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連載:サッカー応援団長・岩政大樹コラム

上武大・岩政大樹監督「今の選択が未来をつくる」、けが人ゼロを支えたトレーナー班

岩政さんは今年1月に上武大学サッカー部の監督に就任後、学生の主体性を育てるべく、班活動を提案した(撮影・全て松永早弥香)

先日うれしいことがありました。私が指導している上武大学サッカー部のトップチームで、一時的ですが、けが人が0人になったことです。サッカーは接触が多く、運動量やスピードも求められるスポーツ。けがはつきものです。通常、30人以上の選手を抱えていれば、そのうち何人かはけがで離脱している選手がいるものなのですが、先日ついに0人になったのです。

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今年1月に始まった班活動の成果

うれしかったのは、単にけが人がいなくなったという事実だけではありません。今年新たに作った学生主体の班の活躍により、それを成し遂げたことに意味があったのです。

今年サッカー部でいくつか作られた班の中のひとつに、「トレーナー班」というものがあります。元々、上武大学には柔道整復師コースがあることもあり、トレーナーに興味のある学生たちは少なくなく、彼らに現場にどんどん入ってもらっています。プロのトレーナーさんに指導を仰ぎながらではあるものの、実際にリハビリにもどんどん参加してもらい、報告をあげてもらいながら、現場でトライ&エラーを経験してもらうべく、関わってもらっているのです。

サッカーチームでは、けがの回復を待ってトレーニングをさせていたら、復帰が遅くなります。回復と復帰へのリハビリを同時進行でしながら、最短での合流を目指します。そのためには、けががどの程度まで回復したら次の段階に進み、その評価をどう行って段階を進めていくべきか。それを現場の生の選手たちを相手に、目で見て、手を動かし、足を動かしながら実践知を積み重ねてもらっています。

学生たちが自分で考えて行動し、それが成果につながり、学生たちの自信にもなっている

そのひとつの結果として、ようやくけが人ゼロを達成したわけですが、その前もチーム全体でけがは接触による足首の捻挫に限られており、成果は出始めていたのです。こうして学生のうちに様々な経験を実践の場で積みながら、同時に成果が上がる、ということは本当に素晴らしいなと思っています。

「変えない」ことも、自分の未来を選択してしまう

今年1月に発足した班活動ですが、トレーナー班のようにすでに半年間の変えがたい経験を積み上げてきた班もあるのですが、実際は、いまだに動き出せていない班もあります。私はこの班活動は学生たちの自主的な活動でなければ意味がないと思っているので、動き出さないなら動き出さないで、それも学生の選択だと思って咎(とが)めることはしていません。提案はしますけどね。

ただ、たった半年間でもこれだけの経験と成果を上げてきた者と立ち止まったままの者とでは、歴然とした差が生まれていることが明白になってきました。こうして学生の成長を目の当たりにすると、その対比として、もったいない時間を過ごしている学生もいるなと感じてしまうのです。

トップチームの選手たちにもよく伝えていることがあります。「今の自分の決断が、未来の自分を作っているよ」と。今日の1日の少しの変化は誰も気づかないレベルのものかもしれませんが、若い彼らには実は積み重なるととてつもなく大きな違いになります。未来を変えたいなら今、自分で変わるべきだ。同時に、「変えない」のであればそれも自分の選択であり、それは尊重するけれど、「それによって導かれる自分の未来を“自分で選択した”ということは理解しておくことだよ」と伝えています。私は学生たちと向き合いながら、日々そんなことを彼らに感じ、彼らから私自身も気づかせてもらっているのです。

「4年間は長い。何だってできる時間がある」

4年間という時間は短くも長いものです。私が東京学芸大学の1年生だった時、当時3年生だった先輩、堀之内聖さん(元・浦和レッズ選手、現・クラブスタッフ)に「4年間は長い。何だってできる時間がある」と言ってもらった言葉が頭をまたよぎります。遊ぶのもよし、ふざけるのもよし、ぼーっと無為に過ごすのもまたよし。ですが、若い時にしかできないこと、与えられない時間というものがあることはぜひ知っておいてほしいと思います。

岩政さん自身が学生時代に先輩から言われた言葉を、今、改めてかみしめている

と、私も若い時におじさんから聞いたことがあるような気がする言葉をここで書きながら、私もおじさんになったことを改めて認識してしまうのですが、この歳になると、本当にそう思います。無限に広がる自分の可能性を自分で狭めてしまうことほどもったいないことはありません。自分の未来は、今の自分が決めている。ぜひ今から動き出してほしいな。これを読んだあなたには。

サッカー応援団長・岩政大樹コラム

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