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サッカー 早大のDF大桃、全身全霊の1週間をすごして

チームを鼓舞する大桃(10月7日の流通経大戦から)

関東大学リーグ戦第19節

11月4日@東京・味の素フィールド西が丘
早稲田大(勝ち点40)0-0筑波大(34)

いま、早大のディフェンスリーダーを務めるのはDF大桃海斗(3年、帝京長岡)だ。高校時代には世代別の日本代表に選ばれ、早大では昨年、2年生ながら開幕スタメンをつかみ、半年間レギュラーの座を守った。今春、主力として活躍してきたDFの多くが卒業すると、大桃が守備の統率を任されるようになった。

2年ぶりに1部で戦うリーグ戦の前期、チームは攻撃力を武器に9勝1敗1分と圧倒的な成績を残した。昇格組として「できすぎ」とも言える快進撃。しかし、その一方で守りが安定しない。「試合に勝ててはいるけど、失点が多い。毎回一つ、二つ失点をしてしまうのが気になる」。大桃は守備を支える身としてその事実と向き合ってきたが、改善には至らなかった。

夏になると、その脆さは表面化した。2年ぶりに出場した総理大臣杯は、初戦の鹿屋体大戦で終了間際に追いつかれ、延長の末3-4と逆転負け。続く後期リーグ開幕戦でも、明大に1-6という屈辱的なスコアで敗れた。早大が関東大学リーグ戦に復帰した2005年以降に限ると、6失点は早大のワースト記録だった。5失点以上を喫するのも7年ぶりの出来事だった。

その後どうにか後期の初勝利を挙げ、再び1位街道をひた走るかと思われたが、前節の東洋大戦で今シーズン2度目の1-6。13年間起こらなかったことが、2カ月で2度も起きた。しかも、前半だけで6失点。長らく堅い戦いぶりを売りにしてきた早大にとって、緊急事態だった。東洋大戦では、大桃の高校の同級生である東洋大のFW小林拓夢が4ゴール。「まさかあそこまでやられるとは……。準備も足りてなかった」。大桃は大きな責任を感じた。

東洋大戦ではFW小林に4ゴールを許すなど、守備が崩壊した

外池監督の厳しい指摘にプレーで示す

その翌週には、2位の筑波大が待っている。大一番へ向けて最初の練習があった10月31日、外池大亮監督はリーグ戦フルタイム出場を続けていた大桃を呼び、東洋大戦の6失点は大桃のせいだと断言した。「試合に出る責任を感じてほしい。この1週間、一瞬でも気の抜けたプレーがあったら筑波大戦では使わない」と監督。普段は個々にとやかく言わないという外池監督から受けた厳しい指摘に、大桃は「今シーズンで一番やらないといけないなと思って、いままで以上に責任感を持って臨んだ」。練習からその決意をプレーで示し、迎えた天王山当日。ピッチ上に、監督の信頼を取り戻した大桃の姿があった。試合前の集合写真に収まるときの柔らかい表情からも、筑波戦に対する自信がうかがえた。

激しい試合になった。互いに球際の攻防では一歩も引かず、ハードワークを続ける。試合は白熱した展開になった。大桃も15分、筑波大のMF三笘薫(3年、川崎フロンターレU18)のあわやというシュートをこん身のブロック。「無失点で終わるために、絶対に体を張ろうと思ってました」。その後もボールへの鋭い反応が光った。いつもに増して声も出た。奮起を促した外池監督も「今日の彼は本当によくやりきった」と賛辞を送るプレーぶりだった。結局、再三のビッグセーブを見せたGK小島亨介(4年、名古屋グランパスU18)に三笘の推進力を封じたDF牧野潤(3年、JFAアカデミー福島)……。早大は総力を結集し、テーマに掲げた無失点を成し遂げた。

筑波大戦の集合写真。大桃は後列左から2番目

守りに関しては最高の結果を残しながらも、大桃は満足感をみじんも見せなかった。「勝ちたかった」と何度も繰り返し、悔しさをあらわにした。一方で「筑波戦に向けた1週間の取り組みをベースにしていかないと」もあって、準備期間の取り組みへの手応えもうかがえた。

新チームの始動まであと2カ月もないが、このチームはまだまだ成長できる。そう確信を得た試合だったようにも見えた。攻撃陣は安定して好結果を残してきただけに、やはり守備がチームの未来を左右する。悲願のリーグ優勝をつかみ取るために、そして、12月のインカレで総理大臣杯の借りを返すために。強さを確固たるものにしていくのは、この男で間違いなさそうだ。

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