サッカー

特集:第67回全日本大学サッカー選手権

筑波、10度目Vへ カギは1トップ

ドリブル突破を図るMF三笘(右)

筑波大は15日の2回戦から登場する。昨年は天皇杯でJクラブを破る「ジャイキリ」旋風を巻き起こし、関東大学リーグ王者として臨んだが、まさかのベスト8止まり。チームの調子も上向いており、2年ぶり10度目の優勝に向けて「今年こそ」の期待が高まる。

夏のミーティングが転機に

筑波大は強固なディフェンスラインが相手の攻撃をはね返し、個人技に優れた中盤の選手たちがボールを支配する。DFは入学当初から主力で戦ってきた鈴木大誠(4年、星稜)を中心に、相手の自由にさせない。「(4年になってから)責任感が増し、チームの勝利のために戦ってきた」と鈴木。そして鈴木徳真(4年、前橋育英)が中盤の底からゲームを組み立て、両サイドの西澤健太(4年、清水ユース)、三笘薫(3年、川崎U-18)がゴールに襲い掛かる。絶対的エースの三笘は、今シーズン10ゴール、6アシストを記録。「FWでも起用されたことで、裏への抜け出しやクロスに合わせる動きのコツをつかんだ」と、自信をつけた。

だが決して今シーズンは順風満帆とは言えなかった。昨年はリーグ優勝をなしとげたが、今年は波に乗れず開幕2連敗からのスタート。主力のFWだった中野誠也(現ジュビロ磐田)や北川柊斗(現モンテディオ山形)らが抜けた穴を埋められず、厳しい戦いが続いた。チームは苦肉の策として、主将のDF小笠原佳祐(4年、東福岡)をFWの軸に据えた。その初陣となった第9節の流通経済大戦では攻撃陣が爆発し、5-0で勝利。小笠原は「(ポジション変更は)チームが勝つことを優先的に考えての行動でした。チームに貢献するのが選手としての務めです」と語る。だが、その後も小笠原の負傷などもあり、FWには三笘や強靭なフィジカルが武器の犬飼翔洋(3年、中京大中京)らが代わるがわる起用された。小井土正亮監督は「シーズンを通してワントップが定まらなかった。大きな不安要素だ」と話す。インカレでは誰がワントップとして起用されるかが焦点となる。

一方、昨年のリーグ戦で17失点と歴代最少に並んだディフェンスも、今シーズンは前半の11試合で16失点と不振に陥った。そこに王者の面影はなかった。
結局チームは不調から脱却できず、前期は4勝4敗3分けの8位で終えた。
さらに天皇杯や総理大臣杯などの出場権も逃した。2部への降格(11位以下)もちらつく危機的状況下で、チームは夏に何度もミーティングを持った。選手全員がコミュニケーションを取り、とくに守備の意識の統一を図った。西澤は「夏に選手がまとまって話し合ったことで、プレーの共通意識が生まれた。失点しないという筑波の強みを取り戻せた」と話す。

筑波大の「心臓」MF鈴木徳真(中央)

駒場を青く染めよ

後期、筑波大は息を吹き返した。失点を前半戦の約半分(11試合で9失点)に抑えた。守備が改善されたことで、勝ち星を積み重ねた。一時は7戦負けなしと破竹の勢いで、年間成績を11勝6敗5分けとし、2位まで上りつめた。
後期に最も輝いたプレーを見せたのはGK阿部航斗(3年、新潟U-18)だ。阿部は前期、4試合で10失点を喫した。とくに専修大戦では自身のミスから決勝点を献上、苦渋をなめた。だが、チームメイトとの激しい競争や、Jクラブへの練習参加を経て、秋になると好セーブを連発。「高いレベルで練習に臨めたことが(秋期の)いいパフォーマンスにつながりました」。

一方で、大事な試合で勝ちきれないことも。勝てば優勝が見えた第19節の首位早大との天王山はスコアレスドローに終わった。この試合を西澤は「流れをつかんで、いい攻めができたんですけど、1点が遠かった」と振り返り、悔しさをにじませる。また、最終節では球際の争い勝る駒澤大に対応できず、4年ぶりに白星を許すなど、課題も多い。一発勝負のインカレでは、試合内容も重要だが結果が最優先で求められる。

インカレの目標については、全員が「優勝」と口をそろえる。今シーズンの初めにタイトル獲得を誓ったが、いまだゼロ。「インカレ優勝は一度見た景色。優勝を経験したメンバーも多く残っていて心強い。必ず頂点を奪還する」と主将の小笠原。決意は固い。
インカレ決勝の地、浦和駒場競技場が青く染まる日は近い。

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