった山野力さん(現・九電工)が「ここを落とすと三冠がなくなるから」「ここを取ったチームしか三冠は取れない」「うちの目標としてはここを落としちゃいけない」とみんなの士気を上げることを言ってくれていました。

M:山野主将は「三冠」ってずっと言ってたみたいですもんね。そういえば、主務と主将の関係性は、3年間いかがでしたか? 2年生の時が山野力選手、3年生の時が鈴木芽吹選手(現・トヨタ自動車)、4年生の時が同級生の篠原倖太朗選手(4年、富里)がそれぞれ主将でしたね。

並木:みんな性格が素直で、それぞれ面白さ、親しみやすさが前面に出ていて、楽しくやらせてもらいました。山野さんはネガティブになりやすいので(笑)。周りの4年生も間に入ってもらって話をしていました。芽吹さんは1個上で面白いキャラの先輩でした。篠原も同級生なので変に気を使いすぎず、でも時には気を使うといった感じでした。

M:どういった時に気を使う感じでしたか?

並木:レースは特にですが、取材の時とかですね。普通の生活で気を使いすぎないように、気を使いすぎると硬くなって同級生っぽくなくなってしまうので。

今年の箱根駅伝2区・篠原倖太朗選手の走りを運営管理車から見守る並木大介さん(本人提供)

箱根駅伝の運営管理車から見た選手たちの背中

M:僕も学生時代に乗らせていただきましたが、箱根駅伝の運営管理車はいかがでしたか? 並木さんは全部で3回乗ったんですよね?

並木:運営管理車は楽しかったですね。3年生の時は抜かれたこともあったので、楽しいというより悔しいこともありましたが……。なかなかあの特等席で、箱根に携われることはないので良い経験でした。

M:運営管理車の中では、どんなことをしていましたか?

並木:2年生の時は初めてだったので後部座席でストップウォッチを押したり、メモしたり、落ち着かないところがありました。4年生の時はもう慣れましたね(笑)。

M:運営管理車では1kmごととか、重要なポイントで通過タイムを計測しますけど、車に乗りながら距離はわかります?(笑)

並木:今は「あまこま(あまりに細かすぎる箱根駅伝)」があるので詳しくわかるんです(笑)。GPSサイトもあって確認もしますが、目安にしかならないので、だいたい「あまこま」で確認してますね。EKIDEN Newsの西本さんに感謝です(笑)。

M:「あまこま」は最強ですよね! 僕の学生時代にもあったらなぁ(笑)。あとは運営管理車といえば声かけですよね。今ってどれくらい声をかけられるんですか?

並木:マイクは1km、3km、5km、10km、15kmで、終盤は距離によっても変わりますが、20kmだったり、ラスト1km だったり、区間によって変わります。

M:駒澤大学では歴代、主務も10区の最後に声をかけさせてもらっていると思います。僕の時もそうだったんですけど、並木さんも声かけしたんですか?

並木:2年生が10区の最後、3年生も10区の最後で、4年の時は2区の後半、5区の鳥居、復路は全区間ですね。後半の地点で一言、声をかけさせていただきました。1分間の中で藤田監督が話した後の一言です。

M:そんなにたくさん声かけさせてもらったんですね!

並木:4年生ということもあってか、藤田監督からスタート前に「今回はお前にマイクをいっぱい渡すから」と言っていただいたんです。

M:熱いですね!! どんな声をかけたか覚えていますか?

並木:2区の篠原は上りが得意ではなかったのでキツかったと思うのですが、エースなので「田澤さんとか芽吹さんとか、エースはここを乗り越えてきたんだぞ!」というようなことを言った記憶があります。7区の(佐藤)圭汰は安心して見ていました。「3年間ありがとうな~! 見てきた中で一番かっこいいぞ!」って言いました。

M:3年間、運営管理車に乗った中でいろんな選手を見てきたと思いますが、特に一番印象に残っている選手、あるいはシーンってありますか?

並木:「三冠」した時、大八木監督が2区の田澤(廉)さん(現・トヨタ自動車)に最後の坂でかけた声ですね。あの時だけは、同じ車両にいるのに「監督と田澤さんの間の劇場」をずっと見ていた感覚でした。まるで触れないくらいのバリアがあるような空間でした。周りは大歓声なのに、いったんシャットダウンされるような、周りの歓声が一瞬小さくなって、ドラマみたいでした。監督が一方的に声をかけているのに、2人が通じ合っているように見えました。監督が「信じてるから!」と田澤さんに声をかけたのですが、田澤さんはコロナ明けで本調子ではない中「自分が行くしかない」と2区を走られました。終わってから映像で見ると、「前から見たらこんな感じだったんだ」と思いましたね。

2023年の第99回箱根駅伝2区を走る田澤廉選手、並木さんは後方の運営管理車にいました(撮影・藤井みさ)

M:運営管理車からの貴重なお話、ありがとうございます。確かに運営管理車からだと、ずっと選手の後ろ姿を見続ける形になりますもんね。選手たちの背中から感じるものはありましたか?

並木:箱根を走った選手たちは、走るべくして走ったと思います。信頼して起用されていますし、前を追う姿勢や諦めないぞという駒澤らしさが伝わってきました。あれが駒澤の魅力なのかなと感じました。

人間的に成長、鍛えていただいた

M:あらためて、この4年間を振り返るといかがでしたか?

並木:やっぱり人間的に成長させていただきましたし、鍛えていただきました。

M:大八木総監督や藤田監督へお伝えしたいことはありますか?

並木:総監督、監督に愛情を持って育てていただいたので本当に感謝しかないですし、恩返ししたいです。自分も陸上への情熱は強いと思いますが、お二人の情熱には勝てないですね(笑)。コーチ時代の髙林(祐介)さんにもお世話になりました。大学は違いますが恩返しできればなと思っています。

M:立教大学も躍進していますよね! あとは並木さんのご家族に僕もお会いしたことがありますが、ご家族の応援はいかがでしたか?

並木:家族はずっと応援してくれてありがたかったです。自分のこれまでの決断、選択についても決めたことに対して否定せず、支えてもらえていました。あとは親も陸上好きですね(笑)。

M:社会人になっても並木さんのご活躍、応援しています!現状打破!

M高史の陸上まるかじり

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