プロクラブを実感、いい意味でのプレッシャーに 静岡BR・日野剛志(上)
ラグビーの新リーグ「NTTリーグワン(LEAGUE ONE)」が1月から始まった。これまでのトップリーグを発展的に再編し、ディビジョン 1(1部)は12チームを2つのカンファレンス(組)に分けて初代王者を決める。注目選手の2人目は静岡ブルーレヴズ(BR)のHO(フッカー)日野剛志(たけし、32)。同志社大学からトライアウトで入団した苦労人は日本代表にも選ばれた。前編では、新リーグで何が変わり、大けがから完全復活を目指すシーズンへの意気込みなどを聞いた。
企業名を外し地域に根ざす
新リーグでは各クラブが企業チームから脱却し、ホストゲームを運営するなどよりプロ的なクラブを目指す。静岡BRは1部で唯一、ヤマハ発動機ジュビロから企業名を外してクラブを法人化した。プロバスケットボールBリーグの茨城ロボッツ社長だった山谷拓志氏を新社長に招聘(しょうへい)した。コロナ禍、開幕から3試合中止となったが、1月30日にいよいよホームのヤマハスタジアムで初の公式戦を迎える。日野は16番からチームに勢いを与える。
そんな静岡の中心選手として10年目を迎えたのが日野だ。新リーグに合わせて生まれ変わったチームの変化を、日野は「練習場などは変わっていないですが、環境として大きく変わった」と感じている。社員選手として仕事とラグビーを両立してきた日野にとって、スポーツビジネスに明るい山谷社長が「社員選手、プロ選手関係なく、プロクラブとして全員がラグビーで飯を食べていく」と発言したことに感銘を受けた。静岡を代表する企業にもスポンサードを受けて、静岡に、地域に愛されるクラブにならないといけないという選手の意識が改革されていき「マインドセットが変わった」という。
五郎丸さんの変身ぶりに驚きも
また昨季まで選手だった元日本代表の五郎丸歩さんはCRO(クラブ・リレーションズ・オフィサー)としてスポンサーへの営業やチケットの販売などを担当している。長年一緒にプレーしていた日野は「たまたまクラブのオフィスに行くと、本当に五郎丸さんが座って仕事されていました。企画チケットを販売したり、その意図を僕たちに説明したりと、変身ぶり、ハードワークぶりにはびっくりしています!」と驚きを隠さない。
プロクラブとなり山谷社長、五郎丸さんなどスタッフが汗をかいているのを目の当たりにしてすでにベテランとなった日野は「選手としては結果を出してかないといけないとお客さんも増えていかないかなと思います。責任を感じていますし、いい意味でプレッシャーになっています。現場と強化側がしっかり手を取り合いながら、両軸で強くなっていかないといけないですね!」と意気込んでいる。
ラグビー面では、ヤマハ発動機時代から大事にしていたセットプレー、そして他のチームがやっていないアタックをやるという独自性を軸にしつつも、新しいことにもトライしているという。「リーグ全体のレベルも上がっているので、リーグの進化に合わせて柔軟に新しい戦術に取り組んでいます。キックを使ったりボールを動かしたりと自分たちの武器を増やして、セットプレーに軸を置きつつ特色を出していく。日本代表に近いような、すべてが求められるといった意味ではいいチャレンジになっています!」(日野)
2012年に加入し、2年目からチームの主軸となり2014年度には日本選手権制覇に貢献した。16年度はトップリーグの「ベスト15」に選ばれるなど、日本のトップ選手として活躍してきた日野だが、昨季は開幕戦で左足を負傷。残念ながら出場はその1試合に終わった分、今季に懸ける思いは強い。日野は「試合に出ている選手が悔しいのは当たり前で、スタンドから見る選手、ファンは何もできない分、モヤモヤした気持ちがあって、それを改めて知ることができました。選手としてそういった思いを背負ってプレーしないといけない責任があります。けがの功名というか、昨季の経験をプラスにしていかないといけないと思っています」と話した。
完全復活、日本代表復帰も視野に
もちろん日野は日本代表に返り咲き、23年にフランスで行われるワールドカップ出場も視野に入れている。「昨季のテストマッチを見る限り、日本代表のフッカーは、坂手淳史選手(埼玉)以外は固定されている感じがしないので、まずはフッカーの2番手、3番手を目指します。そのためにもまずはチームでいいパフォーマンスを出すように頑張るのはもちろんですし、ブルーレヴズ初の日本代表になりたい」と大きな笑顔で先を見据えた。
改めて新たに始まった「リーグワン」に対する抱負を聞くと日野は「もちろん、チームとしては初代優勝を目指しています。またブルーレヴズとしては1年目なので、結果はもちろん、地域に根ざすという意味では、ファンの人と一緒に作っていくということが大事です。だから静岡のファンの印象に残るようなプレーをして新しいクラブの歴史を刻みたい。個人としては、昨季、悔しい思いもしたので、プロクラブの一員として100%コミットして、パフォーマンスで返したい」と語気を強めた。