ラグビー

明治大・高橋汰地、必殺のサインプレーでトライ ディフェンスでも攻撃的に「前へ」

サインプレーからトライを挙げる明治WTB高橋 (撮影・谷本結利)

大学選手権決勝

1月12日@東京・秩父宮

明治大(関東対抗戦Aグループ3位=4位扱い)22-17 天理大(関西Aリーグ1位)

大学選手権の決勝は熱戦になった。昨年度は1点差で準優勝だった明治大と、初優勝を狙った天理大が対戦。明治が天理の終盤の追い上げを振り切り、1996年度以来22シーズンぶり13度目の優勝を飾った。

試合前から4年生の目に涙

試合開始直前のピッチ上。明治の4年生の選手たちはキャプテンのSH福田健太(4年、茗渓学園)を筆頭に、校歌を歌いながら泣いていた。アナリストの喜多川俵多(ひょうた、4年、六甲学院)が作成したモチベーションビデオを控室で見て、感極まっていたのだ。ビデオには「日本一のBチームと練習しているから、日本一になってほしい」というメンバー外の4年生の言葉があった。選手たちは彼らに送られてピッチに出ていった。

試合が始まってすぐ先制されるが、あわてない。「天理の外国人は特別に意識はしないです。いつも通りにやります」。福田キャプテンが言っていたとおり、2人でしっかり倒しきるディフェンスが機能した。アタックでは、天理の前に出るディフェンスに対し、内に戻すショートパスでゲインを繰り返した。喜多川らのアナリストが天理の全試合を分析し、コーチ陣とともに効果的な動きをプレーに落とし込んだ。

そして前半22分、天理戦のために用意した「タンク・エックス」というサインプレーが見事に決まる。モールを少し押しこんでから、SH福田が持ち出して、それと同時に内側1人、外側2人が一斉に走り込む。内へ走り込んだWTB高橋汰地(4年、常翔学園)へ、SH福田からクロスのパス。天理のディフェンスを振り回し、フリーになった高橋が走り込んでトライ。12-5と突き放した。

高橋は「気持ちよかったです。FWが頑張ってくれて、相手のスペースを見つけることができた。あそこが空いているという情報があったので、しっかりそこを突けた。アナリストの喜多川が海外の映像を見て、いろいろ考えてくれたサインプレーでした」と振り返った。

校歌を歌いながら涙を流す明治キャプテンの福田 (撮影・谷本結利)

田中監督、問い直した「前へ」

明治の田中澄憲監督は、関東大学対抗戦の早明戦に負けたあと、いつもは寮のリーダー陣の部屋に飾ってある故北島忠治元監督の写真を選手たちに見せ、「誰だか知ってるか?」「有名な言葉は?」と問いかけ、選手それぞれに「前へ」という言葉について考えさせた。

高橋は言う。「ディフェンスでも攻撃的に『前へ』を意識してやりました。2人でしとめられたので、テンポが出てきたと思います」。大学選手権の戦いが始まる直前、4年生は21名全員で八幡山駅の近くにある中華料理「味仙」で食事をし、温泉施設「成城の湯」に行って結束力を高めていた。

明治は今年度、副将のポストをなくし、福田キャプテンの下に8人のリーダーを置いた。1年生から公式戦に出場し、2年生からバックスリーの一角として活躍してきた高橋もそのひとり。BKリーダーになった。

4年生同士で議論する中で「リーダーグループの選手の調子が悪いときに、チームの調子が落ちてる。リーダーグループだけじゃなく、4年生全員がリーダーになり、4年生全員で引っ張ろう」と決めたという。「リーダーのひとりとして、自分が何とかしなくてはと思ってたんですけど、誰がボールを持っても安心できる。だから楽しんでラグビーをしよう」と、高橋は吹っ切れたという。

「もともと好きだった」というフィジカルトレーニングも毎日のように取り組み、あらゆるトレーニングの数値が伸びた。たとえば3年のときにベンチプレスは150kgだったが、現在では165kgとFWの選手にも負けない数字となった。大学選手権に入ってから自分のプレーに集中することができ、さらに日々の努力の積み重ねがあったから、準決勝の早稲田戦の80mゲインや決勝でのトライに結びついたというわけだ。

明治は後半も天理にラインアウトや接点でプレッシャーを与え続け、試合を優勢に進めた。最後の天理のアタックも守り切って大学王者に輝いた。

田中監督は選手たちに胴上げされて、宙を舞った。見事に今シーズンのスローガン「エクシード(超える)」を体現した。「日本一になってキヨさん(田中監督)を胴上げする」という4年生たちの思いが結実した瞬間だった。

優勝を決め、喜ぶ明大フィフティーン (撮影・谷本結利)

WTB高橋は伏見工業高(現・京都工学院高)、神戸製鋼でWTBとしてプレーした晃仁さんを父に持つ。そして5歳のとき、兵庫県ラグビースクールで競技を始めた。「明治が前回優勝したのは自分たちが生まれた年(1996年度)でした。それ以来の優勝なんで、うれしいです」と喜びを爆発させた。

好きな言葉は、高校時代の恩師である常翔学園(大阪)の野上友一監督がいつも言っていた「人の振り見て我が振りなおせ」。来春からはキャプテンの福田とともにトヨタ自動車でプレーする。「トップリーグでも、1年目から先輩たちに負けないようにアピールしていきたい」。大学日本一を達成した自信が高橋の背骨となり、飛躍していくことだろう。

高橋はインタビューに答え、大きな歓声を浴びた (撮影・谷本結利)

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