同志社LO平澤 京の祖父母と、群馬の家族に支えられ
同志社のLO平澤輝龍(3年、前橋育英)は身長183cm、体重105kgの大男。5男1女の3男坊として、群馬で育った。いまラグビー生活を支えてくれるのは、京都での「食」と、遠く離れた「家族」だ。
比較的遅く高校からラグビーを始めた平澤はCTBで、大学入学当初は83kgだった。1回生の時の監督だった山神孝志氏との出会いにより、FLに転向した。今はLOとしてAチームのレギュラーの座をつかみ取り、同志社を支えている。
彼はFWへの転向をきっかけに、「体を大きくして強くなれば試合に出られる」と、フィジカル強化に努めだした。入部当初から22kgも増やせた理由の一つが「食」である。
まずは体を大きくするために日々トレーニングに励み、「ほかの人がやってる時間に同じだけやってても勝てない」と、休みの日にやったり、メニューを増やしたり。とにかく人と違うことをして大きくなっていった。日々のトレーニングを支えるのは、やはり日常の食事だ。
大学入学とともに京都在住の父方の祖父母宅で暮らし始めた。帰宅すると、祖母が食事を出してくれる。「いつもバランスよく作ってくれる。そこはほんまに感謝してます」。疲れて家に帰っても、美味しい食事が用意されているのは、育ち盛りのラガーマンにとって、素晴らしいことだ。とくに祖母の餃子とオムレツが美味しいという。祖父母はラグビーにあまり興味がないが、一度だけ試合観戦に来てくれたことがある。
試合を見た感想は「ラグビー部員のお座りになっている後ろで観戦していると、孫を応援する声が聞こえました。遠く前橋からひとりで来て、この大学の一員としてお仲間に入れていただいたのだと感じました」(祖母)「孫の試合を初めて観に行ってみて、大変なスポーツだなと感じ、それを実際にやっている孫は、想像してたよりはやる男だなという印象でした」(祖父)。孫の成長をしみじみと感じてくれている。
父は聞き上手、母は料理上手
もう一つ、平澤を支えているのは「家族」だ。尊敬する人を尋ねると、「いろんな経験をしてるから、すごく相談相手になってくれる。そういう面ですごく助かる」と、父の精人さん(52)の名を挙げた。男5人の真ん中だから、上とも下ともけんかをしてきた。でも父とはあまりけんかしない。ささいなことはとやかく言わないが、本当に自分が悪いときは真剣に叱ってくれると感謝する。母の裕香子さん(54)は明るくて料理上手。帰省して久しぶりに手料理を食べても「美味しい」とは口に出さないが、実際は「もうなんでも美味しい!離れてわかったけど、一番美味しい。ほんまになんでも美味しい!」と絶賛だ。美味しい、美味しいと何度も繰り返す彼に、とくに美味しい料理を聞いてみた。返ってきた答えは「タコス」。ハンバーグやシチューなど、家庭の味が出るものを想像していた筆者にとっては想定外の返事だった。この記事でそんなやりとりを知ったら、「お母さんも笑うと思う」と平澤。家族仲のよさは相当なんだなと感じさせた。
高校に入って人数の少ないチームでラグビーを始め、大学で親元を離れて伝統ある同志社に入学。100人超の部員の荒波にもまれながらも、平澤は地道に努力を重ねてレギュラーを獲得した。楽しいことばかりではない。生きていれば誰しも落ち込むことはある。そんなときは「バクバク食べて、『悔しいなあ』って言ってプロテイン飲んで寝ます」。何があっても、祖父母の家に帰れば、いつでも電気のついた部屋とあったかい食事が平澤を待っている。
同志社は11月4日の立命館大戦でようやく今シーズン初勝利を挙げた。すでに3敗していて、自力では大学選手権へ進めない。しかし可能性は残っている。紺グレの一員として、平澤も残り3試合にすべてをかける。