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帝京に屈するも、早大SO岸岡「みんなに火をつける」

帝京に屈するも、早大SO岸岡「みんなに火をつける」
積極的に仕掛け、チャンスを演出したSO岸岡 (撮影・谷本結利)

関東大学対抗戦グループA

11月4日@秩父宮ラグビー場

帝京大(5勝) 45-28(前半28-0)早稲田大(4勝1敗)

対抗戦8連覇と大学選手権10連覇を目指す王者帝京と、創部100周年を迎えている早稲田。開幕4連勝同士の両雄が激突した。対抗戦では帝京が過去7年ずっと勝っているが、夏合宿の練習試合では早稲田がディフェンスからプレッシャーをかけ、28-14で帝京戦8年ぶりの勝利を飾っていた。今シーズンの行方を占う大一番には、秩父宮ラグビー場では今年最多となる19810人の観衆が集まった。

キックオフ直後、早稲田が攻撃を継続して相手ゴール前に迫るが、帝京ディフェンスの粘りもあり、あと一歩でトライはならず。その後は「赤き旋風」帝京がペースをつかみ、前半14分までに2トライを挙げて14-0とリード。キャプテンのLO秋山大地(4年、つるぎ)は「タックル、ブレイクダウンで前に出続けようと思った」と振り返った。さらに帝京は春から少しずつ鍛えてきたスクラムでも押し込み、2トライを挙げて28-0で試合を折り返した。

後半、早稲田も攻勢に出る。今秋、学生で唯一の日本代表候補となったSH齋藤直人(3年、桐蔭学園)とSO岸岡智樹(3年、東海大仰星)のハーフ団が攻撃をリード。身長186cmの大型CTB中野将伍(3年、筑紫)らが4トライを挙げた。だが前半の28失点が響き、帝京が快勝。全勝をキープして対抗戦優勝へと大きく歩を進めた。

「最初の1本は取りたかった」

臙脂(えんじ)の10番を背負った岸岡はまず、キックの精度が低かったと嘆いた。ライン際に落とすはずのキックが真ん中に飛び、相手に攻撃しやすい状況を作ってしまった。敵陣で戦い続ける意識も強かったが、相手にゴール前で2度もスクラムのチャンスを与えてしまったのを反省点に挙げた。そして、水の泡となった最初の20次にわたる攻撃を振り返り、「最初の1本は取りたかった」と悔しさをにじませた。

早稲田は0-28で迎えた後半もあきらめなかった。「着実に1本ずつ取っていこう」「サインプレー的に1発取る」(SO岸岡)というマインドで臨んだ。今年の早稲田のスローガンである「Moving(ムービング)」の通り、ボールも人も動き、観る者を魅了するラグビーを体現し、4トライを重ねた。

齋藤やCTB中野が注目されがちだが、攻撃を引っ張る岸岡の存在感は見逃せない。チームとして、昨年まではあくまでハーフ団が中心で攻撃を組み立てていたという。だが今年は違う。岸岡は「全員がオプション(選択肢)になることをやってて、外からのコールで判断を変えることもある。ハーフ団任せじゃなくなったのが、いちばん変わった点です」と自信をのぞかせた。

また、この試合に岸岡はテーマを持って臨んでいた。「1対1になったときに勝負する」。昨年まで「パスマシーン」と言われても仕方がないSOだったが、「それを変えるというか。パスだけでなくランもしたら相手も嫌ですし、仕掛けたら外側の選手も生きてくる。自分が一段階伸びる」と感じて実践した。実際、帝京戦でも岸岡が積極的にランで仕掛け、チャンスを演出した。早大の相良南海夫監督は「ゲーム全体のマネージを、ビジョンを持ってやってくれてます。忠実に動き続けてるところが昨年と変わったところ。でも彼の能力ならまだまだできる」。岸岡の成長を認めつつ、さらなる期待を寄せる。

小学5年から枚方ラグビースクールで競技を始めた岸岡は、蹉跎中、東海大仰星高(現東海大大阪仰星)と地元大阪でラグビーを磨いた。高校では一時期SHにも挑戦したが、3年時はSOの司令塔として東海大仰星を花園優勝に導いた。そして「憧れがあった」という早稲田にスポーツ推薦でなく、自己推薦で進学した。

1年生からSH齋藤とコンビを組んで臙脂の10番を背負い、昨年はU20日本代表にも選出され、インサイドCTBとしてプレー。今春は早稲田ではFBとしても躍動した。確かな戦術眼があり、パスやキックのスキルも高い岸岡には、トップリーグチームから声がかかる。だが本人が「ラグビーを続けないのはもったいないって言われますけど、気持ち的には本当に五分五分」と言う通り、一般就職も視野に入れている。

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確かな戦術眼に加え、キックのスキルも高い岸岡 (撮影・谷本結利)

高校時代は特進コースに所属し、成績はオール5だったという。とくに数学が得意だったため、早稲田では教育学部数学科を選んだ。理系のため月曜から土曜まで授業があり、代数幾何のゼミに所属する。教職課程の授業もある。「めちゃくちゃ大変です!! 卒業がヤバい時期もありました」。この試合前日の土曜日も岸岡が午前中に授業があったため、全体練習は午後からになったという。

グラウンドから離れれば、20歳の普通の大学生である。「ラグビーをしたい気持ちはあるが、ラグビーだけというのは……。ただ特別したいことがあるわけではない。いま探し中です。就職活動をする中で、考えていきたい」と、ラグビーを続けるかどうかも含め、ゆっくりと決めていく方針だ。

「みんなに火をつけたい」

いよいよ、これからシーズンは佳境を迎える。帝京には敗れたが、まだ1敗。11月23日の早慶戦、12月2日の早明戦という伝統の一戦に連勝できれば対抗戦2位は確実で、大学選手権ではシードをもらえる。自力ではどうにもならないが、1敗で同時優勝の可能性もある。

今後のビッグマッチに向け、岸岡は「やれることはあまり変わらないので、細かいことを突き詰めたい。自分たちがやってきたことは間違ってないですけど、まだまだやらないといけないことはある。帝京戦に出た選手はわかってる」と、自分に言い聞かせるように言った。また早慶戦、早明戦という伝統の一戦に対して岸岡は「これが最後の4年生がパッと変わって伸びてくれる。みんなに火をつけたいです。チームに緊張感も出てくるし、雰囲気も変わってくる。だから4年生を助ける役割を果たしたい」と、サポート役を買って出るつもりでいる。

創部100周年というアニバーサリーイヤーを迎えている早稲田。ファンやOBが優勝を期待するなか、岸岡は「先輩たちが作り上げてきたことが重なって100周年まできた。あまり意識せず、目の前の試合を頑張りたい」。10年ぶりの大学王座奪還へ、早稲田の10番は静かに闘志を燃やしている。

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今後のビックマッチに向け「4年生を助ける役割を果たしたい」と誓う岸岡(中央) (撮影・谷本結利)

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