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連載:サッカー応援団長・岩政大樹コラム

鹿島の選手だった岩政大樹がなぜ雑誌連載を書き、今も執筆業をしているのか

岩政さんは新刊も含めて5冊の本を執筆しているが、“とりあえずやってみた”ことが続いて今に至ると話す(撮影・山本倫子)

9月上旬に、『FootBall PRINCIPLES 躍動するチームは論理的に作られる』を出版します。2017年に『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を書き上げてから、毎年のように本を出させていただいています。今回でもう5作目。さらに今、2~3冊ほど本を作っています。

書籍だけでなく、このコラムや試合の戦評など、いつの間にか書き物がルーティンとなりました。正直に言いますと、書き物はそれほど“おいしい仕事”ではないのですが、私の個性の1つとなりましたし、何より自分自身の学びとなります。できる限り書くことは続けていきたいと思っています。

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サッカー雑誌からの依頼に「自分で書かせてくれないか」

私が“書くこと”を最初に始めたのは、おそらく「Jリーグサッカーキング」という雑誌の連載だったと記憶しています。毎月発行されていたその雑誌の連載の依頼がきた時、「自分で書かせてくれないか」と問い合わせたのが始まりでした。本来そのコラムは、私が話したものをライターさんがまとめてくれる形で進められていたのです。しかし、その私の問い合わせを編集部の方は快く受け入れてくださり、結局、5年間60回にわたって続けさせていただきました。

「自分で」と問い合わせた理由は、それほどはっきりしたものはありません。「とりあえず聞いてみた」というのが本音です。ただ、なんとなく「“コラム”というなら、つたない文章でも自分で書いた方が面白いんじゃないか。伝わるんじゃないか」と思ったのです。そして、それが他の人と違う色のコラムに映るんじゃないか、と。今思えば、それは正解だったと思っています。

岩政さんは鹿島に所属していた時から雑誌にコラムを執筆していた(撮影・朝日新聞社)

「長いわ!」とも言われながらブログを半年間毎日更新

それが、2007年から2012年頃だったでしょうか。その後、書くことは続けていなかったのですが、鹿島を離れたことがきっかけで再開することになりました。2014年にタイに行った時です。

タイに渡り、初めての海外挑戦となった私に「ブログを書いてみたら?」と勧めてきた方がいました。「ブログ? なにそれ?」。私はその時、“ブログ”なるものを知りませんでした。鹿島でプレーしている時はインターネットをあまり目にしないようにしていたので、ブログというものを知らなかったのです。

その方は「食事の写真や練習の様子、何でもいいから一言、日常をつづればいいんだよ。日記みたいに」と、教えてくれました。しかし、私は考えました。僕の日常なんて誰が興味を持つのだろうか。それよりも、鹿島を離れた今だからこそ話せる、書けることがある。日常ではなく、それまでのプロ生活の10年間、いや人生の32年間を振り返って文章にするなら、面白いかもしれない。

そこで、アメーバブログで毎日テーマを決めて、選手時代のある場面や子供時代の記憶を思い出して言葉にし、文章でまとめるということを始めたのです。始めたら中途半端が嫌な私です。「半年間、毎日投稿する」というノルマを課し、書き続けました。最初は多くの人に冗談まじりにお叱りを受けたものです。「長いわ!」「ブログっていうのは、そういうものを書くところじゃない!」と。

確かにその頃の「ブログ」とは一般的に、長くて数行で、簡潔に日常を描くものだという常識がありましたからね。しかし、私は意に介さなかったのです。自分が書くなら「この方が面白い」と思ったのだから、それを続ける。“信念“ほど大それたものもなかったのですが、徐々に反響が返ってくるようになり、読者の方々に支えられながら、結局半年間、完走することができました。

そして、タイから帰ってきた時に、ブログで書いているような内容をより深掘りして、専門的になりすぎない書き口でコラムを書き始め、それが書籍につながったのが「PITCH LEVEL」です。「PITCH LEVEL」で一区切りだと思っていた執筆業ですが、ありがたいことにその後も続けることができ、『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』では、最初から最後まで書き下ろしで本を出版することもできました。

今回の『FootBall PRINCIPLES 躍動するチームは論理的に作られる』は、これまでとはまた一味違う作品となりました。解説者や指導者としての視点も入ってきた私のサッカー観を、今の時点で整理するものとなったと感じています。ぜひお手にとって読んでみてください。

「人生は分からんもの」

さて、ここで伝えたかったのは宣伝でありません。「人生は分からんもの」、それをお伝えしたかったのです。私は自分が本を出すようになるとは思いもしませんでした。本を出すためにコラムやブログを書き始めたわけでもありません。未来を見据えて、その未来のために何かを始めたわけではないのです。

この経験を通して学んだことは、“自分で考える”ことの大切さでしょうか。「コラムとは」「ブログとは」「書籍とは」。そうした「常識」に支配されなかった私は、自分なりの発想で、“とりあえずやってみた”。それがたまたまつながって、今に至ることになりました。

現在はサッカー解説者、上武大学の准教授とサッカー部監督、筑波大学の大学院生と様々な顔を持つ(撮影・松永早弥香)

でもこれ、続いたことの1つを紹介していますが、この“自分で考えて、とりあえずやってみた”で、続いていないこともたくさんあるのです。続いたことだけを美談にすると、続かなかったことが「失敗」のように映りますが、それもそうではないんですよね。常識にとらわれすぎずに、自分の尺度で考え、まずやってみる。その先に行った時に初めて分かることがあります。そう考えると、全てが今の自分につながってくれている。そう感じられています。

長くなりました。大学の体育会はコロナとの戦いが想像以上に広がってきていることでしょう。先の見えない苦しい時間ではありますが、そんな時だからこそ少し立ち止まって、様々なことに思いを巡らせて見るのもいいでしょう。

「人生は分からんもんだ」。私もこのコラムを書きながら、「分からん未来を楽しめる生き方ができたらいいな」、そんなことを自分に言い聞かせる日々となっています。

サッカー応援団長・岩政大樹コラム

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